フィリピン共和国 第1号衛星「DIWATA-1」による初画像撮影の成功について

2016/06/02

東北大学、北海道大学、フィリピン科学技術省(DOST)、フィリピン大学ディリマン校が共同開発した、フィリピン共和国の第1号超小型衛星「DIWATA-1」は平成28年4月27日20時45分(日本時間、以下同じ)に国際宇宙ステーション「きぼう」から地球周回軌道へと無事に放出されました(参考写真参照)。

日本上空での最初の交信機会となる4月28日7時33分頃には、東北大学局(CRESST)より衛星からの電波の受信に成功し、衛星の状態が良好であることが確認されました。その後、4月29日からは、各搭載機器の状況を確認し、衛星制御系の基本性能を評価する運用を行ってまいりました。

同衛星には計4台の地球観測用のカメラが搭載されており、これまでに複数枚の地球画像の撮影に成功しましたので、その一部を公表します。

写真1aは、広視野モノクロ魚眼カメラ(WFC)により撮影された画像(2016年5月6日11時55分撮影)です。写真1bはほぼ同時刻(5分前)に撮影された気象衛星「ひまわり」の画像で、日本上空を覆っている雲の形や太平洋上の前線にともなう雲の形が一致していることがわかります。

写真2aは、広視野カラーカメラ(MFC)により撮影された東北地方の画像(2016年5月9日10時54分撮影)で、仙台から田沢湖、男鹿半島に至るエリアが写っています。太平洋上の衛星から、仙台を含むエリアへ向けて姿勢を傾けたポインティング制御を行って撮影しています。写野を地図に投影したものを写真2bに示します。

写真3aは、広視野カラーカメラ(MFC)により撮影されたフィリピン・ルソン島のイサベラ州地域を撮影した画像です(2016年5月17日9時15分撮影/フィリピン時間)。写野を地図に投影したものを写真3bに示します。衛星は同地域の上空を通過中で、鉛直下方(地球中心方向)に姿勢制御しつつ撮影を行いました。

衛星運用チームでは、引き続き搭載機器の動作確認を実施し、フィリピン共和国の気象災害の監視、農業、漁業、森林、環境のモニターなどの本格運用を本年8月より開始することを目指して、準備を進めていく予定です。

※DIWATA-1について

DIWATA-1の開発期間は約1年、開発資金は全てフィリピン共和国が負担しています(フィリピン科学技術省プログラム“Development of the Philippine Scientific Earth Observation Microsatellite (PHL-MICROSAT)”)。同衛星には、魚眼カメラ、地上解像度3mの望遠鏡など、倍率の異なる4種類の撮像装置が搭載されており、台風や集中豪雨等の気象災害の監視、農業、漁業、森林、環境のモニターなど、フィリピン共和国での多様な社会課題の解決のためのリモートセンシング情報の提供に活用される予定です。特に、液晶スペクトルカメラは北海道大学・東北大学が2014年に打ち上げた「雷神2衛星」に搭載されたカメラの改良型として、大型衛星に搭載されているカメラに劣らない590バンドの帯域での撮像が可能であり、低コストで高精度な次世代の宇宙利用を拓くものと期待されます。

※DIWATA-1の打上げおよび軌道について

DIWATA-1は、JAXAの有償打上機会を利用し、まず平成28年3月23日に米国より打上げられた「シグナス宇宙船」に搭載されてISSへ届けられ、4月27日にISS「きぼう」モジュールより宇宙空間へと放出されました。現在、地表高度約400kmの地球周回円軌道を飛行中。軌道寿命は約1年半と予想しています。(軌道寿命後は大気圏に突入して消失する予定。)

※地上局およびフィリピン側の体制について

DIWATA-1の初期運用は、東北大学局(CRESST)にて、コマンドのアップリンク(UHF帯)およびテレメトリデータのダウンリンク(S帯)の受信を行います。定常運用に際しては、フィリピン科学技術省先端科学技術研究所(DOST-ASTI)に開設される地上局にて、X帯での高速データ受信を行います。これに加えて、フィリピン大学ディリマン校には、マイクロ衛星研究教育施設 (Microsatellite Research and Instructional Facility, MRIF) を開設し、同国の宇宙技術の研究開発拠点とする計画が進められています。

【お問い合わせ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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