膜展開式軌道離脱装置実証衛星「FREEDOM」の実験結果について

2017/03/01

株式会社中島田鉄工所と国立大学法人東北大学は共同で膜展開式軌道離脱装置の研究開発を行ってきました。その装置の宇宙実証を目的とした超小型人工衛星「FREEDOM(フリーダム)」は、平成26年9月26日に、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が公募した『平成28年度上期打上げ機会「きぼう」放出超小型衛星』に選定されました。「FREEDOM」は、平成29年1月16日に「きぼう」日本実験棟より、JAXAの小型衛星放出機構(J-SSOD)によって放出されました。

その後、公的機関より入手可能な軌道情報に基づき「FREEDOM」の軌道高度が低下する様子を確認しておりましたところ、平成29年2月6日に「FREEDOM」と認められる個体(NORAD ID 41930)の軌道高度が約250km以下に降下すると共に、公的機関による軌道追尾が終了したことを確認いたしました。「FREEDOM」はその後約1日で大気圏に再突入したものと予測されます。この結果は想定された軌道予測とよく一致するものであり、これにより「FREEDOM」の薄膜展開及び軌道離脱ミッションが成功したことを裏付けるものと考えております。

この結果は、中島田鉄工所と東北大学が共に長年挑戦してきた研究開発が実を結んだものです。実験開始までの長期に渡りさまざまな方々の援助に支えられて、こうした成果を得ることができました。これまでにお世話になりました皆様に深く感謝するとともに、今後への決意を新たにするところです。

今回の成果は、JAXAが実施する制度である国際宇宙ステーション「きぼう」日本実験棟からの超小型衛星の放出機会提供(無償の仕組み)を利用することで達成することができました。重ねて関係者の皆様に深く感謝するとともに、今後とも皆様のご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。

【 放出前のFREEDOM(左)と軌道上膜展開後のイメージ(右) 】
【「FREEDOM」の概要】

「FREEDOM」はCubeSatと呼ばれる規格に則っており、一辺の長さが約10cmの立方体で、質量が約1.3kgの超小型人工衛星です。「FREEDOM」は「きぼう」から放出後に軌道上において1.5m四方の薄膜を展開し、宇宙空間にわずかに存在する空気抵抗を利用して軌道を離脱、地球大気圏への早期再突入の実証試験を試みました。「FREEDOM」に搭載される膜展開式軌道離脱装置は、近年世界中で盛んに開発が進められている超小型人工衛星が運用終了後に軌道上でスペースデブリ(宇宙ゴミ)化することを防止するために、国連のスペースデブリ低減ガイドラインを基に株式会社中島田鉄工所と国立大学法人東北大学が中心となって共同開発した装置です。

東北大学は平成24年に同じく「きぼう」から放出された超小型人工衛星「RAIKO」の研究開発と軌道上技術実証の実績があります。JAXAが提供する「きぼう」からの超小型衛星放出機会は、エアロックとロボットアームを活用した非常にユニーク且つ有用な技術実証の機会となっており、東北大学は積極的にその機会を活用し、小型衛星を用いた技術実証に取り組んでおります。

【成功基準と現状の成果】

「FREEDOM」は展開式軌道離脱装置の宇宙実証をミッションとし、ミッション成功基準を設定しておりました。「FREEDOM」のミッション成功基準と現状の達成状況を下表に示します。

【 「FREEDOM」のミッション成功基準と達成状況 】
成功基準 現状の成果
ミニマムサクセス 公的機関からの情報による初期軌道の特定 達成
1か月に渡る軌道の遷移情報の蓄積 達成
フルサクセス 地球大気圏再突入までの軌道の遷移情報の蓄積 達成
シミュレーション結果との比較検証を通した性能評価 達成
エキストラサクセス 1か月以内の地球大気圏再突入 達成
風見安定度が軌道遷移に及ぼす影響の究明 今後詳細を解析
【今後期待される成果】

近年世界中で超小型人工衛星の開発が盛んに行われており、超小型人工衛星の特徴を活かした分野で実利用化が進行しています。今後地球周回軌道へ投入される超小型人工衛星数は増加の一途を辿ることが予測されています。そのため、将来の宇宙資源の安全且つ有効な利用を保証するために、運用を終了した人工衛星がスペースデブリ化することを積極的に阻止し速やかに軌道から除去する技術が求められています。「FREEDOM」衛星が軌道上実証を行った膜展開式軌道離脱装置は小型軽量化と同時に衛星システムとの機械的・電気的インターフェースの簡易化を追求しており、将来的には日本国内外の超小型人工衛星に幅広く利用されることを期待しています。

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【お問い合わせ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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