産官学協働で複合プラスチックのケミカルリサイクル技術の開発と実用化を加速

- 「複合プラスチックからのモノマー回収液相プロセスの開発」がNEDOの委託事業に採択 -

2022/02/28

【本学研究者情報】
〇大学院工学研究科超臨界溶媒工学研究センター 教授 渡邉 賢
研究室ウェブサイト

概要

東北大学大学院工学研究科附属超臨界溶媒工学研究センターでは、「多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル 技術の開発」*1に取り組んでまいりました。

この取り組みでは、マテリアルリサイクルに資する技術を実証することができました。この技術のもう一本の柱であるケミカルリサイクルの可能性を追求し技術の完成度を高めるべく、この度、NEDO委託事業に取り組ませていただくことになりました。東北大発のSmart R*2技術として、社会課題の解決に貢献することを目指します。

*1 「多層プラスチックフィルムの液相ハイブリッドリサイクル 技術の開発」がNEDOの先導研究委託事業として採択(2020年9月 9日 東北大学プレスリリース)

*2 東北大学は2019年3月に東北大学「プラスチック・スマート」推進宣言を策定・公表し、全国の大学に先駆けて、国が進める「プラスチック・スマート」フォーラムに参画しております。これにより学内におけるワンウェイのプラスチック使用の削減を図ると共に、プラスチックの分別回収の徹底を進めてきました。また本推進宣言に基づき、社会が抱えるプラスチック問題解決に貢献するため、東北大学発のプラスチック・スマート研究の融合知の創出を目的として、超域学際融合拠点(TU-TRIPS:Tohoku University Transdisciplinary Research Initiative for Plastic Smart)を2019年10月に設置しております。拠点で取り組む「Smart U:賢く使う・減らす(Use)」、「Smart S:代替する(Substitute)」、「Smart R:適切な回収・資源化(Recovery and Recycle)」、「Smart A:知の還元・実行(Action)」の4領域のうち、本提案は東北大発のSmart R技術の一つとしてプラスチック問題解決にむけ貢献します。

詳細(共同研究機関一同からの発表内容)

国立大学法人東北大学、国立研究開発法人産業技術総合研究所、東ソー株式会社、凸版印刷株式会社、東西化学産業株式会社、恵和興業株式会社は、共同で複合プラスチックのケミカルリサイクル注1技術の実用化を目指した研究開発「複合プラスチックからのモノマー回収液相プロセスの開発」を2021年11月から開始しました。

本研究開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発/石油化学原料化プロセス開発」委託事業注2(事業期間:2020年度~2024年度)の追加公募で、採択され実施するものです。

医薬品や食品など一般に使用されているプラスチックの多くは、多層プラスチックフィルムに代表されるように、機能・性能を持たせるために、性質が異なる複数種のプラスチックを複合して使用されています。しかし、複数種が複合されたプラスチック(複合プラスチック)のリサイクルでは燃焼によるサーマルリサイクル注3に依存し、環境保全の観点からもマテリアルリサイクル注4やケミカルリサイクルの技術確立が期待されています。

このような課題に対し、本研究開発では、包装・容器等に利用されている複合プラスチックからモノマー注5を回収する液相プロセスを開発します。複合プラスチックは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリアミド(PA)等の加水分解性プラスチック注6と、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)等の非加水分解性プラスチック注7から構成されています。当該複合プラスチックを高温高圧水中で処理することで、加水分解性プラスチックは再び同種のプラスチックとなるモノマー類へ、非加水分解性プラスチックは石油化学の原料におのおの分解し、各モノマーを高選択・高収率・高純度で回収できます。連続の液相プロセスによるケミカルリサイクル技術を確立することで、複合プラスチックごみをそのまま処理できる可能性があることから、一般ごみのリサイクル率向上に大きく寄与し、環境保全に貢献します。

用語解説

注1ケミカルリサイクル

廃プラスチック類の廃棄物を化学的な処理により他の物質に変え、その物質を原料にして新たな製品を作るリサイクル方法

注2国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発/石油化学原料化プロセス開発」委託事業

https://www.nedo.go.jp/koubo/EV3_100239.html

注3サーマルリサイクル

廃棄物を単に焼却処理するのではなく、その焼却の際に発生する熱エネルギーを回収・利用するリサイクル方法

注4マテリアルリサイクル

廃プラスチック類の廃棄物を、破砕・溶融などの処理を行った後に再生利用するリサイクル方法

注5モノマー

ポリマー(プラスチック)を構成する最小の単位

注6加水分解性プラスチック

高温水や高温蒸気中で水の作用により物理特性や化学特性が変化するプラスチック

注7非加水分解性プラスチック

高温水や高温蒸気中であっても水の作用により物理特性や化学特性の変化がみられないプラスチック

お問合せ先

< 研究に関して >
東北大学大学院工学研究科 超臨界溶媒工学研究センター 教授 渡邉 賢
TEL:022-795-5868
E-mail:masaru.watanabe.e2@tohoku.ac.jp
< 報道に関して >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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