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高感度・高精細・リアルタイム近接容量イメージセンサを開発 - 東北大学とオー・エイチ・ティー株式会社が共同開発 -

2019/01/21

【発表のポイント】
  • 計測対象にセンサを近づけた際に生じる近接容量の二次元分布を高感度・高精細・リアルタイムに計測できる近接容量イメージセンサ(※1)を開発
  • 新しいノイズリダクション技術で10-19Fの容量検出精度を達成
  • 電子産業、認証、ライフサイエンス、農業分野などで分析、管理の高効率化に貢献
【概要】

東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻・未来科学技術共同研究センターの須川成利教授の研究グループは、オー・エイチ・ティー株式会社(社長:羽森 寛、本社:広島県福山市神辺町西中条1181-1)と共同で、フラットパネル・電子回路基板の検査や生細胞のイメージング等に期待される、微小な容量分布を2次元で高精細に動画撮影が行える近接容量イメージセンサの開発に成功しました。

近接容量イメージセンサは、指紋認証やタッチセンサー、材料内部の非破壊検査、液面レベルセンサー等に使われており、今後はフラットパネル・電子回路基板の非接触による電気検査や、細胞反応の可視化、植物活性度のモニタリング等への活用も期待されています。

今回、開発した近接容量イメージセンサでは、高感度CMOSイメージセンサの研究で培ったノイズリダクション技術を応用し、0.1アット(※2)Fの容量検出精度を達成しました。プロトタイプチップによる優れた容量イメージング性能を実証し、微小な二次元容量分布を高感度・高精細にリアルタイムで検出する技術の原理確認に成功しました。

以上の成果は、2018年12月3日-5日に米国サンフランシスコで開催された国際学会「米国電気電子学会(※3)国際電子デバイス会議(IEEE International Electron Devices Meeting)」で発表しました。

【開発の背景と技術の詳細】

近年、高精細化が進むフラットパネルディスプレイや電子回路基板の検査工程では、不良配線の位置特定への要求が高まっています。また、ライフサイエンス、化学、農業分野などで、イオン濃度や生細胞の反応を可視化する要求が高まりつつあります。

非接触で高精度に近接容量の二次元分布を簡便に計測できれば、電子デバイス産業や医療・農業における分析・管理の高効率化への貢献が期待されます。

須川教授の研究グループでは、これまでに光を用いて二次元画像を捉える高性能・高機能なCMOSイメージセンサの研究開発に取り組んできました。この度、フラットパネル検査装置や電子回路基板検査装置などの製造・販売を行っているオー・エイチ・ティー・株式会社と共同で、最小加工寸法0.18µmの半導体集積回路製造技術を用いて作製した、毎秒60枚の動画撮影が行える256×256画素の近接容量イメージセンサのプロトタイプチップを開発しました。開発した近接容量イメージセンサでは、CMOSイメージセンサ研究開発で培ったノイズリダクション技術を応用し、計測対象に設置した参照電極に印加する電圧パルスと同期したノイズリダクション方法を新たに導入することで、0.1アットFの容量検出精度を達成しました。これにより、絶縁材料内の微弱な誘電率の差や微小な導体の分布、導体表面の僅かな凹凸の分布を高精細な動画で可視化することが可能になります。実際に、微細な配線パターンの断線部分を非接触で特定することや、生理食塩水の水分が蒸発して食塩が再結晶化する様子を光を用いず非破壊で捉えることなど、これまで観測できなかった微小な容量分布を高精細に可視化することを実証しました。

従来の電子回路基板の検査では、不良配線の検出のみがなされていましたが、本センサを使用すると不良配線の検出とその位置の特定ができるため、本センサを搭載した検査装置とリペア装置と組み合わせることで、検査・リペアの高効率化が図れます。

以上の成果は、2018年12月3日-5日に米国サンフランシスコで開催された、電子デバイス技術のフラグシップ学会である「米国電気電子学会 国際電子デバイス会議(IEEE International Electron Devices Meeting)」で発表しました(発表番号29.1, M. Yamamoto, R. Kuroda, S. Suzuki, T. Goto, H. Hamori, S. Murakami, T. Yasuda and S. Sugawa, “A CMOS Proximity Capacitance Image Sensor with 16μm Pixel Pitch, 0.1aF Detection Accuracy and 60 Frames Per Second”)。

