新たなコンセプトの固体物理蓄電体の可能性を大学1年生らと検証

- アモルファス金属と二酸化炭素ナノバブルを利用して創成した物理高性能電子吸着体の発見:雷による蓄電を目指して -

2019/09/20

【発表のポイント】
  • 工学部1年生対象の創造工学研修(注1)で行った研修の中で、次世代電気二重層キャパシタ(注2)である固体物理蓄電体(注3)の電子吸着部分の形状を制御することに世界で初めて成功
  • 電子吸着部分の形状を制御することで電子吸着量が飛躍的に向上することが明らかとなり、ボトルネックの蓄電大容量化の見通しがついた
【概要】

東北大学未来科学技術共同研究センターの福原幹夫リサーチフェロー、大学院工学研究科附属先端材料強度科学研究センターの橋田俊之教授と佐藤一永准教授らの研究グループは、2018年度東北大学工学部創造工学研修(工学部1年生対象)の1テーマである「全固体電池を設計し、創成する」において行った研修実験の中で、アモルファス金属(アルミニウム)を二酸化炭素ナノバブル水中で温度を制御しながら酸化することで、表面に形状を制御したナノサイズの凹凸面を作り出すことに世界で初めて成功しました。この凹凸面に電子がファンデルワールス力で吸着することで蓄電が発現します。原理は現在の電気二重層キャパシタと同様であるものの、構成材料に液体を全く用いないため、劣化や発火等の心配が全くない、高電圧耐性があるのが特徴です。特殊ポリマーでも同一現象が見つけられており「固体物理蓄電体」として世界的に認められております。本研究成果により、電子吸着量が飛躍的に向上することが明らかとなり、蓄電大容量化が見えてきました。今後は、MEMS(微小電気機械システム)加工技術を導入し、集積化および積層化を行い、パワー密度とエネルギー密度の向上を図ります。

本研究成果は、2019年9月5日に、アメリカ物理学会誌AIP Advancesに掲載されました。
AIP Advances 9, 095202 (2019); doi: 10.1063/1.5102082


図1 二酸化炭素ナノバブル水中で酸化したアモルファス金属(アルミニウム)吸着体表面のナノ凹凸 (a)水温5℃、(b)水温25℃

図2 本研究で提案する固体物理蓄電体の電子吸着モデル

図3 実験風景の一コマ
【用語解説】

注1 創造工学研修
https://www.eng.tohoku.ac.jp/edu/ip/ip-2018.html
今後の日本の科学技術の発展を支えていくために、大学の理工系分野を中心に、主体性や積極性に富む創造性豊かな人材の育成が求められています。東北大学工学部では平成8年度から学部1年次学生を対象に創造性を養うことを目的とした少人数教育の授業科目として、「創造工学研修」を開設しており、これまで延べ13,792名(平成30年度539名:113講座)の学生が履修をしてきました。
本研修は学生が自らの意志と発想により、与えられた課題あるいは自ら設定した課題について着想力と想像力を駆使して問題解決の道筋を模索し、実現するための方法・手段を学ぶことに、特にその『過程』を重視しています。 また、当研修は学生が、様々な分野において独創的な研究で世界をリードしている教員の助言・指導のもとに、「研究」の香りに触れながら、グループワークを通して「コミュニケーションとチームワーク」を体験し、「発見」に驚き・楽しみ、「創造」の喜びを味わうことができる構成となっております。また、研修テーマが学生の所属学科によらずに選択ができるようになっており、異分野での学びを得る機会にもなります。

注2 電気二重層キャパシタ
コンデンサと二次電池の中間的な性質を持った蓄電体です。二次電池は化学反応によって電荷を蓄えるのに対して、電解液に電極の表面にイオンを直接吸着させ、電気二重層を形成することで電荷を蓄えます。このため、二次電池よりも早い時間で充電や放電を行うことができます。

注3 固体物理蓄電体
原理は電気二重層キャパシタと同じです。ただし、電解液を用いず全て固体で構成されるため、劣化や発火等の心配がなく、高電圧耐性があるのが特徴です。また、構成材料にレアメタルも使用しないため元素戦略的に有効です。

【お問合せ先】
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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