次世代車両向け駆動モータ用回転角度センサの開発
- 電磁鋼板の積層をなくし軽量化した回転角度センサにてモータを制御 -
2018/12/21
【発表のポイント】
- 車両の駆動用モータの回転角度を制御する際は、一般的に電磁鋼板※1を積層させた部品にて構成される回転角センサを用いるが、積層された電磁鋼板は重量が大きく、小型・軽量化が課題であった。
- 今回、構成部品を、電磁鋼板の積層から、一枚のみに変更して磁束の経路を成立させることで、材料の使用量の低減と、重量、コストを削減させることに成功した。
- 本研究成果は、今後、車両の軽量化につながることが期待される。
【概要】
東北大学大学院工学研究科の中村健二教授と株式会社松尾製作所らの研究グループは、次世代車両向け駆動モータ用回転角度センサの開発を行いました。電磁鋼板一枚を曲げて薄肉形状にし、磁場の経路を成立させることで、材料の使用量の低減、重量、コストを削減させることに成功しました。本研究成果を車両に適用することで、車両の軽量化、及びそれに伴うエネルギー効率の向上に貢献することが期待されます。
【詳細な説明】
近年、燃料電池車や電気自動車など、排出ガスを一切出さないZEV(Zero Emission Vehicle)の開発が進む中、その構成部品である駆動モータユニットや電池の軽量化が、車両の高エネルギー効率を実現するための課題となっていました。本研究では、駆動モータユニットにとって欠かすことのできないモータ用回転角度センサの構造に着目し、従来、電磁鋼板を積層させて磁場の経路としていた部分に対し、磁場の経路を電磁界解析で可視化することで、電磁鋼板一枚を曲げて円環状に配置することにより磁場の経路が成立できることを見出しました。
これにより、回転角度センサにおける電磁鋼板の使用量を従来から約76%低減させることに成功しました。また、開発した回転角度センサを実際の電気自動車の駆動モータユニットに搭載し、ベンチ評価を行った結果、モータのトルクと回転数において、従来品と同等の出力を得られることが確認されました。また、現在は無方向性電磁鋼板を使用し、センサの特性を満足させているが、本技術は、電磁鋼板一枚で磁路を成立させているため、圧延方向の透磁率が大きい方向性電磁鋼板を用いることで、更なる出力アップも期待されます。
本研究によって開発した回転角度センサは、ZEVの軽量化、及びそれに伴うエネルギー効率の向上に貢献し、さらに、小型であることにより、自動車に留まらず医療機器や産業用ロボットなどへの展開も期待されます。
【用語説明】
※1 電磁鋼板
鉄を主成分とし、ケイ素などを添加した磁性材料。電流の向きを反転すると容易に磁化も反転する軟質磁性材料であり、変圧器やモータなどの電気機器の鉄心として多用される。