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常圧二酸化炭素からプラスチックの直接合成に世界で初めて成功 ~二酸化炭素の化学固定化に寄与する脱水剤を使用しない触媒プロセスを新たに開発~

2021/07/27

【本学研究者情報】
〇本学代表者所属・職・氏名:大学院工学研究科応用化学専攻・教授・冨重 圭一
研究室ウェブサイト

概要

大阪市立大学人工光合成研究センター 田村正純准教授、東北大学大学院工学研究科応用化学専攻 冨重圭一教授、日本製鉄株式会社先端技術研究所 中尾憲治課長らは、脱水剤を用いずに、常圧二酸化炭素とジオール※1から脂肪族ポリカーボネートジオールの直接合成を行う触媒プロセスの開発に世界で初めて成功し、酸化セリウム触媒を組み合わせることで、高収率かつ高選択率で脂肪族ポリカーボネートジオールを合成できることを学会誌「Green Chemistry」上で発表しました。

ポリカーボネートジオールは、プラスチックに代表されるポリウレタン合成の重要中間体であり、現在、ホスゲン※2や一酸化炭素を原料にして合成されていますが、これら原料は有毒なため、グリーンケミストリー※3の観点から原料を代替する技術の開発が求められています。代替原料に二酸化炭素を用い、ジオールと反応させてポリカーボネートジオールを合成する手法は、水のみを副生するグリーンな反応系として注目されているものの、高収率を得るには、高圧二酸化炭素や脱水剤を用いる必要がありました。本研究で見出した手法はこれら課題を克服するもので、酸化セリウム触媒を用い、ジオールに常圧の二酸化炭素を吹き込むことにより、生成した水を反応系外に除去することが可能になり、目的のポリカーボネートジオールを高選択率かつ高収率で得ることに成功しました。

本研究成果は、2021 年 7 月 26日(月)に『Green Chemistry (IF=10.18)』にオンライン掲載されました。

論文情報

タイトル:Direct synthesis of polycarbonate diols from atmospheric flow CO2 and diols without using dehydrating agents
著者: Yu Gu, Masazumi Tamura,* Yoshinao Nakagawa, Kenji Nakao, Kimihito Suzuki, and Keiichi Tomishige
発表雑誌: Green Chemistry (IF=10.18)
DOI:10.1039/d1gc01172c

1. 背景

地球温暖化に伴う気候変動や自然災害が顕著になってきており、主要な温室効果ガスの一つである二酸化炭素の削減が世界的に求められています(パリ協定、削減目標と実行計画)。二酸化炭素をC1化学原料※4として捉え、有用な化学品に変換する手法は近年注目を集めており、二酸化炭素固定化に資する技術として期待されています。しかしながら、二酸化炭素は非常に安定な分子であり、その活性化には高機能な触媒とそのプロセス設計が鍵となります。二酸化炭素の変換技術として、二酸化炭素の炭素原子の酸化数を変化させることなく変換する非還元的手法があり、二酸化炭素に対しアルコールやジオールをうまく反応させることができれば、有用化学品である有機カーボネートや脂肪族ポリカーボネートが合成可能になります。これらのカーボネート化合物は、主に、ホスゲンや一酸化炭素といった有毒な化学原料を用いて合成されており、これらのプロセスを代替する技術の開発が強く求められています。二酸化炭素の長期的な固定化については、ポリマーに変換する方法が有利になると考えられます。しかしながら、二酸化炭素とジオールからポリカーボネート合成は、そのままでは反応がほとんど進行せず、副生する水を除去しないと目的のポリカーボネートがほとんど得られない(<1%)といった課題を抱えていました。二酸化炭素とジオールからの直接重合例として、ニトリルを有機脱水剤、酸化セリウムを触媒として用いた触媒反応系が報告されていますが、高圧の二酸化炭素を必要とし、脱水剤の回収・再生が課題となります。さらに、脱水剤であるニトリルと原料ジオールや生成物とが反応し、それにより生成した副生成物の混入といった問題も抱えることになるため、脱水剤を用いない触媒プロセスが望まれていました。

2. 研究内容

二酸化炭素とジオールからのポリカーボネートジオール合成では、水が副生し、収率の向上には水の除去が必須となります。脱水剤を用いない水除去手法として、生成物やジオールと水の沸点差に着目し、常圧の二酸化炭素を吹き込み、水を蒸発除去することで目的のカーボネート合成が進行すると予想しました。結果、様々な金属酸化物触媒の中で、酸化セリウム触媒のみで高い活性を示すことが明らかとなり、脱水剤を用いることなく、また、高圧二酸化炭素を必要としない、非常にシンプルな触媒反応系の開発に成功しました。

3. 期待される効果

本技術により、添加剤を用いず、常圧の二酸化炭素を化学変換できる新しい触媒プロセスを提供します。また、本技術は沸点が水の沸点よりも十分高い基質であれば適用可能であると考えられ、リチウムイオンバッテリーの添加剤やポリマー合成用原料として有用な有機カーボネート※5、カーバメート※6、尿素などの合成にも展開可能と考えています。二酸化炭素から様々な化学品合成ルートを確立することで、二酸化炭素の化学固定化に寄与する触媒プロセスになると期待されます。

4. 今後の展開について

実用化に向けた固体触媒の改良、スケールアップを含めたプロセス検討を行いながら、さらに研究開発を進めていく予定です。

5. 研究プロジェクトについて

本研究の成果は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務「NEDO先導研究プログラム/未踏チャレンジ2050」の実施により得られたものです。

大阪市立大学、東北大学では二酸化炭素変換用固体触媒に関する研究開発をこれまで継続して行ってきており、酸化セリウムをベースとする金属酸化物触媒が二酸化炭素の活性化に有効であることを見出しています。今回のプロジェクトでは、高炉などから排出される常圧の二酸化炭素を原料として反応させることを目指し、回収・再利用などが必要となる脱水剤を用いずに、二酸化炭素からのポリマー合成を実現できる固体触媒系の開発を行いました。

日本製鉄株式会社は、気候変動問題に対する独自の取り組みとして、本年3月に「日本製鉄カーボンニュートラルビジョン2050~ゼロカーボン・スチールへの挑戦」を公表し、2050年までのカーボンニュートラルの実現を経営の最重要課題と位置付けています。本研究の成果は、製鉄所から排出される二酸化炭素を分離・回収し、低エネルギーで機能性化学品などのような有用物質への変換が可能なことを実証したもので、二酸化炭素固定化、二酸化炭素削減に貢献できる意義は大きいと考えています。

用語説明

※1 ジオール

2つの水酸基(OH基)が2個の異なる炭素に結合している化合物の総称

※2 ホスゲン

別名、塩化カルボニル。非常に反応性が高いため、様々な原料として利用される一方、毒性も非常に強く、人体には目を激しく刺激し、窒息性の毒性を示す。

※3 グリーンケミストリー

化学品などの化合物の設計、合成、応用、廃棄までにおいて、人体および環境への負荷を低減しようとするコンセプトと、そのための技術の総称。

※4 C1化学原料

二酸化炭素、一酸化炭素、メタンなど、炭素原子を一つ含む化学品原料のこと。

※5 カーボネート

-O-CO-O-の構造を有する化合物を一般的に、カーボネート化合物あるいは、炭酸エステルという。

※6 カーバメート

>N-CO-O-の構造を有するカルバミン酸エステル化合物の総称。カルバメートともいう。

お問合せ先

東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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