東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/08/31

ナノメカニクス専攻の祖山教授等の研究グループは金属材料を強力化する新しい表面改質法を開発しました。

東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻の祖山均教授らは,大気中に直接的にキャビテーション・ジェットを発生させて,キャビテーション気泡の崩壊衝撃力により,金属材料を強力化する新しい表面改質法を開発した。


【背景】
現在,自動車産業や航空機産業などで広く用いられている表面改質法は,ショットを金属材料に打ち付けて叩いて強化するショット・ピーニングである。しかしながら,ショットの固体接触による材料表面の損傷やショットの廃棄などが大きな問題となっており,新たな表面改質法が求められている。



【開発した表面改質法】
流体機械に致命的損傷を与えるキャビテーションを,逆転発想的研究により,金属材料の強力化に有効利用する表面改質法を開発した。キャビテーション気泡の崩壊衝撃力を活用するために,固体接触を生じないので,従来技術のショット・ピーニングに比べて材料表面に損傷を生じない利点がある。また産業廃棄物となるショットを用いないので,ショット・ピーニングよりも環境に優しい技術である。



これまで祖山教授らは,キャビテーションを発生させるために,水を満たした水槽に高圧水を噴射するキャビテーション・ジェット(水中キャビテーション・ジェット)を利用してきた。本研究開発では,大気中に低圧水を噴射してその中心部に高圧水を噴射することにより,大気中に直接的にキャビテーション・ジェットを発生させる気中キャビテーション・ジェットを対象として,水中キャビテーション・ジェットよりも加工能力が高い気中キャビテーション・ジェットの流動機構を解明し(図1参照),気中キャビテーション・ジェットによる金属材料の疲労強度向上を実証した。



【表面改質効果】
気中キャビテーション・ジェットにより,ジュラルミンの疲労強度を約50%,ステンレスの疲労強度を約20%向上することに成功した。



【応用展開】
気中キャビテーション・ジェットによる表面改質により,水槽に入れられないプラントなどの構造物も表面改質可能となった。また従来のショットや水中キャビテーション・ジェットを用いるピーニング法に比べて,気中キャビテーション・ジェットを用いた方法が表面改質効果が良好であるので,新規ピーニング法としての利用が期待されている。



【成果の発表】
気中キャビテーション・ジェットによる金属材料の強度向上については,2005年9月6日〜10日にパリ(フランス)で開催予定の第9回ショット・ピーニングに関する国際会議で発表予定。気中キャビテーション・ジェットの流動機構については,2005年10月29日〜30日に金沢大学で開催予定の流体工学部門講演会で発表予定。



【用語の説明】
キャビテーション: 液体の速度が増加して,液体の圧力が減少し,液体が気化する現象。通常,ポンプ,やバルブ,船のスクリューなどの流体機器に発生して,機器に損傷を与える場合が多い。



【図1の説明】
大気中に低圧水を噴射してその中心に高圧水を噴射している。噴射方向は上から下である。低圧水と高圧水が干渉して低圧水の表面が激しく波打っている。中心部に見える白い塊がキャビテーションである。(高圧水の噴射圧力20MPa,高圧水のノズル直径1mm,低圧水の噴射圧力0.05MPa,低圧水のノズル直径20mm)

図1 気中キャビテーション・ジェットの様相
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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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