東北大学とブリヂストンがゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始
2023/08/02
発表のポイント
- 東北大学ソフトマテリアル研究拠点が社会実装を進める計測科学と計算科学に、ブリヂストンが培ってきたゴムの知見を組み合わせることで、ゴムの分子・原子レベルでの計測と、物性の計算(シミュレーション)技術の向上を目指します。
概要
国立大学法人東北大学(所在地:宮城県仙台市/総長:大野 英男)と株式会社ブリヂストン(所在地:東京都中央区/取締役 代表執行役 Global CEO:石橋 秀一)は、ゴムのシミュレーション基盤技術に関する共同研究を開始しました。
本研究は、東北大学ソフトマテリアル研究拠点が社会実装を進める計測科学注1と計算科学注2に、ブリヂストンが培ってきたゴムの知見を組み合わせることで、ゴムの分子・原子レベルでの計測と、物性の計算(シミュレーション)技術の向上を目指すものです。これにより、高レベルな解析を可能とする材料シミュレーション基盤技術を構築することで、データドリブン注3で革新的な材料開発を実現していきます。
詳細な説明
東北大学は 2020 年 8 月に、ソフトマテリアルの社会実装の加速・拡大に資するため、東北大学の研究者と企業との産学連携を目指し、ソフトマテリアル研究拠点(拠点共同代表:寺内正己 陣内浩司)を設立しました。拠点ではマルチモーダル注4な計測ネットワークを構築し 、得られた計測データに基づき、AI 技術、計算(シミュレーション)技術を用いたソフトマテリアルの機能予測を分子単位から高次構造までのマルチスケールの視点で行い 計測科学と計算科学の融合をはかることで企業ニーズに応えるワンストップソリューションの提供を目指します。
ブリヂストンは、「ゴムを極める」「接地を極める」「モノづくりを極める」の 3 つの「極める」を軸に、技術イノベーションを加速させています。今回の共同研究により、ゴムの分子スケールからタイヤ挙動を予測評価することを実現し、材料開発の革新、効率化に繋げることで、「ゴム・接地を極める」をさらに進化させていきます。今後も、昨年発表した「2030 年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)」注5に沿って、このようなパートナーの皆様との共創を推進することにより、常態化する変化に動ぜず、ゴムのように強靭でしなやかに変化をチャンスに変えるレジリアントな“エクセレント”ブリヂストンへの変革を加速していきます。
担当者のコメント
東北大学 ソフトマテリアル研究拠点副代表(社会連携担当) 岡部朋永
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)あるいはインフォマティクスといったデータ科学をエンジニアリング現場に適用しようという試みが多くなされています。これらの取り組みは開発コストの低減、研究の効率化といった優れた面もありますが、核となる現象が見逃されてしまう可能性があります。 特にタイヤは複雑な階層構造を有しており、材料中の微小な構造の差異が、大きくタイヤ性能に影響することが知られております。これらの現象は、データの統計処理だけでは実態の把握ができません。そこで、複雑な階層構造をより定量的に評価すべく、マルチモーダルな計測科学と原子分子レベルからのマル チスケール計算科学を融合した新たな取り組みを開始しました。この計算計測融合の取り組みにより、材料中の複雑な現象がモデル化出来るだけでなく、現象理解に基づいたデータ科学への展開が期待されます。
株式会社ブリヂストン サステナブル・先端材料統括部門長 大月正珠
ブリヂストンは企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」注6を掲げ、サステナブルなソリューションカンパニーへの変革を加速しています。その変革を推し進める中で、用いる原材料や製造プロセスおよびお客様へ提供する製品に限らず、開発スタイルそのものもサステナブルにしたいと考えています。ブリヂストンの強みとするゴム材料科学と東北大学の強みである最先端の計測科学および計算科学を融合させることにより、データドリブンな開発の基盤を作り、効率的に革新材料を創出しつづける基盤技術が構築できると期待しています。今後も様々なチャレンジを通じて、人財育成、イノベーション加速や新たな社会価値・顧客価値共創の実現を推進します。
用語説明
(注1)計測科学
センサー開発等により、物理量の正確な測定・計測を実現する工学。東北 大学では、先端電子顕微鏡や次世代放射光を活用した取り組みを行っている。
(注2)計算科学
計算機を活用して科学技術上の問題解決を進める科学。東北大学では、原子や分子レベルのナノスケールから最終製品までの階層構造を包括的に複数のスケールでシミュレーション等を行っている。
(注3)データドリブン
行動や意思決定をデータの分析結果に基づいて行うようにすること。
(注4)マルチモーダル
現象を電子顕微鏡や放射光などで得られる複数視点の情報で扱うこと。
(注5)2030年長期戦略アスピレーション(実現したい姿)- Bridgestone 3.0 Journey –
(注6)Bridgestone E8 Commitment(ブリヂストンイーエイトコミットメント)
ブリヂストンは、「2050 年 サステナブルなソリューションカンパニーとして社会価値・顧客価値を持続的に提供している会社へ」というビジョンの実現に向けて、企業コミットメント「Bridgestone E8 Commitment」を制定しました。これを未来からの信任を得ながら経営を進める軸とし、ブリヂストンらしい「E」で始まる8つの価値(Energy、Ecology、Efficiency、Extension、Economy、Emotion、Ease、Empowerment)を、ブリヂストンらしい目的と手段で、従業員・社会・パートナー・お客様と共に創出し、持続可能な社会を支えることにコミットしていきます。
https://www.bridgestone.co.jp/corporate/news/2022030101.html