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高分子を用いた神経模倣素子の動作原理を解明 - 神経のような動きをする電子部品の設計に向けた「地図」をつくる -

2022/01/14

【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科応用化学専攻 助教 山本 俊介
ウェブサイト

発表のポイント

  • 神経の動作を模倣した電子素子(以下、「神経模倣素子(注1)」と呼ぶ)の応答速度の決定要因を明らかにした
  • 上記の知見に基づき、神経模倣動作をモデル化する方法を見出した
  • この成果は脳型コンピュータへの応用などの波及効果が期待される

概要

脳のすぐれた情報処理能力を人工的に実現することを目的とした「ニューロコンピューティング」の研究が、ソフトウェア、ハードウェアの両面から盛んに行われています。ハードウェアの面では、脳の神経回路を構成するシナプスの動作を模倣した「神経模倣素子」の研究が注目を集めています。東北大学の山本俊介助教(大学院工学研究科応用化学専攻)と英国ケンブリッジ大学のGeorge G. Malliaras教授らは、導電性高分子を用いた神経模倣素子の高性能化と動作原理解明を目指して研究を行いました。その結果、神経模倣素子の応答は素子内のイオンの動きに支配されることが分かりました。これは神経模倣素子の設計方針の構築に寄与するだけでなく、今なお不明な点が多い動作原理の解明にも役立つ成果です。本研究の成果は、脳の動作を模倣した新型コンピュータの応用研究につながることが期待されます。

本研究は本学が推進する「若手リーダー研究者海外派遣プログラム」を活用した在外研究(2018~2019年度)による成果です。

本成果は2022年1月13日(ドイツ時間)にドイツWILEY-VCHの科学誌「Advanced Electronic Materials」誌でオンライン公開されました。

詳細な説明

脳の持つすぐれた情報処理能力を人工的に実現することを目的とした、「ニューロコンピューティング」の研究が、ソフトウェア、ハードウェアの両面から盛んに行われています。ハードウェアの面では、脳の神経回路を構成するシナプスの動作を模倣した、「神経模倣素子」の研究が注目を集めています。

本研究グループは中でも導電性高分子を用いた電気化学トランジスタ(注2)という電子素子に注目し、これを神経模倣素子として駆動させることを目指してきました。この素子は電子とイオンの二種類の電気伝導を巧みに組み合わせて動作させる素子であり、身に着けて用いるウエアラブル機器への応用が期待されています。以上のように優れた特長を有する電気化学トランジスタ型の神経模倣素子ですが、その動作原理は必ずしも明らかではありませんでした。本研究グループはこれまでに、イオン伝導性高分子を添加することで応答速度を制御することに成功しました*が、「この方法がなぜうまくいくのか?」は明らかではなく、「望みの応答を得るにはどのような設計にすればよいか?」に十分に答えることができませんでした。

そこで今回の研究では、電解質として用いるイオンの種類や膜の架橋度などを変えた一連の物性評価によって電気化学トランジスタのイオン注入(ゲート)および出力信号(ドレイン)それぞれの過渡的な応答を測定しました。その結果、用いるイオンのサイズによってイオン注入の速度が変化することを見出し、さらに全体の応答速度がイオン注入速度に支配されていることを明らかにしました。これらの実験事実に基づいて神経模倣動作のモデル化を試み、望みの応答を得るための条件を明らかにする「地図」(図2)を作成することに成功しました。このように本研究では、神経模倣素子の応答速度を自在に制御するための設計指針の確立に成功しました。今後はさらなる高性能・高機能化を目指した材料開発と、素子を複数組み合わせた回路網の構築に向けた応用研究の両面から研究展開が期待されます。

*「高分子を用いた神経模倣素子の応答速度制御に成功 『神経のような動き』をする電子部品の実用化に向けて」
2020年6月24日 東北大学プレスリリース
https://www.tohoku.ac.jp/japanese/2020/06/press20200624-01-kobunshi.html

 


図1 今回の研究で用いた電気化学トランジスタ素子の写真。

図2 電気化学トランジスタ(左上)と神経模倣動作を行うための入力信号と出力信号(左下)の模式図、およびこれらをモデル化して得た神経模倣応答を予測する「地図」(右)。

用語解説

(注1)神経模倣素子

神経細胞に類似した動作をする電子素子。入力側への信号入力頻度や数によって出力側への信号伝達効率が変化する特徴を持ちます。特定の素子構造、方式にとらわれずに神経模倣動作するものはこのカテゴリに入るため、本研究の方式の他にも、例えばスピントロニクスを用いた実現を目指す研究も行われています。

(注2)電気化学トランジスタ

電子とイオンの両方を輸送する「混合伝導体」を活性層(チャネル)とし、この層へイオンの注入・抜き出しによって活性層の電気伝導率を変調する電子素子。今回のような神経模倣素子の他にも生体センサへの応用も盛んに行われています。

付記

本研究は、東北大学若手リーダー研究者海外派遣プログラム、東北大学多元物質科学研究所プロジェクト、科研費若手研究18K14294、科研費基盤研究(B)21H01992、野口遵研究助成金の支援を受けました。

論文情報

タイトル:Correlation between Transient Response and Neuromorphic Behavior in Organic Electrochemical Transistors
雑誌名: Advanced Electronic Materials
著者: Shunsuke Yamamoto, Anastasios G. Polyravas, Sanggil Han, George G. Malliaras
DOI: 10.1002/aelm.202101186
URL: https://doi.org/10.1002/aelm.202101186

お問合せ先

< 研究に関すること >
東北大学大学院工学研究科 応用化学専攻 機能高分子化学分野
助教 山本 俊介
TEL:022-795-7229
E-mail:syama@tohoku.ac.jp
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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