北大・東北大共同開発のフィリピン共和国第2号衛星「DIWATA-2」が台風11号の目の撮影に成功 - 今後の台風・積乱雲など極端気象の高精度・高頻度観測に期待 -

2022/09/14

【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科航空宇宙工学専攻 教授 吉田 和哉
研究室ウェブページ

発表のポイント

  • 台風勢力を正確に推定するには、台風の目の雲(壁雲)の形状を高精度で把握することが必要。
  • 従来の静止気象衛星では一定角度での撮像のみで、3次元構造観測は不可能で、かつ解像度も低い。
  • 複数角度からの連射撮影が可能な超小型衛星DIWATA-2により台風11号の壁雲の詳細な3次元観測に成功。

概要

北海道大学、東北大学及びフィリピン政府が共同開発した超小型衛星が、沖縄に接近した台風11号の壁雲の詳細な3次元観測に成功しました。

台風勢力を正確に推定するには台風の目の雲(壁雲)の形状を高精度で把握する必要がありますが、これまでのほとんどの衛星ではその詳細な構造を立体的に撮影することは不可能でした。北海道大学、東北大学及びフィリピン政府が共同開発し、2018年10月に打ち上げられたフィリピン共和国の第2号超小型衛星DIWATA-2は、カメラの視野を特定の緯度経度に固定しながら撮影する高度なターゲットポインティング機能を有します。今回、非常に強い台風11号の目を標的に、複数角度から連写撮影することに成功しました。


モノクロ魚眼カメラによる台風画像
日本時間2022年8月30日 14:43:51に魚眼カメラが捉えた台風11号

背景

毎年、台風は日本を含むアジア地域を始め世界各地で甚大な被害をもたらしています。台風の中心位置の予測精度は向上を続けている一方で、台風勢力の予測誤差はこの15年あまりの間に拡大する傾向にあります。台風の中心気圧や最大風速を観測から推定することは、現状把握と予測にとって本質的です。現在、台風勢力は、静止気象衛星の画像を過去のパターンから比較することで推定していますが、誤差の大きさが問題とされています。台風の目の雲(壁雲)の形状を高精度で知ることができれば、台風勢力の推定が大きく前進することに繋がります。しかし、静止気象衛星の解像度は低く、また撮影する角度は一定なので、雲の3次元構造をステレオ観測(立体視撮影)することは不可能です。もし壁雲を短時間に複数角度から高解像度で撮影できれば、3次元構造の推定が可能になります。しかし、静止気象衛星に限らず、スナップショットで2次元撮影を行い、さらに一つのターゲットを複数角度から撮影する機能を持った衛星はごく少数であり、これまで台風などの日常の気象観測に使用できるものはありませんでした。

北海道大学及び東北大学の研究グループは、フィリピン科学技術省先端科学研究所(DOST-ASTI)とフィリピン大学ディリマン校(UPD)が協力して立ち上げたプログラム(PHL-Microsat Program、2015-2019)で2機の地球観測用超小型衛星「DIWATA-1」「DIWATA-2」の開発と打ち上げ、運用に成功しました。それがひとつの契機となって、10年来設立が保留になっていたフィリピン宇宙庁(PhilSA)が2019年に設立され、PHL-Microsat Programでフィリピン側の代表を務めたフィリピン大学ディリマン校のジョエル・ジョゼフ・マルシアーノ・ジュニア教授が初代長官(閣僚級)に就任しています。

これらの超小型衛星は、大きさが約50cmとコンパクトで約50kgと軽く、開発と打ち上げを合わせた費用は従来の衛星の約1/100となる5億円前後です。しかも開発期間は約1/10の1年余りにも関わらず、高度なカメラ指向性能を持ち、大型衛星を凌ぐ世界最高のバンド数を持つスペクトル撮像の機能を有する高性能衛星です。すでにDIWATA-1は役目を終えていますが、DIWATA-2は高度約600kmの極軌道を周回しており、日本の協力のもと、フィリピンの技術者や学生の手によって順調に地球観測を継続しています。

研究手法・研究成果

2022年8月30日(火)、発達した台風11号の中心部を撮影するために、DIWATA-2が台風に最接近する頃の台風の位置と進路予測を参考に推定し、搭載カメラの視野を台風中心部に向けるターゲットポインティング運用を行いました。DIWATA-2には、地上解像度5 mから7 kmまでの5種類のカメラが搭載されていますが、今回は、モノクロ魚眼カメラと、地上分解能55mの高解像度モノクロカメラを用いて撮影を行いました。

日本時間8月30日 14:43:51に魚眼カメラで撮影された画像を示します(上図)。衛星は台風のほぼ真上に位置し、地球の円形の縁は中心から約3000 kmの距離にあります。台風を中心に、視野の周縁部までスパイラル状の雲が見られます。また14:42:51-14:44:51の2分間には、視野に台風中心を捉えたまま6秒ごとの露光を18回繰り返す連写を行いました。その中から24秒ごとに撮影された4枚を示します(図1)。台風の目の中に、筒状に切り立った「壁雲」が確認できます。また目の底に見えている暗い領域は海面で、その上に見える白い模様は、低高度(500-800 m)の雲です。この目の穴に対し、やや斜めから撮影しているために、衛星が位置を変えるに従い、見えている海の面積が変化するのがわかります。壁雲や雲頂付近の雲の模様は見る角度によって形状が変わるため、それによって雲の3次元構造を推定することが可能になります。


図1 高解像度モノクロカメラによる台風の目の連写画像
日本時間2022年8月30日 14:42:51-14:44:51に、視野に台風中心を捉えたまま18回の連写を行なったが、その中から24秒ごとに撮影された4枚を示す。台風の目の中に、筒状に切り立った「壁雲」が確認できる。解像度は約55 m。

このような発達した台風の中心部の詳細な3次元観測は、世界的に例がありません。今後、解析を進めることで、台風の目の詳細な構造を明らかにし、台風勢力との関係を明らかにする計画です。

今後への期待

北海道大学・東北大学の研究グループは、今回のDIWATA-2を含め、これまでに50kgクラスの超小型衛星6機の開発・打ち上げと地球観測に成功しており、これは日本国内の大学・企業の中でトップクラスです。また、超小型衛星を用いた国際共同ネットワークの構築を進めており、9カ国16機関が加盟するアジア・マイクロサテライト・コンソーシアムを主導しています。今後、本研究グループのリードによって各国が開発・保有する数十機の高機能衛星を連携運用することで、気象災害の大きな要因の一つである台風を含む様々な気象現象やその結果起こる災害について、従来の衛星では不可能であった高い精度と頻度での観測を実現していきます。

お問合せ先

< 研究に関すること >
東北大学 大学院工学研究科 航空宇宙工学専攻 教授 吉田 和哉
TEL:022-795-6992
E-mail:yoshida.astro@tohoku.ac.jp
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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