超柔軟構造の液晶デバイスを開発 ~自由に曲げられるフレキシブル液晶ディスプレイを目指して~

2016/05/13

東北大学大学院工学研究科電子工学専攻の藤掛英夫教授、石鍋隆宏准教授らの研究グループは、極めて薄いプラスチック基板2枚を微細な高分子壁スペーサで接着して貼り合わせることにより、超柔軟構造の液晶デバイスを開発することに成功しました。

プラスチック基板を用いたフレキシブルディスプレイは、携帯・設置・意匠の自由度を飛躍的に高めるため、新たな視聴形態を創出する次世代ディスプレイとして期待されています。その有力候補として、薄いプラスチック基板を用いた有機ELディスプレイが知られていますが、プラスチック基板はガラス基板に比べて酸素や水蒸気に対する気密性に劣るため、動作の安定性を確保するのが困難であるとともに、大画面化・高精細化の作製技術が確立されていませんでした。

この問題を解決するために、東北大学では液晶ディスプレイをフレキシブル化する取り組みを進めています。フレキシブル液晶ディスプレイの場合、これまでに確立されている高画質パネルの作製技術・製造設備を転用できる、経時劣化がなく寿命の心配がない、量産性に優れて低コストという利点があります。しかし、既存のプラスチック基板(厚み:100μm程度)を用いた液晶ディスプレイは、曲げると液晶層を挟む2枚の基板の間隔が不均一になり、表示が乱れやすいという課題が残されていました。

今回、極薄のポリイミド透明基板(厚み:10μm)で液晶層を挟んで、基板を高分子壁スペーサで接着することにより、極めて柔軟な液晶デバイスを作製することに成功しました。極薄基板は透明ポリイミド用溶液(三井化学社製)の塗布と剥離の工程により作製でき、食品包装用の透明フィルムのような柔軟性を有します(左下図)。さらに、電極やカラーフィルタなどの画素構造を作製できるように耐熱性を備えるとともに、高コントラスト・広視野角な表示が得られるように屈折率異方性が極めて小さいことも特徴です。両基板を接着して一体化する高分子壁スペーサについては、高分子原料を混ぜた液晶層に、極薄基板越しに紫外線のパターン露光を行うことで合成・構築しました。基板が薄いほど基板間隔が変動しやすくなるため、狭い間隔のスペーサを形成することで安定化を実現しました。これにより、デバイスを曲げても表示が乱れないことを確認しました。さらには曲率半径3mm(右下図)まで丸めて戻しても、スペーサが壊れず均一な表示が保たれることも確認しました。今後、画素構造を作り込むとともに、偏光板などの周辺部材を含めてデバイスの柔軟化を進める予定です。

本研究の成果は、大画面化・高画質化・安定動作が可能な液晶ディスプレイを、有機EL並みに柔軟化できることを明らかにしたものです。そのため、携帯情報端末、ウェラブルシステム、車載ディスプレイ、デジタルサイネージ等への応用が期待されます。

上記の研究成果は、2016年5月22日より米国サンフランシスコで開催される国際会議 SID (Society for Information Display) International Symposiumにて発表される予定です。

 
液晶用に開発した極薄ポリイミド透明基板(左)と、試作した液晶デバイスをガラス棒に巻き付けた耐久試験の様子(右)。
【お問合せ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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