【語句説明】

※1 近接容量イメージセンサ
近接容量とは、計測対象にセンサを近づけた際に計測対象とセンサ内の電極間に生じる容量のことであり、近接容量イメージセンサはこの近接容量を二次元のエリアで検量するセンサを示す。指紋認証やタッチセンサー、材料内部の非破壊検査、液面レベルセンサー等に使われている。

※2 アット
国際単位系の接頭辞の一つで、単位の10-18倍の量であることを示す。

※3 米国電気電子学会
The Institute of Electrical and Electronics Engineers,の略。通称 IEEE (アイ・トリプル・イー)。人類社会の有益な技術革新に貢献することを目的とした世界最大の電気・電子技術に関する専門家組織で、世界160ヵ国以上、40万人を超える会員がいる。

【主な特長】

1. 高い空間分解能とリアルタイム動画撮影
>開発した近接容量イメージセンサは、4.8mm×4.8mmのチップ内に約6.5万個(256×256)の検出電極を持つ画素が16µmピッチで二次元に配置されています。薄い保護膜で覆われた検出電極に計測対象を近づけることで、計測対象中の対向電極と画素内の検出電極間に発生する微小な容量を画素毎に電圧信号に変換して出力します。20MHzの信号出力レートで毎秒60枚の動画撮影が行えます。今回開発した近接容量イメージセンサは,動作原理と性能確認を行うためのプロトタイプの仕様のものですので、用途に応じて画素ピッチの縮小や、多画素化によるセンシング面積の大型化、フレームレートの高速化なども対応可能です>



左・中央図:開発した近接容量イメージセンサの画素断面構造と容量計測方法の模式図(測定対象が導体, 液体中の場合). 右図:計測容量の分布の例.

2. 新しいノイズリダクション技術で0.1アットFの容量検出精度を達成
本センサでは、計測対象側に設置した参照電極に印加する電圧パルスと同期したノイズリダクション方法を新たに導入することで、0.1アットFの容量検出精度を達成しました。また、印加パルスの電圧振幅を調整することで、10-19F~10-11Fのレンジの容量を計測することができます。ノイズのレベルは、容量検出電極において、ノイズリダクション無しの場合に約14mVであったものが、ノイズリダクション有りの場合には約320µV(フレーム平均なし)および約55µV(フレーム平均100回)となります。


3. プリント配線基板、液晶・有機ELガラス基板の欠陥位置検出
従来は配線間の断線の断線不良および配線間の短絡の短絡不良の配線の不良検出できるがその位置の特定ができませんでした。本センサを使用して検査すると不良配線の検出とその位置の特定が非接触・非破壊で行えるようになります。本センサをステップ&リピート法で走査することで、大面積のプリント配線基板や、液晶・有機ELガラス基板の欠陥位置検出を行うことができます。また、本センサを搭載した検査装置とリペア装置と組み合わせることで、検査後直ぐにリペアして、その後再度検査できるため検査工程の効率化が図れるようになります。


 

4. 様々な計測対象に対応
検出電極を覆っている薄いシリコン窒化膜とシリコン酸化膜からなる保護膜の上に直接、液体を滴下することで、液体中の観察対象物の測定も行うことができます。微小な電気二重層の発生・消滅をとらえることも可能です。

また、本センサの表面を数十µm程度の薄いポリイミドシールで覆うことで、様々な計測対象に直接接触させることができ、導体の凹凸検出や、絶縁物内に存在する金属の分布、有機物・農作物・生体などに含有される水分量の分布など、様々な計測対象物に対応可能です。



 
【用途例】
  • フラットパネル・電子回路基板検査装置
  • 表面凹凸イメージング装置
  • 指紋認証
  • 細胞反応、抗体反応イメージング
  • 植物活性度モニタリング
 
【お問合せ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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