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応用化学専攻 冨重圭一教授と中川善直准教授らが藻類産生オイルの輸送用燃料への新変換法の開発

2015/06/15

東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻の冨重圭一教授、中川善直准教授、筑波大学生命環境系の渡辺秀夫研究員らの研究グループは、藻類が産生する炭化水素スクアレンをガソリンやジェット燃料に変換する新手法を開発しました。本研究は、下水処理にオイル産生藻類を活用する「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」の一部として行われ、藻類から得られるオイルの利用拡大の鍵となる成果です。
開発した手法では、ルテニウムを酸化セリウムに高分散に担持させた触媒を用い、スクアレンを水素化させて得られるスクアランを水素化分解させることで分子量の小さい燃料用炭化水素を得ます。既存の石油改質技術で得られる燃料と異なり、毒性のある芳香族成分を含まず、安定性が高く低凝固点の分岐飽和炭化水素のみで構成されます。既存の石油改質手法に比べて生成物組成が単純であり、触媒安定性も優れています。この成果は2015年6月11日付でワイリー社発行の学術雑誌ChemSusChem(注)電子版に掲載されました。
 
(注)ChemSusChem:グリーンケミストリー分野の最有力誌の一つ。Impact Factor: 7.117。
http://onlinelibrary.wiley.com/journal/10.1002/%28ISSN%291864-564X
論文DOI: 10.1002/cssc.201500375
 
1.背景

石油の枯渇と二酸化炭素排出削減の観点から、バイオ燃料の開発が活発に進められています。藻類の中には、陸上植物に比べ遙かに高い速度でオイルを生産する株が存在し、藻類を利用したオイル生産に注目が集まっています。近年、筑波大学の渡邊信教授らにより、水中有機物を餌としてスクアレン(図1右)を高効率で生産するオーランチオキトリウム18W-13a株(図1左)が発見され、その後の東日本大震災を契機に筑波大学・東北大学・仙台市が協力し、都市下水を浄化しつつスクアレン等を生産するプロジェクトが「東北復興次世代エネルギー研究開発プロジェクト」の一課題として2012年度からスタートしました。スクアレンはそのままでは重油相当の炭化水素で、現在は深海サメの肝油から生産されるものが化粧品等に利用されていますが、下水から生産されるスクアレンは用途が限られ、需要の大きいガソリンやジェット燃料に変換するには改質が必要です。本研究は、プロジェクトの一環として下水から生産されるスクアレンに適した改質法の開発を行ったものです。


(図1)オーランチオキトリウム18W-13a株(左)とスクアレン(右)
(写真提供:筑波大学 渡邊信教授)

2.研究成果概要および本成果の意義

今回開発した反応系では、主たる活性金属であるルテニウムを酸化セリウムに担持した触媒を用います。ルテニウム種の前駆体である錯体を酸化セリウムに担持後、不活性雰囲気下300℃で穏やかに分解することで、サブナノメートルサイズのルテニウム微粒子が担持された触媒を得ました。この触媒を用いてスクアラン(スクアレンの水素化物)を240℃、60気圧水素で水素化分解し、低級炭化水素を得ました。本反応では、毒性のある芳香族は全く生成せず、スクアラン分子中の分岐と分岐の中間位置が選択的に切断され、分岐を残した飽和炭化水素のみが得られました(図2)。ガソリンやジェット燃料では、分岐炭化水素は、オクタン価、低凝固点、保存安定性の観点で望ましい成分です。他の貴金属系触媒は低活性であったり、分岐の位置が切断されメタンと直鎖炭化水素が生成したりと劣る結果しか得られません。また、固体酸を用いた既存の石油改質触媒では、酸触媒による異性化反応が進行し、著しく複雑な組成の生成物となります。本反応系では、既存の石油改質で問題となりやすい触媒上への炭素質の生成がほぼなく、4回の再使用で性能劣化が全く見られませんでした。本手法は、直鎖成分が大部分を占める原油と異なり、分岐が多いという藻類由来炭化水素の特徴を活かした改質手法と言えます。


(図2)
(A): 酸化セリウム担持ルテニウム触媒によるスクアラン水素化分解生成物の炭素数による分布
(B): スクアラン水素化分解の切断位置
C14-C16はジェット燃料に適する。C5-C10はガソリンとして利用可能成分。反応時間の調節により生成物の炭素数は変化する。

本研究で開発した改質手法は、スクアレンの大規模生産に向けてその利便性を拡張し、実用化に弾みをつけるものと期待されます。今後、本プロジェクトにて実際に生産された藻類オイル試料への適用や、ボトリオコッセン等他の藻類由来炭化水素への適用に取り組んでいきます。

【お問合せ】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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