異種材料を中空のマイクロバンプでつなぐ新しい半導体実装技術を開発
- 低荷重・低温での高信頼性接合を実現 -
2025/08/28
発表のポイント
- マイクロバンプ(注1)は、半導体実装において不可欠な異種材料集積技術を支える要素の一つであり、近年注目される高度なチップ実装技術です。
- 従来は「詰まった形状」だったマイクロバンプの内部を空洞にし、低荷重でも塑性変形し(バンプ1つあたりの荷重4 mNと従来の約半分)、新たな金属面を形成するために低荷重・低温でも信頼性の高い金属結合が可能な中空のマイクロバンプを開発しました。
- 電子デバイス実装に広く用いられる金(Au)薄膜で中空マイクロバンプを作製し、大気中で150ºCでの接合に成功し、従来の300ºC程度より低温での高信頼性接合を実現しました。
概要
電子部品を基板に固定して回路を作る電子実装技術(注2)は、半導体を含む電子デバイス製造に欠かせない基盤技術です。近年、デバイスの多機能化・高機能化に伴い、異種材料をつなぐ接合技術の重要性がますます高まっています。
東北大学大学院工学研究科の日暮栄治教授らの研究グループは、産業技術総合研究所ハイブリッド機能集積研究部門異種デバイスパッケージング研究グループの倉島優一研究グループ長らと共同で、低荷重で塑性変形し低温でも強固に接合できるAu中空マイクロバンプを新たに開発しました。具体的には、表面活性化接合(注3)技術とテンプレートストッピング(注4)技術を組み合わせて中空ピラミッド構造のマイクロバンプを作製し、大気中150ºCでの低温接合を実現しました。
本研究は2025年8月22日付で学術誌Sensors and Actuators A: Physicalのオンライン版に掲載されました。
研究の背景
次世代の小型電子デバイスでは、高温の熱によるダメージや残留応力(注5)を避けるため、低温での接合技術が求められます。これまでにも、接合界面に応力を集中させるピラミッド型や円錐型のマイクロバンプが開発され、低温接合に利用されてきましたが、バンプ先端部への応力集中によりデバイスや基板を損傷させるという課題がありました。
今回の取り組み
日暮教授らの研究グループは、これまで表面活性化手法を用いるAuの大気中常温接合技術に取り組んできました。本研究では、表面活性化接合とテンプレートストリッピング技術を組み合わせ、中空構造のAuマイクロバンプを転写によって作製する新技術を開発しました(図1)。
有限要素法シミュレーション(注6)により、中空マイクロバンプは内部が詰まった従来型に比べ、接合時の応力集中を軽減できることが示されました(図2)。さらに、この中空マイクロバンプを用いてシリコン(Si)チップを大気中150ºCで接合した試料のせん断強度測定試験では、接合部よりもSiチップ自体が先に破壊されるほど強固に接合できることが確認されました。接合時の塑性変形により新たな金属面が形成され、密着することにより、接合相手が粗いAuめっき膜の場合でも低温で強固な接合を達成できることを実証しました(図3)。
今後の展開
本研究成果は、低荷重で塑性変形し、低温接合が可能な新規構造のマイクロバンプ接合技術を開発したものです。本技術を応用することで、従来のマイクロバンプ接合における課題であるデバイスや基板へのダメージを大幅に低減できることが期待されます。
謝辞
本研究は荏原 畠山記念文化財団、科学技術振興機構 次世代研究者挑戦的研究プログラム(JST SPRING)・グラント番号JPMJSP2114の支援を受け行われました。また、本研究成果に関する論文は、「東北大学2025年度オープンアクセス推進のためのAPC支援事業」の支援を受けました。
用語説明
(注1)マイクロバンプ
半導体デバイスと回路基板側の電極間を接続するために形成される微細な突起状の端子。直径が数マイクロ~数10マイクロメートルのバンプをマイクロバンプと呼んでいる。
(注2)電子実装技術
半導体や電子部品を基板に取り付け、電気的接続や機械的固定を行い、電子機器として動作可能な形態にする技術。特に、接合温度や素子への負荷を低減しつつ高い信頼性を確保するプロセスは、次世代の小型・高性能電子機器の実現において重要な役割を果たす。
(注3)表面活性化接合
アルゴンイオン等のイオン衝撃により接合面の吸着層や酸化膜を除去し、固体表面が本来持っている高い凝着エネルギーを利用して、固体同士を常温ないし低温で接合する技術。
(注4)テンプレートストリッピング
微細加工したテンプレート上に堆積させた金属膜をテンプレートから剥離することで、テンプレートと同等の微細構造を有する金属薄膜を得る手法。
(注5)残留応力
材料や構造物の内部に外部からの力が加わっていない状態でも残る応力。一例として、熱や機械的な加工によって材料が変形した後、完全に元の状態に戻らない場合に発生する。
(注6)有限要素法シミュレーション
複雑な構造物や物体を小さな有限個の要素に仮想的に分割して、応力・変形・熱伝導などを数値的にシミュレーションする手法であり、工学設計や製品開発に広く活用されている。
論文情報
著者: Shintaro Goto, Kai Takeuchi, Le Hac Huong Thu, Takashi Matsumae, Hideki Takagi, Yuichi Kurashima, and Eiji Higurashi*
*責任著者: 東北大学大学院工学研究科電子工学専攻 教授 日暮栄治
掲載誌: Sensors and Actuators A: Physical
DOI: 10.1016/j.sna.2025.116968