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植物の乾燥適応経路を抑制する天然化合物の同定 - 緑茶で植物もストレスから開放される -

2022/05/18

【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科バイオ工学専攻 教授 魚住 信之
研究室ウェブページ

発表のポイント

  • 緑茶に含まれる二種類のカテキンが、乾燥に対抗する植物の反応経路を抑制することを解明した
  • イオン輸送体(注1)を標的にした植物調節剤(バイオスティミュラント(注2))の探索法の有効性を示した
  • 人・環境に配慮した安全な除草剤の候補分子への展開が期待される

概要

緑茶に含まれるカテキンは、抗酸化作用や抗菌作用など人体に良い効果が期待されていますが、植物のストレス低減や生理的な反応にも影響を与える可能性がありそうです。

東北大学大学院工学研究科の魚住信之教授らの研究グループは、東京大学大学院理学系研究科、岡山大学、ミラノ大学との共同研究で、植物の気孔の開閉調節を担うイオン輸送体を阻害する2つの天然化合物を緑茶の成分から見いだしました。これら化合物は天然除草剤・バイオスティミュラントの候補物質としても期待されます。本研究は、5月出版のAdvanced Science誌に掲載されました。

研究内容

私たち動物は、口(腸や肺)から養分・水分・O2を体内に取り込みます。一方、植物は、根で無機物(リン・窒素化合物・カリなど)・水分を吸収し、葉の気孔で光合成に必要なCO2を吸収し、O2・水分を排出します。気孔の開閉は、植物の物質交換と体内生理を調節する役割を担っています。

本研究では、植物の気孔開度を人為的にコントロールすることを目的に、気孔開度調節にかかわる分子装置(イオン輸送体)を阻害する分子標的化合物を探索しました。その結果、茶カテキン類(フラボノイド)のなかから、カテキンガレート(CG)とガロカテキンガレート(GCG)を同定しました。植物は乾燥ストレス下では、植物ホルモンのアブシシン酸(ABA)が生合成され、それを介して気孔を閉鎖させることが知られています。モデル植物にCGまたはGCGを与えると、ABAが介在しても気孔は閉鎖せず開口したままでした。さらに、CG/GCGは、病害菌感染で誘導される気孔閉鎖も抑制することがわかりました。一方、暗所誘導による気孔閉鎖は生じませんでした(図1、図2)。これらの結果より、CG/GCGはストレス環境における植物の気孔閉鎖を抑制することが明らかになりました。

今後の展望

カテキンは人の生理に良好な刺激を与えますが、本研究により植物ストレスホルモンの効果の緩和も担う一面が明らかになりました。茶殻、茶葉の残渣など天然性産業廃棄物の利用などの検討が期待されます。現在、国際的に化学農薬の成分規制は厳しくなっていますが、食糧増産の必要性に迫られています(SDGs)。本成果は、化学農薬の代替となるバイオスティミュラントや人・環境に配慮した安全な農薬の候補成分の探索研究の一つの例を示しています。

本研究は、東北大学大学院工学研究科のほか、東京大学大学院理学系研究科の河野優助教、岡山大学学術研究院環境生命科学学域の村田芳行教授、宗正晋太郎准教授、ミラノ大学のAlex Costa教授との共同研究として行われました。JSPS、JST-moonshot、BIP、ミラノ大学の支援を受けました。


図1:本研究成果の概念図
緑茶に含まれる二種類のカテキン(CGおよびGCG)は、乾燥時にABAにより誘導される気孔閉鎖を抑制(緩和)する。

図2:植物の葉面温度の観察結果(引用論文より)
ABAを処理すると気孔が閉鎖し蒸散できなくなり葉面温度が上昇する(左列、緑色(上)→赤色(下))。ABAとカテキン(CG/GCG)を同時処理すると気孔は開口し続けるため葉の温度はほとんど変わらない(中列・右列、緑色(上)→緑色(下))。

論文情報

タイトル: Green tea Catechins, (-)-Catechin Gallate and (-)-Gallocatechin Gallate, are Potent Inhibitors of ABA-Induced Stomatal Closure
(緑茶成分のカテキンガレートおよびガロカテキンガレートはABAが誘導する気孔閉鎖を抑制する) 著者: Kanane Sato, Shunya Saito, Kohsuke Endo, Masaru Kono, Taishin Kakei, Haruka Taketa, Megumi Kato, Shin Hamamoto, Matteo Grenzi, Alex Costa, Shintaro Munemasa, Yoshiyuki Murata, Yasuhiro Ishimaru, Nobuyuki Uozumi
掲載誌: Advanced Science, 2022
DOI: 10.1002/advs.202201403
URL: https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/advs.202201403

用語説明

(注1)イオン輸送体

生体膜に埋め込まれたイオンを透過する分子装置。生体膜はイオンを透過しないため、輸送体と呼ばれる穴の開いたタンパク質がイオンなど必要な物質を輸送する。

(注2)バイオスティミュラント

直訳は「生物刺激剤」であるが、植物を調節する物質(植物調節剤)の意味合いで使われる。植物が被るストレスなどに対して、植物の生理状態を適応させることにより、その影響を緩和する農業資材。

お問合せ先

< 研究に関すること >
東北大学 大学院工学研究科 バイオ工学専攻 教授 魚住 信之
TEL:022-795-7280
E-mail:uozumi@tohoku.ac.jp
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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