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がん細胞を効果的に傷害する“薬効ルール”を発見! ~高い薬効を有する低分子型抗体の簡便なスクリーニング手法の開発に成功~

2017/06/09

【概要】

熊谷 泉(東北大学名誉教授)、梅津 光央(東北大学大学院工学研究科教授)杉山 在生人(東北大学大学院工学研究科博士後期課程3年、日本学術振興会特別研究員)らの研究グループは、がん細胞を効果的に傷害でき、治療薬として有望な組換え抗体分子を簡便にスクリーニングする手法の開発に成功しました。

研究グループは、実際にこの手法を用いることでがん細胞に対して従来より約1千倍高い薬効を示す組換え抗体の創製に成功し、また高い薬効を示す組換え抗体に共通した特徴を明らかにすることができました。本スクリーニング手法の確立により、組換え型がん治療抗体開発の更なる加速が期待されます。

この研究成果は、2017年6月6日付(英国時間)で「Scientific Reports(オンライン版)」に掲載されました。また、本研究は、科学研究費助成事業特別推進研究、および日本学術振興会特別研究員奨励研究費を受けて実施されました。

【研究背景】

免疫機構を司る抗体分子は、その高い親和性と特異性から、近年、国内外の製薬会社によってがんをはじめとした治療薬として開発されています。しかし、一般的に医薬品として用いられるIgG抗体の分子量は150kDaと非常に大きく、腫瘍に対する浸透性の低さが課題となっています。

そうした中、がん細胞と免疫に関与するT細胞を架橋できる二重特異性抗体は、通常のIgG抗体よりも分子量が小さいため腫瘍に対して高い浸透性を有するだけでなく、T細胞を利用した従来とは異なる作用機序でがん細胞を傷害できることから次世代型の抗体医薬品として期待されています。この二重特異性抗体の一種であり、がん細胞結合抗体とリンパ球結合抗体の分子認識部位(可変領域)のみから構成される低分子で小型な二重特異性抗体であるディアボディは、高い薬効を有することが知られていますが(図1)、ディアボディを構成するがん細胞結合抗体とリンパ球結合抗体の組合せによって薬効が変化してしまうことが課題でした。

そのため、高薬効型のディアボディを創出するには2種の抗体の組合せから網羅的にディアボディを作製し、作製したディアボディライブラリから簡便で効率的に高薬効型をスクリーニングする手法の開発が急務でした。

【本研究の成果】

研究グループは発現遺伝子ベクターの効率的な作製法、組換え抗体の簡易的な精製のみを介した簡便な薬効評価法を開発することで、組合せの網羅的な検討を可能とするプロセスを構築しました(図2)。

これを実証するために、実際に100を超えるディアボディを網羅的に作製し、開発した薬効評価法を用いてスクリーニングを行ったところ、従来よりも1千倍高い薬効を示すディアボディの創製に成功しました。

さらに、スクリーニングで選抜されてきた高薬効型ディアボディ群の諸特性を比較したところ、「LH型と呼ばれる構造設計が高薬効を発現しやすいこと」、「効果的に薬効を発現できるエピトープ(抗体が認識する領域)が存在すること」、さらには「リンパ球に対する結合力より、がん細胞に対する結合力の方が薬効発現に重要であること」等の薬効発現に大きく関わる“薬効ルール” を見出すことにも成功しました。

本研究成果は、2017年6月6日付(英国時間)で「Scientific Reports(オンライン版)」に掲載されました。

【参考図】

図1:低分子型組換え抗体の構造とがん細胞傷害時の作用機序


図2:本研究で構築した高い薬効を示す抗体の創出プロセス
【論文情報】

題目: A semi high-throughput method for screening small bispecific antibodies with high cytotoxicity
著者: Aruto Sugiyama1,2, Mitsuo Umetsu1, Hikaru Nakazawa1, Teppei Niide1, Tomoko Onodera1, Katsuhiro Hosokawa1, Shuhei Hattori1, Ryutaro Asano1 & Izumi Kumagai1
所属: 1東北大学大学院 工学研究科, 2日本学術振興会特別研究員
雑誌: Scientific Reports
URL: https://www.nature.com/articles/s41598-017-03101-4
DOI: 10.1038/s41598-017-03101-4

【お問い合わせ】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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