バイオレットライトを発するマイクロLEDを搭載したディスプレイシステムを開発

―屋内環境で不足する光をディスプレイで補う新たな発想―

2026/05/01

【工学研究科研究者情報】
大学院工学研究科技術社会システム専攻 教授 石鍋隆宏
研究室ウェブサイト

発表のポイント

  • 屋内環境では不足しているバイオレットライト(注1)を補うことを目指し、画面内に同光を発光可能なマイクロLED(注2)を搭載したディスプレイシステムを開発しました。
  • 表示画像に影響を与えることなく、ユーザーに対して制御されたバイオレットライト照射を実現しました。
  • 教育向けタブレットなどのデジタル機器において、光環境との調和を図る基盤技術として、次世代のディスプレイシステムへの応用が期待されます。

概要

屋外光と屋内環境では光の成分に違いがあり、こうした光環境の差が注目されています。東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻の石鍋隆宏教授、同大学未来科学技術共同研究センター(NICHe)の白井泰雪教授、および梶山康一シニアリサーチフェローらの研究グループは、株式会社坪田ラボ(以下、「坪田ラボ」)との共同研究により、バイオレットライトを発光可能なマイクロLEDを画面内に搭載した新たなディスプレイシステムを開発しました。

本ディスプレイシステムは、近年注目されている光環境と視覚の関係に着目し、屋外光に多く含まれる一方で屋内環境には少なく、従来のディスプレイでは発していないバイオレットライトを、表示品質を損なうことなく照射できるようにする技術です。本技術は、従来の表示性能に加え、現代の光環境のあり方を踏まえたディスプレイ設計に資する基盤技術として活用が期待されます。

本成果は2026年5月7日(現地時間)に、Society for Information Display International Symposium DISPLAY WEEKにて招待講演として発表される予定です。

研究の背景

近年、近視は世界的に増加傾向にあり、その背景として、屋外活動時間の減少やスマートフォン・タブレットなどの画面を見る時間の増加といった生活様式の変化が注目されています。特に、屋外活動時間の減少にともなう太陽光への曝露の低下は、小児の近視発症リスクとの関連が指摘されています。

屋外光にはバイオレットライト(波長360–400 nm)が含まれていますが、現代の屋内環境ではその曝露量が低いことが報告されています。このような光環境の違いが人の視覚や健康にどのような影響を与えるかについて、近年研究が進められています。

坪田ラボはこれまで、慶應義塾大学医学部眼科学教室とバイオレットライトを活用した小児における近視進行抑制デバイスについて、医療機器としての臨床試験を進めており、近視進行に対する有効性と安全性が示唆される結果が報告されています。

このような背景から、タブレットなどの情報端末の使用が日常的となっている現代において、ディスプレイを単なる表示装置としてだけでなく、屋内環境における光の不足を補う手段として活用することができないかという観点が重要となっています。

今回の取り組み

こうした背景のもと、本研究グループは、坪田ラボとの共同研究により、視聴体験に影響を与えることなくバイオレットライトを発光できるマイクロLEDをディスプレイ内に搭載し、通常使用中にバイオレットライトを照射可能な新しいディスプレイシステムを開発しました。今回使用したマイクロLEDは30マイクロメートル以下と極めて小さく、肉眼では認識できません。そのため、表示画像に影響を与えることなく、バイオレットライトを照射することが可能となりました。

さらに、使用者とディスプレイの距離をリアルタイムで計測し、バイオレットライトの照度を調整する技術も開発しました。これにより、使用環境に応じた照射制御が可能となります。

これまでの臨床研究の知見を踏まえ、子どもを含むユーザーが日常的に利用する情報機器への応用が期待されます。

今後の展開

本成果の実用化に向けて、現在、特許化を進めています。今後は、アプリケーションに応じたマイクロLED素子の設計指針の高度化や、量産に向けた製造方法の検証を進める予定です。屋外光には含まれるものの、現代の屋内環境では不足しているバイオレットライトを照射可能な次世代のディスプレイシステムの実現を目指し、引き続き共同研究を進めていきます。


図1. 開発技術を搭載したディスプレイシステム
タブレット端末の画面上に、本技術により作製したマイクロLEDを搭載した透明ディスプレイを重ね、端部の電極から通電し、LEDを点灯させた様子。見え方に影響を与えることなく、バイオレットライトが照射されている。

用語説明

(注1)バイオレットライト

波長360〜400ナノ(ナノは10億分の1)メートルの紫色光。自然光には含まれる一方で、現代の屋内環境では少ない波長域の光。臨床研究では、小児の近視進行との関連が示唆される結果が報告されており、坪田ラボが医療機器として臨床試験を進めている。

(注2)マイクロLED

100マイクロメートル未満の極小な発光ダイオード。人の目で認識できないサイズであるため、表示や照明に影響を与えにくい形で光を利用することが可能である。

論文情報

タイトル:Beyond Image Quality: Violet-Light–Enabled Displays for Visual Health
著者:Kazuo Tsubota, Takahiro Ishinabe, Yasuyuki Shirai, Koichi Kajiyama, Keisuke Mitsuoka
*責任著者:東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻 教授 石鍋隆宏
学会:Society for Information Display International Symposium DISPLAY WEEK
開催場所:米国 ロサンゼルスコンベンションセンター

お問合せ先

< 研究に関すること >
東北大学大学院工学研究科技術社会システム専攻 教授 石鍋 隆宏
TEL:022-795-7238
Email:takahiro.ishinabe.c4@tohoku.ac.jp
< 報道に関すること >
東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
Email:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
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