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無保護糖類の触媒変換によるキラルポリオール高効率合成 〜新しいバイオマス変換手法として大いに期待〜

2018/05/29

【発表のポイント】

・固体触媒による水酸基無保護での糖類の直接高効率変換に世界で初めて成功。
・糖類固有の立体構造を有するキラルポリオール(1)への変換を実証。
・新規な糖類変換技術、バイオマス変換技術として期待。

【概要】

冨重 圭一(東北大学大学院工学研究科、教授)、田村 正純(東北大学大学院工学研究科、助教)らの研究グループは、固体触媒による無保護糖類からのキラルポリオール(1)などの有用化学品の高効率合成に成功しました。

石油資源の枯渇、二酸化炭素削減の観点から、バイオマスを資源とするバイオマスリファイナリー(2)の確立が求められ、特に、木質バイオマスからのプラットフォーム化合物であるグルコースなどの糖類を高効率かつ高選択的に触媒変換する技術は重要と考えられます。しかしながら、糖固有の立体構造を保持した効率的かつ簡便な変換手法はこれまでに報告されておらず、本固体触媒プロセスは新規糖変換技術、バイオマス変換技術として期待されます。

本成果は2018 年4 月28 日付でWiley-VCH の学術雑誌Angewandte Chemie International Edition(注1)電子版にwebリリースされました。本研究は、科学研究費助成事業の補助を受けて実施されました。

(注1) Angewandte Chemie International Edition
化学総合誌のトップジャーナルの一つ。Impact Factor: 11.994。
Web page: https://onlinelibrary.wiley.com/journal/15213773, 論文DOI: 10.1021/anie.201803043



図1.糖類の直接変換の経由した新規バイオマス変換ルート
【背景】

石油資源の枯渇、二酸化炭素削減の観点から、バイオマスを資源とするバイオマスリファイナリー(2)の確立が求められています。グルコースなどの糖類は木質バイオマスからのプラットフォーム化合物であり、糖類の高効率かつ高選択的触媒変換は木質バイオマス変換の重要技術の一つです。これまでのバイオマスリファイナリーでは、糖類の脱水によるフルフラール合成を経由するルートが主要であり、糖類固有の立体構造を活かすことができませんでした(図2)。一方、糖類の立体構造を活かす手法として、均一系触媒を用いた精密有機合成による変換が知られていますが、糖類は水酸基、ヘミアセタール基、アルデヒド基などの多数の官能基を有するため、高選択的変換には官能基の保護、脱保護を含む多段階合成を必要とし、さらに収率も低下してしまいます。従って、糖固有の立体構造を活かした高効率変換手法の開発が望まれます。



図2.バイオマスから有用化学品合成ルート
【研究成果概要および本成果の意義】

本研究グループは、固体触媒を用い、メチルグリコシドから水酸基を保護することなく、シス隣接ジオールのみを一段かつ触媒的に還元除去し、ジデオキシグリコシド(2つの水酸基を除去したメチルグリコシド)を高選択的に合成にすることに成功しました。さらに、加水分解や水素化反応を組み合わせることで糖類固有の立体構造を保持したキラルポリオールやポリマー原料であるジオール前駆体を高収率で合成できることを実証しました。

今回開発した反応系では、活性金属種であるレニウムと助触媒であるパラジウムを酸化セリウムに担持した固体触媒を用いています。本触媒は糖類のトランス位の隣接ジオールにはほとんど活性を示さず、シス位の隣接ジオールのみに活性を示すといったシス位隣接ジオールへの高い認識能により、高選択的な隣接ジオールの除去を可能にしました。この触媒と基質であるメチルマンノシドと溶媒の1,4-ジオキサンを加えた溶液を80気圧(8 MPa)の水素で加圧し、140℃で反応を行いました。51時間反応させることで、2,3-ジデオキシメチルマンノシドの単離収率は91%となり、水酸基を保護することなく一段かつ触媒的にジデオキシ糖を合成できることを世界で初めて示しました。触媒を反応後回収して焼成処理することで再使用しても活性、選択性の低下は見られませんでした。さまざまなメチルグリコシドに適用可能であり、対応するジデオキシメチルグリコシドが高収率(78-93%)で得られました。得られたジデオキシメチルグリコシドを加水分解することでジデオキシ糖に容易に変換可能であり、さらに水素化反応を組みあわせることで糖類固有の立体構造を保持したままでキラルポリオールに変換可能であること、さらに、ポリマー原料として用いられる両末端ジオール前駆体にも変換可能であることを明らかにしました(図2)。

本研究で開発した固体触媒プロセスは、糖固有の立体構造を保持したまま変換することでキラルポリオールを合成する手法を与える、これまでのバイオマスリファイナリーにない新規バイオマス変換手法として大いに期待されます。また、水酸基の保護なく糖類を高収率で変換する新たな手法を与えるものでもあり、糖鎖工学の観点からも更なる触媒技術及び変換手法の進歩が期待されます。

【用語解説】

(1) キラルポリオール
4つの単結合の置換基が全て異なる炭素原子である不斉炭素(キラル炭素)原子を有する複数個の水酸基を有するアルコール

(2) バイオマスリファイナリー
再生可能資源であるバイオマスを原料にバイオ燃料や樹脂などの有用化成品を製造するプラントや技術

【お問合せ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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