6G通信向け電波制御材料 安価に大量生産 - 世界初 部材として供給可能な三次元バルクメタマテリアルを開発 -

2022/03/10

【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科ロボティクス専攻 教授 金森 義明
研究室ウェブサイト

発表のポイント

  • 幅広い屈折率特性を有するテラヘルツ光学材料“三次元バルクメタマテリアル”を開発
  • 液状樹脂に混合し任意形状に加工することを目的として、粉末状での提供を実現
  • この光学材料を安価に大量生産可能な製造技術を開発
  • 次世代通信技術「6G」をはじめ、医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での応用に期待

概要

世界ではすでに移動通信システム5Gの次の世代「6G」を見据えた研究開発が始まっており、5G用の電波(ミリ波)よりさらに波長が短いテラヘルツ波注1が使用されることが明示されています。しかしながら、テラヘルツ波の制御に適した材料が乏しいため、加工が容易かつ幅広い屈折率特性を有する新規材料の開発が求められています。東北大学大学院工学研究科の金森義明教授と岡谷泰佑助教らのグループは、自由な形状に形成可能かつ任意の屈折率特性を有するテラヘルツ光学素子の実現を目指し、メタマテリアル注2を内包した粉末状の新たなテラヘルツ光学材料の加工・形成技術を確立しました。

本研究成果は、2022年2月28日付で、Nanophotonicsに掲載されました。

研究の背景

国内では2020年3月に第5世代(5G)移動通信システムによる商用サービスが始まりました。一方、世界ではすでに2030年代の実用化を目指して5Gの次の世代「6G」を見据えた研究開発が始まっており、テラヘルツ波が使用されることが明示されています。その実現には、テラヘルツ波を自在に操作するためのレンズ・プリズム・フィルタ等の光学素子が必要となります。しかしながら、テラヘルツ領域では光学材料の選択肢が乏しいため、多種多様な光学素子の実現が困難であり、加工が容易かつ幅広い屈折率特性を有する新規材料の開発が待たれています。メタマテリアルは、超微細構造体で構成される人工光学物質で、これまでの電磁波操作技術の限界を打ち破る革新的な人工構造体として注目されています。本研究では、自由な形状に形成可能かつ任意の屈折率を有する三次元バルクメタマテリアルを、安価で大量に部材として提供可能な製造技術の開発に世界で初めて成功しました。

研究のポイント

図1に、三次元バルクメタマテリアルの概念図を示します。透明樹脂中にメタマテリアル単位構造が三次元的に方向依存なく分散された構造であるため、偏光依存性が解消され、等方的な光学特性が実現できます。メタマテリアルの単位構造は、半導体の微細加工技術を用いてパターニング可能な任意の人工的な構造体にすることができます。任意形状のメタマテリアル単位構造を形成可能な製作技術を用いた立体的メタマテリアルは実現されていますが、厚みの制約や構造の向きの制約があり、三次元的に等方分散されたバルクのメタマテリアルは実現されていませんでした。また、自己組織化パターニングやバイオテンプレートを用いた製作方法は、メタマテリアル単位構造の形状が制約されてしまいます。本研究では、製造上の厚みの制約がなく、設計に基づく任意形状の様々なメタマテリアルを三次元的に等方分散した真の三次元バルクメタマテリアルの製造技術を開発しました。テラヘルツ領域において、光学特性をオーダーメイドで設計可能な革新的新材料を実現するための基盤技術となります。


図1 三次元バルクメタマテリアルの概念図

図2 メタマテリアル内包粉末

図2に示すように、開発したメタマテリアルは粉末として供給可能です。テラヘルツ波の波長よりも小さな数十~数百μm程度の大きさのメタマテリアルが内包された樹脂製粉末を液状樹脂に攪拌し、型を用いて凝固させることで、任意形状かつメタマテリアルの設計に応じた屈折率特性を持つ光学物質(三次元バルクメタマテリアル)を製作できます。

図3(a)のように、金型成形により、一例として直径12 mm、厚さ1.6 mmの三次元バルクメタマテリアルを製作することに成功しました。図3(b)は、代表的なメタマテリアル単位構造のスプリットリング共振器を内包した1辺100 µmの立方体の粉末を用いて、製作した三次元バルクメタマテリアルです。メタマテリアルは三次元的にランダムに分散配置されています。周波数0.7 THz付近において、屈折率を0.135変化させることに成功しました。


図3 三次元バルクメタマテリアル  (a) 外観写真、(b) 拡大写真

波及効果

これまで開発されてきた平面的に形成されたメタマテリアルは、バルク材料のようにユーザーが自由に二次加工することは困難でした。また、メタマテリアルを部材として入手することが困難なため、メタマテリアル光学素子を製作するためには高度な微細加工技術が求められ、社会実装に繋げるうえで大きなハードルとなっていました。今回開発したメタマテリアルは固体の粉末材料として供給可能なため、金型成形や切削加工などの機械加工により、メタマテリアルを自由に加工してテラヘルツ光学素子を実現できる点が画期的です。これらの利点を活かし、6Gの通信技術をはじめ、医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での応用が大いに期待されます。

論文情報

タイトル:Terahertz 3D bulk metamaterials with randomly dispersed split-ring resonators
著者: Taiyu Okatani, Yuto Sunada, Kazuhiro Hane, and Yoshiaki Kanamori
掲載誌: Nanophotonics
DOI: 10.1515/nanoph-2021-0703
URL: https://doi.org/10.1515/nanoph-2021-0703

用語説明

注1 テラヘルツ波

光波(赤外線)と電波(ミリ波)の中間にあたる帯域の電磁波であり、赤外線のように検査・分析に用いる他、ミリ波に次ぐ次世代通信(6G)用の電磁波として期待されている。

注2 メタマテリアル

制御の対象とする電磁波の波長より小さな単位構造で構成され、自然界にはないような電磁波応答を示す人工光学物質。空間的な局在電場モード(光の状態密度)を自在に設計し得る最小の光共振器とも言え、電磁波の応答特性は主にメタマテリアルの形状で決まる。光共振器の設計次第で実効的な屈折率を自在に制御できる。要求に応じた屈折率を持つ光学材料を設計に基づき人工的に実現でき、負の屈折率、透明マント(クローキング)、完全レンズなどの実現可能性が示されている。

お問合せ先

< 研究に関して >
東北大学工学研究科 ロボティクス専攻 教授 金森 義明
TEL:022-795-4893
E-mail:ykanamori@tohoku.ac.jp
< 報道に関して >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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