キャビテーションの圧潰圧力場の最適化により100倍強力化-投入エネルギーの増大なしで、バルブ1つで強力化-

2016/04/22

【研究概要】

祖山均教授(大学院工学研究科ファインメカニクス専攻)らは、超音波の代わりに流れ場を用いて発生させたキャビテーション1)(流動キャビテーション)の化学反応等への有効利用を目的として、キャビテーションの圧潰衝撃エネルギーの強力化を図った結果、キャビテーション圧潰場圧力の最適化により、衝撃エネルギーを100倍以上強力化できることを実証しました。

ソノケミストリ(音響化学)と呼ばれる分野での化学反応や、バイオマスの前処理、水処理などに超音波で発生させたキャビテーションが提案されていますが、反応促進や高効率化といった観点で、キャビテーションの圧潰衝撃エネルギーの強力化が求められています。流れ場を用いて発生させたキャビテーション(流動キャビテーション)の発生・圧潰場の下流にバルブを付けて、圧潰圧力場を最適化すれば、新たにエネルギーを投入することなく、キャビテーション気泡の圧潰衝撃エネルギーを大幅に強力化できます。本技術は、キャビテーションを活用したプロセスの実現に大きく貢献すると考えられます。

本研究成果は、アメリカ物理学会が発行するオープンアクセス誌「AIP Advances」に平成28年4月21日に掲載されました。

なお、本研究の一部は、日本学術振興会科学研究費補助金の助成とキヤノン財団の助成を受けて行われました。

1.研究の背景

キャビテーションは、その圧潰時に金属も損傷する局所的な衝撃力を発生するため、流体機械に損傷をもたらす害悪ですが、圧潰時に生じる高温・高圧スポットを有効利用する化学プロセスや水処理が研究されています。一般にこれらの分野では、超音波で発生させたキャビテーションを用いているので、ソノケミストリ(音響化学)と呼ばれています。キャビテーションを活用したプロセスの工業化においては、キャビテーションの強力化が求められています。

2.研究の成果

キャビテーションの圧潰場圧力が大きくなるほど、その発生領域は小さくなりますが、圧潰速度が大きくなります。本研究グループは、その結果として圧潰衝撃エネルギーが大きくなる発見に基づき、図1に示すベンチュリ管2)とその下流にバルブを取り付けた流動キャビテーション式試験装置を使って、バルブによりキャビテーションの圧潰場圧力(下流側圧力)p2を制御しながら、キャビテーション圧潰時の音響エネルギーとルミネッセンスを計測しました。得られた結果として、図2(a)には音響エネルギーの計測結果を、(b)にはキャビテーションの様相を示します。図2(b)からわかるように、圧潰場圧力p2が大きいほどキャビテーションの発生領域は小さくなりますが、ある圧潰場圧力p2において音響エネルギーが極大を示すことがわかります。また、バルブを開放した場合に比べて、p2 = 0.23 MPaの場合には音響エネルギーが100倍以上であることがわかります。すなわち、圧潰場圧力の最適化により、新たにエネルギーを投入しなくてもベンチュリ管の下流に取り付けたバルブ1つでキャビテーションの圧潰衝撃エネルギーを大幅に強力化できるので、流動キャビテーションを様々なプロセスに応用できる可能性があります。


図1 流動キャビテーション式試験装置

図2 圧潰場圧力による音響エネルギーとキャビテーションの様相の変化
■発表論文の詳細
●タイトル
Enhancing the aggressive intensity of hydrodynamic cavitation through a Venturi tube by increasing the pressure in the region where the bubbles collapse
●著者名
H. Soyama and J. Hoshino
●学術誌名 AIP Advances、Vol. 6、045113 (2016), doi:10.1063/1.4947572.
●URL http://scitation.aip.org/content/aip/journal/adva/6/4/10.1063/1.4947572
【用語解説】

1)キャビテーション:液体が高速で流れる際に、圧力が低下して気体(泡)に相変化する現象。流速の低下により気体から液体に戻る気泡の圧潰時に衝撃力を発生。

2)ベンチュリ管:絞り部を有する管で、絞り部の高速・低圧領域でキャビテーションが発生し、拡大部でキャビテーションが圧潰して衝撃力を発生。

【お問合せ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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