磁気ギアによる革新的なアンテナ駆動技術を実現
- 次世代無線システム用の基盤技術として期待 -
2026/02/16
研究室ウェブサイト
発表のポイント
概要
Beyond 5Gなどの次世代無線通信では、高周波帯の電磁波を用いた高速・大容量通信の実現に向けて、電磁波を放射する方向(ビーム方向)を柔軟に制御できるアンテナ技術が求められています。
東北大学大学院工学研究科の今野佳祐准教授らは、英国サリー大学のGabriele Gradoni教授らとの共同研究により、モーター分野で用いられている磁気ギアを応用し、非接触で駆動可能なパターンリコンフィギャラブル八木・宇田アンテナを開発しました。本アンテナは360°全周囲に渡って、ほぼ同一強度でビーム走査が可能です。簡素な構造により、従来の可変アンテナで課題となっていた構造の複雑化や電磁波の減衰を抑制でき、また、安価な材料で構成できることから、次世代無線技術の実用化を見据えた基盤技術としての展開が期待されます。
本成果は、2026年2月12日(現地時間)付けで、科学誌IEEE Transactions on Antennas and Propagationにオンライン掲載されました。
研究の背景
Beyond 5Gなどの次世代無線通信では、高速・大容量通信を実現するために高周波帯の電磁波の利用が進められています。しかし、高周波帯の電磁波は障害物の背面に回り込みにくいという特性があり、移動するユーザが持つ端末に対して、電磁波を的確に届けることが大きな課題となっています。
こうした課題を解決する手段として、電磁波を放射する方向(ビーム方向)を自在に制御できるパターンリコンフィギャラブルアンテナが注目されています。このアンテナを用いることで、移動する端末に対しても柔軟に電磁波を向けることが可能となるため、次世代無線通信システムの実現に向けて、近年、研究が盛んに行われています。
一方で、これまでに提案されてきた多くのパターンリコンフィギャラブルアンテナでは、ダイオードやモーターなどの可変機構をアンテナに機械的に接続する必要がありました。この方法では、可変機構をアンテナへ機械的に接続させるための構造や加工が複雑になるだけでなく、可変機構の部品や配線が電磁波を吸収・散乱させることで、高周波特性が劣化しやすくなるという課題があり、実用化に向けた大きな障壁となっていました(図1)。
今回の取り組み
東北大学大学院工学研究科通信工学専攻の今野佳祐准教授らは、英国サリー大学のGabriele Gradoni教授(ケンブリッジ大学 客員フェロー)らとの共同研究により、モーター分野で用いられている磁気ギアに着目し、これを応用することで、非接触駆動型のパターンリコンフィギャラブル八木・宇田アンテナを実現しました。本研究で開発したアンテナは、ほぼ同一の強度を保ったまま、ビームを360°全周囲に走査することができ、パターンリコンフィギャラブルアンテナとして理想的な性能を示します。
具体的には、今野准教授らは、八木・宇田アンテナの反射器および導波器を磁気ギアによって非接触で回転させる新たな駆動システムを提案し、3Dプリンタを用いてそれを実装しました。この非接触駆動により、アンテナ本体と駆動システムを機械的に分離することが可能となり、従来課題であった構造・加工の複雑さや、可変機構に起因する高周波特性の劣化を抑えることができます。さらに、本駆動システムは摩擦や摩耗が生じないためメンテナンスフリーであり、モーターや磁石、樹脂といった安価な材料のみで構成できます。このことから、従来用いられてきた高価なビーム走査用デバイスに代わる技術として期待されます。
今後の展開
本研究成果の実用化に向けて、現在、特許化を進めています。今後は、磁気ギアを用いたアンテナの非接触駆動システムについて、小型化・高周波化・高機能化を実現すべく、設計指針の高度化や動作条件の検証を進める予定です。これにより、次世代無線通信システムへの応用を視野に入れた技術基盤の確立を目指し、引き続き共同研究を進めていきます。
謝辞
本研究成果の一部はJSPS科研費JP22K04061の助成を受けて実施されました。
用語説明
(注1)磁気ギア
磁石の磁力(吸引力・反発力)を利用して、機械的に非接触で動力を伝達する歯車のこと。
(注2)パターンリコンフィギャラブルアンテナ
電磁波を送受信するアンテナの一種で、電磁波を放射する方向(ビーム方向)を切り替えられるもの。
(注3)八木・宇田アンテナ
東北大学の八木秀次名誉教授、宇田新太郎名誉教授によって1920年代中頃に発明されたアンテナで、テレビ放送受信用アンテナとして広く用いられている。
論文情報
著者:Keisuke Konno, Satoshi Yoshida, Sho Muroga, Nozomi Haga, Jerdvisanop Chakarothai, Qiang Chen, Gabriele Gradoni
*責任著者:東北大学大学院工学研究科通信工学専攻 准教授 今野 佳祐
掲載誌:IEEE Transactions on Antennas and Propagation
DOI:10.1109/TAP.2026.3662161

