未来を創る高校生の挑戦を支援

東北大学と仙台一高の教育連携で実現した自然由来100%リップクリーム

2025/08/28

東北大学大学院工学研究科の北川尚美教授らの研究グループと宮城県仙台第一高等学校(以下、仙台一高)のスーパーサイエンスハイスクール(SSH)(注1)探究講座の生徒たちは、ファイトケミカルプロダクツ株式会社の協力を得て、教育プロジェクトとして廃棄米ぬかから抽出した成分を活用した100%自然由来のリップクリーム開発に取り組みました。

教育現場から始まる環境問題への取り組み

私たちの日常生活で使う多くの製品には、利便性を高めるために石油などの化石資源由来の成分が添加されています。例えば、リップクリームであれば、基本的な機能は保湿ですが、他に折れにくくする、車の中に置き忘れても、数年経過しても変性しない、などの機能が付与されています。しかし、持続可能な社会の実現には、化石資源由来の成分を可能な限り使わずに、自然由来成分を活かしたものづくりが重要となります。

東北大学の北川教授は、2023年7月に創設された持続可能な社会の実現を目指す共創推進プロジェクト「SOKAP-Connect(注2)」の第一回採択課題「総合知を活かした超学際研究で目指す持続可能なものづくりの実現」の一環として、高校生が自然由来100%のリップクリームを開発する取り組みを支援しています。SOKAP-Connectは、異分野の研究者、海外研究者、若手研究者や学生、民間企業の研究者など多様なステークホルダーが協力し、社会課題の解決に貢献する研究活動を推進するプロジェクトです。

探究学習を通じた課題解決能力の育成

本取り組みは、2024年4月より仙台一高のSSH探究講座の1テーマ「バイオマスの特性を活かしたものづくりと事業化検討」として始まりました。講座では、持続可能なものづくりの重要性、資源の有効活用技術、アントレプレナー教育、科学的な製品開発手法など、多様な専門家による指導が行われました。生徒たちは、多様な知識を吸収しつつ、リップクリームに求められる機能に関するアンケート調査を実施、それを踏まえて、廃棄される米ぬかの有効成分を活用したレシピの探索や官能評価を進めてきました。

参加した高校生たちは、2024年度日本政策金融公庫高校生ビジネスプラン・グランプリに「コメリップ~唇と環境をうるおす~」というプランで応募し、ベスト100に選出されました。そして、2025年2月末、コメ油とコメパラフィンなど100%自然由来の素材だけで、リップクリームに求められる機能を付与することに成功しました。

実践的な学びから製品化へのプロセス

開発成功後、生徒たちは製品化に向けた様々な工程にも挑戦しました。化粧品OEM企業に依頼して、テストサンプル製作に必要な安全性や安定性の試験を実施、広報企業の支援の下で製品名やパッケージデザイン、説明書やアンケートの作成に取り組みました。

こうした実践的な学びを経て、数千本の試作品が製造され、テストサンプルとして一般の方々に提供できる段階に至りました。教室での学習から実際に手に取れる製品にまで発展させたことは、探究学習の大きな成果です。

テストサンプル

教育から生まれる持続可能な社会への視点

このプロジェクトを通じて生徒たちは、科学的知識だけでなく、環境問題への理解、チームワーク、課題解決能力など多くを学びました。開発されたリップクリームは、石油由来成分で機能付与した通常のものと比べると、不便さを感じる部分があるかもしれません。それでも、このプロジェクトを通じて、「便利さ」と「環境負荷」のバランスについて考え、持続可能な社会やものづくりの実現に向けて、日常生活における製品選択のあり方を自ら探究する貴重な経験となりました。

テストサンプル配布のお知らせ

生徒たちが開発したリップクリームのテストサンプルは、8月30日(土)・31日(日)に開催される仙台一高の文化祭「一高祭」にて先着1,000名様に配布されます。

このリップクリームに触れて頂くことで、持続可能な社会・ものづくりの実現に向けて、日常生活における製品選択のあり方を共に考えるきっかけを提供したいと考えます。また、皆様からのフィードバックは、生徒たちの学びをさらに深め、今後の探究活動に活かされます。

  • 日時: 8月30日(土)11時~15時、31日(日)9時~14時
  • 場所: 宮城県仙台第一高等学校 物理講義室(一高祭会場内)
  • 対象: 先着1,000名様(引換券配布)

用語説明

(注1)スーパーサイエンスハイスクール(SSH)

文部科学省が科学技術人材育成のために先進的な理数教育を実施する高等学校を支援する事業です。指定校では、理数系教育に重点を置いたカリキュラムの開発や、大学・研究機関等との連携による探究的な学習活動を推進しています。

(注2)SOKAP-Connect

Sustainability Open Knowledge-Action Program by Connecting Multistakeholder の略称。2023年7月に東北大学が創設した、持続可能な社会の実現を目指す共創推進プロジェクトです。異分野の研究者や多様なステークホルダーが協力して社会課題の解決に取り組んでいます。
東北大学知識行動オープン・プラットフォーム「SOKAP」が始動!

お問合せ先

< 取り組みに関すること >
東北大学大学院工学研究科化学工学専攻 教授 北川 尚美
TEL:022-795-7255
E-mail:naomi.kitakawa.d3@tohoku.ac.jp
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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