膜展開式軌道離脱装置が第3回宇宙開発利用大賞「宇宙航空研究開発機構理事長賞」を受賞

2018/03/20

株式会社中島田鉄工所と国立大学法人東北大学は2010年から共同で膜展開式軌道離脱装置「DOM」の研究開発を行って参りました。「DOM」は、軌道上で膜を展開することで宇宙空間に存在する僅かな大気抵抗を利用し衛星を減速させ、地球周回軌道から離脱させることを目的とする装置です。その装置の宇宙実証を目的とした超小型人工衛星「FREEDOM(フリーダム)」は、平成26年9月26日に、国立研究開発法人 宇宙航空研究開発機構(JAXA)の公募した『平成28年度上期打上げ機会「きぼう」放出超小型衛星』に選定されました。「FREEDOM」は、平成29年1月16日に国際宇宙ステーション日本実験棟「きぼう」より、JAXAの小型衛星放出機構(J-SSOD)によって放出された後、平成29年2月6日には軌道高度が約250km以下に降下すると共に、公的機関による軌道追尾が終了したことを確認いたしました。「FREEDOM」はその後約1日で大気圏に再突入したものと予測されます。この観測結果は想定された軌道予測とよく一致するものでありました。今後、超小型衛星の軌道離脱手段として標準利用されることが期待されており、近年のスペースデブリ問題の解決と宇宙資源の安全かつ有効利用の促進に貢献していきます。

これを受け、平成30年3月20日、膜展開式軌道離脱装置の開発および宇宙実証事例が、内閣府宇宙戦略推進事務局が主催する第3回宇宙開発利用大賞「宇宙航空研究開発機構理事長賞」を受賞致しましたのでご報告させていただきます。この度は本装置が宇宙空間の安定的利用と超小型衛星の発展に必要な技術であること、及び技術力を誇る国内の地場企業が航空宇宙分野への参入を切り開いた有用な先進事例であることが高く評価されました。ご協力いただきました関係者の皆様に深く感謝致しますとともに、今後とも皆様のご支援を賜りますよう、何卒宜しくお願い申し上げます。




第3回宇宙開発利用大賞表彰式の様子と賞状
【「FREEDOM」の概要】

「FREEDOM」はCubeSatと呼ばれる規格に則っており、一辺の長さが約10cmの立方体で、質量が約1.3kgの超小型人工衛星です。「FREEDOM」は「きぼう」から放出後に軌道上において1.5m四方の薄膜を展開し、宇宙空間にわずかに存在する空気抵抗を利用して軌道を離脱、地球大気圏への早期再突入の実証試験を試みました。「FREEDOM」に搭載される膜展開式軌道離脱装置は、近年世界中で盛んに開発が進められている超小型人工衛星が運用終了後に軌道上でスペースデブリ(宇宙ゴミ)化することを防止するために、国連のスペースデブリ低減ガイドラインを基に株式会社中島田鉄工所と国立大学法人東北大学が中心となって共同開発した装置です。

【今後の実証予定】

2.5m × 2.5mの膜を搭載したDOM2500が超小型国際理学観測衛星「RISESAT(ライズサット)」に搭載されます。「RISESAT」は東北大学が主体となって研究開発を行っている質量約60kgの超小型人工衛星です。「RISESAT」はJAXA「革新的衛星技術実証プログラム」に採択されており、イプシロンロケットを用いて打ち上げられる予定です。「RISESAT」は軌道上運用終了時にDOM2500を駆動することで、膜展開式軌道離脱装置による50kg級人工衛星の軌道離脱を初めて宇宙実証する計画です。

また、株式会社中島田鉄工所と国立大学法人東北大学は現在DOM2500を用いた切離し式の膜展開式軌道降下装置の研究開発に取り組んでいます。

【今後期待される成果】

近年世界中で超小型人工衛星の開発が盛んに行われており、超小型人工衛星の特徴を活かした分野で実利用化が進行しています。今後地球周回軌道へ投入される超小型人工衛星数は増加の一途を辿ることが予測されています。そのため、将来の宇宙資源の安全且つ有効な利用を保証するために、運用を終了した人工衛星がスペースデブリ化することを積極的に阻止し速やかに軌道から除去する技術が求められています。「FREEDOM」衛星が軌道上実証を行った膜展開式軌道離脱装置は小型軽量化と同時に衛星システムとの機械的・電気的インターフェースの簡易化を追求しており、将来的には日本国内外の超小型人工衛星に幅広く利用されることを期待しています。

【お問い合わせ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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