東北大学特別招聘プロフェッサーの佐川眞人博士(大学院工学研究科修了生)2023年第44回本田賞の受賞決定
2023/09/30
大学院工学研究科の修了生であり本学特別招聘プロフェッサーの佐川眞人博士が2023年第44回本田賞の受賞者に決定しました。
本田賞は、公益財団法人 本田財団(設立者:本田宗一郎・弁二郎兄弟、理事長:石田寛人)が創設した賞で、「人間性あふれる文明の創造」に寄与する研究成果に対し表彰を行う、日本初の科学技術分野における国際褒賞です。
2023年第44回本田賞では、世界最強の永久磁石である「ネオジム磁石」を、それぞれ独立した研究によって同時期に発明し異なる製造方法を確立させた、佐川眞人博士(大同特殊鋼株式会社 顧問・NDFEB 株式会社 代表取締役)と、ジョン・J・クロート博士(ジョン・クロートコンサルティング社 元代表取締役)が受賞決定となりました。
佐川博士の研究について:ネオジム磁石の発明と焼結法の開発
1975年、佐川博士は、サマリウム・コバルト系永久磁石(Sm-Co5 磁石)の機械的な強度を改善する研究に取り組んでいました。その中で、資源量が豊富なうえに磁気モーメントが高い鉄で強い磁石ができないことに疑問を感じていました。鉄と鉄の原子間距離が近すぎることが希土類鉄磁石の開発が難しい理由であることを知り、これをきっかけに「原子半径の小さい物質を添加することで、その小さな物質が鉄と鉄の間の隙間に入って原子間距離を広げられる」との仮説を立てました。そして、種々の合金をアーク溶解炉に入れて溶かし、様々な組成の合金を作製。この時、鉄と希土類金属から成る合金に添加する元素として、原子半径の小さい炭素やボロンを選び、サマリウムやネオジムをはじめとする様々な希土類金属を試すなか、1978年中にはネオジム・鉄・ボロンの組み合わせが高い磁力を持つことを見出しました。
佐川博士は化合物組成の詳細な検討だけでなく、製造条件についても合金粉末の粒径や熱処理条件を変化させて磁石を作製。その結果、化合物の粉末を型の中で加圧成形した後、強度を高めるために熱処理を加えて粉体粒子間を結合させ、ネオジム磁石を製造する方法(焼結法)を構築しました。
焼結法によって作製されたネオジム焼結磁石は320kJ/m3 という大きな最大エネルギー積*1 が得られました(サマリウム・コバルト系永久磁石の当時の最高記録は240kJ/m3)。1982年8月に特許を出願してからわずか3年で量産開始に至り、自動車や家電製品を皮切りに、現在ではEVや風力発電のモーター等、世界中で幅広く活用される永久磁石となりました。
授賞理由について公益財団法人 本田財団は、佐川眞人博士とジョン・J・クロート博士の発明が、科学技術と人間性の調和および、人間環境と自然環境両方を大切にする技術「エコテクノロジー*2」の重要性を長年標榜し主張してきた本田財団の設立基本方針に一致し、本田賞にふさわしい成果であると認め、同賞を両博士へ贈呈するに至ったと発表しています。
(*1)最大エネルギー積
磁石材料から取り出せるエネルギーの最大値
(*2)エコテクノロジー
文明全体をも含む自然界をイメージしたEcology(生態学)とTechnology(科学技術)を組み合わせた造語。人と技術の共存を意味し、人類社会に求められる新たな技術概念として1979年に本田財団が提唱
公益財団法人 本田財団 プレスリリース