再生プラスチックの循環利用を支える品質評価基盤を整備
- 再生材データバンク ガイドライン第三版を公開 -
2026/02/06
研究者ウェブサイト
発表のポイント
- 再生プラスチックの循環性向上を目指すSIP第3期課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」において、東北大学は再生材の品質を分析し、客観的に評価・共有するための再生材データバンクの構築を進めています。
- 再生材データの取得・登録に関する共通ルールとして、「再生材データバンク 実験・解析ガイドライン」第三版を新たに公開しました。
- ガイドライン第三版では内容を拡充し、データの比較性・信頼性を高めることで、今後のデータの利活用や社会実装につなげます。
概要
再生プラスチックの循環利用を社会に定着させるためには、材料の品質を客観的に評価し、その結果を分野や組織を超えて共有できる基盤の整備が不可欠です。一方で、再生材は原料や履歴の違いによる品質のばらつきが大きく、利用者が性能や用途適性を判断しにくいという課題を抱えています。
内閣府主導の国家プロジェクト「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」第3期課題「サーキュラーエコノミーシステムの構築」において、東北大学大学院工学研究科の白須圭一准教授が研究開発責任者を務めるプロジェクト「C1-02再生プラスチックの循環性向上のための品質分析データバンク構築」では、再生プラスチックの循環性向上に向けた研究開発が進められています。本プロジェクトでは、再生材の品質に関する物性・構造データを体系的に蓄積・活用する品質分析データバンクとして「再生材データバンク」の構築に取り組んでいます。このたび、データバンクの運用を支える共通ルールとして、再生材データバンクに登録されるサンプル作製方法および物性・構造データを取得するための「再生材データバンク 実験・解析ガイドライン」第三版を公開しました。
ガイドライン第三版では、これまでの知見を踏まえて内容を拡充するとともに、射出成形サンプルの作製方法を新たに追加しました。これにより、データの比較性・信頼性を一層高め、今後のデータ利活用や社会実装を見据えた品質評価基盤が整いつつあります。
研究の背景
資源循環型社会の実現やプラスチックごみ問題への対応が求められる中、プラスチックの再生利用をどのように社会に定着させるかが重要な課題となっています。再生プラスチックの利用拡大にあたっては、品質のばらつきや情報不足に対する懸念が大きく、再生材の品質評価においては単一の指標や経験則に頼らざるを得ない場面も少なくありません。このような状況を踏まえ、客観的かつ体系的な評価手法の確立と、データを分野横断的に共有・活用する仕組みの構築が求められてきました。
本SIPプロジェクトでは、こうした課題に対応するため、再生材の物性・構造・品質に関するデータを共通の枠組みで整理・蓄積し、分野横断的に活用できる仕組みの構築を進めています。再生材データバンクは、その中核を担う基盤として位置づけられています。
今回の取り組み
本プロジェクトでは、再生材データバンクの構築と、それを支えるガイドラインの整備を一体的に進めてきました。再生材データバンクは、再生プラスチックの品質に関する情報を横断的に扱う共通基盤であり、再生材サンプルの原料・履歴情報、物性データ、構造・分析データなどを体系的に蓄積することを想定しています。現在は、再生ポリプロピレン(PP)を対象として、フィルムおよび射出成形サンプルを作製し、密度、引張弾性率(注1)、シャルピー衝撃強度(注2)、異物含有率(注3)など、31項目におよぶ物性・構造データを取得しています。これにより、再生材の特性を多面的に捉えるためのデータ基盤を整備しました。取得した多次元データについては、自己組織化マップ(SOM)(注4)を用いた解析を行い、物性や構造の相関関係を可視化しています。その結果に基づき、再生PPをA1~A5、B1~B5のグレード(注5)に分類するグレーディング体系を構築しました。この体系により、再生材の品質や用途適性を客観的に位置づけることが可能となり、利用者が材料選択を行う際の判断を支援します。
また、再生材データバンクの利活用を進めるため、分析サンプルの作製方法およびデータの取得方法を定めたガイドラインを整備してきました。今回公開したガイドライン第三版では、第一版・第二版を踏まえつつ内容を拡充し、サンプル作製方法や物性・構造データ取得に関する具体的な指針を充実させています。特に射出成形サンプルの作製方法を追加したことで、評価対象の幅が広がり、異なる機関で取得されたデータであっても相互に比較・活用しやすい環境が整いました。ガイドラインは、再生材データバンクに登録されるデータの取得方法や記載内容を定めることで、データの比較性・信頼性を支える役割を担っています。第三版の公開により、再生材データバンクを本格的に運用・活用するための基盤が整いつつあります。
今後の展開
今後は、再生材データバンクへの登録データのさらなる拡充を進めるとともに、蓄積されたデータの利活用方法について検討を深めていきます。将来的には、研究開発分野にとどまらず、産業界など幅広い分野において、再生プラスチックの適切な選択や利用を支える基盤として活用されることを目指しています。

図1. 再生材データバンクを利用した再生材の品質分析・グレーディングフロー。再生材提供企業から提供された再生材ペレットを受領し、品質分析およびグレーディングを実施する。評価データおよびグレーディングの結果を評価結果報告書としてまとめ、再生材提供企業に返却する。
謝辞
本プロジェクトは、内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「サーキュラーエコノミーシステムの構築」(研究推進法人:独立行政法人環境再生保全機構)(JPJ012290)により実施されているものです。
用語説明
(注1)引張弾性率
フィルム状に成形した試験片を用いた引張試験により得られる、材料の弾性の大きさを示す指標。
(注2)シャルピー衝撃強度
射出成形により作製した試験片を用いて評価した、材料の耐衝撃性を示す指標。
(注3)異物含有率
熱重量-示差熱分析(TG-DTA)により評価した指標で、測定前の試料重量に対する、加熱後に残存した残渣重量の割合として算出される。
(注4)自己組織化マップ(SOM)
多数の物性・構造データなどの多次元情報を二次元空間に圧縮し、データ間の類似性や関係性を位置関係として可視化するデータ解析手法。
(注5)A1~A5、B1~B5のグレード
再生材データバンクにおいて、SOM解析の結果に基づき設定した再生PPの品質区分。物性・構造特性の類似性に応じて再生PPを分類しており、比較的高い性能・用途適性が期待されるものをA、用途を限定した利用やカスケード利用を想定したものをBとしている。さらに1~5のサブグレードを設け、SOM上で近接する位置に配置された再生材群について、物性・構造特性の違いに基づいて区別している。
お問合せ先
東北大学大学院工学研究科ファインメカニクス専攻 准教授 白須 圭一
TEL:022-795-4026
Email:keiichi.shirasu.c1@tohoku.ac.jp