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2本のチューブで燃焼振動を抑制 - 燃焼不安定性で生じる強い気柱振動(燃焼振動)を著しく簡単な方法で抑制する方法を発見 -

2020/09/18

発表のポイント

  • ダクト内に発生する燃焼振動をチューブでダクトをカップリングすることで抑制できることを確認
  • チューブを2本用いることで1本の場合に比べて劇的に抑制効果が高まることを発見.
  • 簡単な方法で燃焼振動を抑制する方法への応用が期待される.
  • 安全性と低NOX化を両立した産業用燃焼器への貢献が期待される.

概要

ガスタービンや産業用燃焼炉において,燃焼振動*1を発生させることなく運転状態を保つことは現代社会を支える重要な工学技術です.東北大学大学院工学研究科の兵頭弘晃助教(研究当時、本学に在籍),博士課程前期課程2年岩崎正嗣氏,琵琶哲志教授らの研究グループは,燃焼振動を発生する燃焼ダクト同士を中空のチューブで結合することで問題の燃焼振動を停止できることを確認しました.さらに異なる長さの2本のチューブで結合することで,1本のチューブで結合するよりもはるかに細いチューブで抑制可能なことを発見しました.これは安全な燃焼技術の発展に貢献する新たな物理現象の発見です.

この手法を発展させることで,低NOX化を目指す最新の燃焼機器の安全性の確保への貢献が期待できます.

本成果は2020年9月3日付の米科学誌Journal of Applied Physicsにて掲載され,Featured articleに選ばれました.さらに,AIP (American Institute of Physics, 米国物理学会誌)のハイライト (Scilight) にも紹介されました.

論文情報

タイトル: Suppression of Rijke tube oscillations by delay coupling
著者: H. Hyodo, M. Iwasaki, T. Biwa
掲載誌: Journal of Applied Physics
DOI: 10.1063/5.0012105
URL: https://aip.scitation.org/doi/10.1063/5.0012105

Scilight

タイトル: Stopping thermoacoustic oscillations with double-tube coupling
URL: https://doi.org/10.1063/10.0001949

研究背景

我々の生活を支えるエネルギーの大部分は化石燃料を燃焼させることで得ています.この燃焼器ではしばしば燃焼振動と呼ばれる気柱振動が自励的に発生し,安全な稼働状態が阻害されることがあります.そのため,燃焼振動を抑制する技術を開発することは急務となっています.もちろん,信頼性の確保のためには単純・簡便な抑制方法である必要があります.

研究成果のポイント

自励振動を抑制する方法の一つに時間遅れ結合*2があることが非線形物理分野では知られていました.この時間遅れ結合を燃焼振動に応用したのが本研究の成果です.レイケ管*3と通称される典型的な燃焼振動が生じるダクトを2本用意し,この管を中空のチューブで接続することにより,時間遅れ結合を実現しました.結合はチューブ内の空気を伝搬する音響振動で伝達されるため,その遅れ時間はチューブ長さと音速で決まり,また結合力はチューブ断面積で決まります.本研究では,チューブ結合により燃焼振動が抑制可能なことを実証しただけでなく,長さの異なる2本のチューブで同時にダクトを結合することで1本のチューブの場合に比べてはるかに小さな断面積のチューブで燃焼振動を抑制できることを示しました.

今後の展望

チューブで結合するだけ,というごく簡単な方法で燃焼振動を抑制可能な本手法の発展例を紹介します.

発電所や航空機の燃焼器では燃焼振動発生を抑制するためにさまざまな対策が施されています.本研究で示したチューブ結合を追加することができればより安全に燃焼器を運転できるようになる可能性があります.

用語解説

*1 燃焼振動

燃焼器において,圧力変動と火炎による発熱変動が互いに相互作用することで発生する音響振動.系の固有周波数で非常に大きな振幅の圧力変動が生じることから,火炎の吹き消えだけでなく,燃焼器の破壊など故障の原因となることがある.

*2 時間遅れ結合

振動系を相互作用させる方式の一つ.一方の信号をある遅れ時間だけ送らせた後で他方に作用させるような結合方式を指す.

*3 レイケ管

19世紀に報告された熱音響自励振動系の一つ.中空の管を鉛直に支持し,下方から管のおよそ4分の1の位置に挿入した金網を真っ赤になるまで加熱すると,やがて大音響が鳴り響く.本研究では赤熱した金網の代わりにブンゼンバーナーを挿入し振動を発生させた.


図1. レイケ管型燃焼器の模式図(a)とチューブによる結合方法の模式図(b).

図2. 1本のチューブで結合したときの燃焼振動の圧力振幅.横軸はチューブ長さで決まる遅れ時間(= L/c,Lはチューブ長さ,cは空気の音速)と燃焼振動の周期Tの比.レイケ管の直径は40 mmに対し,振動抑制可能な結合チューブの直径は25 mmである.結合チューブのレイケ管に対する断面積比は0.39である.

図3. 2本のチューブ(遅れ時間はそれぞれ1,  2)で結合したときの圧力振幅(色で表示).チューブ直径は8 mmであるが,1/T = 0.5,  2/T = 1.0の組み合わせでは燃焼振動は停止した.結合チューブのレイケ管に対する断面積比はたったの0.04である.

お問合せ先

東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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