ステンレス鋼の摩擦攪拌接合が可能に - 新しいタングステン系接合ツールを開発 -

2015/04/17

工学研究科材料システム工学専攻の佐藤裕准教授、粉川博之教授らは、株式会社アライドマテリアル、日本アイ・ティ・エフ株式会社との共同研究により、オーステナイト系ステンレス鋼の摩擦攪拌接合(Friction Stir Welding、以下FSW)を可能にする高寿命なタングステン系接合ツールの開発に成功しました。開発したツールは、オーステナイト系ステンレス鋼の他、炭素鋼、高張力鋼、低合金鋼、そして銅合金などのFSWにも有効で、特に電力プラントや化学プラントなどの産業分野への展開が期待されます。

【背景】

FSWは回転するツールを接合する材料の間に押し込み、接合線に沿ってツールを回転させることで接合する方法です。接合する材料と回転するツールの間で発生する摩擦熱で接合材料を軟化させ、ツールの回転により材料を混ぜ合わせることで接合します。この接合方法は、従来のアーク溶接などとは異なり、材料を溶かすことなく接合できるため、接合後の変形も小さく、接合欠陥の発生も少ないため、製品の高品質化と低コスト化を実現でき、さらには従来の接合方法と比較して省エネルギーで接合できるという特長を有しています。現在、融点の低いアルミニウム合金などを接合技術として広く普及し、鉄道車両や自動車などの製造において実用化されています。

しかし、一般に金属材料は高温になると軟化する性質があります。融点がより高い鉄鋼のFSWでは、ツールの先端が摩擦熱でさらに高温になり、従来の接合ツールでは激しく損傷してしまうため難しいとされてきました。特に高温でも変形抵抗の高いオーステナイト系ステンレス鋼のFSWに対しては、耐久性に乏しいことや価格が高いという課題があり、耐久性が高く安価なツールの出現が望まれていました。

【成果の内容】

このような背景から、東北大学は株式会社アライドマテリアルおよび日本アイ・ティ・エフ株式会社と共同研究を行い、高価な元素を使用しない低コストのタングステン合金に耐摩耗性に優れるセラミック被膜をコーティングした新しいタングステン系合金ツールを開発しました。タングステンにセラミック粒子を分散させ、その種類や添加量を最適化して優れた高温強度、高い靭性および高い耐熱衝撃性を実現するとともに、セラミック被膜の膜質と密着力を制御して高い耐摩耗性を実現しました。鉄鋼の中でも最もFSWが困難であったオーステナイト系ステンレス鋼において、接合深さ4mmで10m以上の線接合ができることを確認しています。価格では現在最有力とされるツールの1/10を目指しながら、従来の低価格ツール材料に比べて高い耐久性と高寿命化を達成しています。工業展開が難しいとされてきたステンレス鋼のFSWを可能にする安価で高寿命な接合ツールとして、電力プラントや化学プラントをはじめ、鉄道車両、真空容器を使用する半導体製造装置などの産業分野の需要が期待できます。なお、本成果は4月23日(木)、学術総合センター(東京千代田区)にて開催される溶接学会春季全国大会で発表予定です。


開発した接合ツールを用いたオーステナイト系ステンレス鋼の接合の例
【お問い合わせ】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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