東北大学工学研究科・工学部
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2006/01/13

金属フロンティア工学専攻の石田教授等の研究グループはゴムのような鉄合金を開発しました

東北大学大学院工学研究科田中優樹大学院生、貝沼亮介助教授、石田清仁教授らの研究グループは、ゴムのように10〜13%伸び縮みする超弾性型Fe 系形状記憶合金の開発に成功した。

形状記憶合金は、材料を変形しそれを加熱すると元の形にもどる形状記憶効果の他に、超弾性あるいは擬弾性と呼ばれる「ゴムの様に伸縮する特異な機能」を示す合金もあり、工業・エネルギー・医学等、種々の分野への実用化が進められている。これまで実用に供された形状記憶合金としては、Ni-Ti 基合金(ニチノール)、Cu-Zn-Al 基合金、Fe-Mn-Si 基合金などが挙げられるが、現在は材料特性に極めて優れたNi-Ti 基合金が主に使用されている。しかし、Ni-Ti 基合金も冷間加工性が不十分であり、素材や製造コストが高いので、その適用分野に制約が大きい。Fe-Mn-Si 基合金は形状記憶効果は示すが、基本的には超弾性機能を有していないため超弾性型Fe 基合金の開発が望まれていた。

今回開発されたFe 系合金は、Fe とNi、Co を主成分とする形状記憶合金である。これまでFe-Ni 基形状記憶合金は、ニチノールに比べ素材が安価で加工性にも富むことから、日本を中心に数十年前より研究開発が進められてきた。しかしながら、室温付近での超弾性が得られないこと、さらに十分な靭性が得られない事などから、実用に供されることはなかった。今回、東北大のグループはFe-Ni-Co 合金に数種類の元素を添加した上で適切な加工熱処理を施すことによってミクロ組織を制御し、室温で10〜13%もの超弾性を示す多結晶バルク合金を得ることに世界で初めて成功した。本合金は優れた熱間・冷間加工性を有するので、板、線、パイプ等への成形が非常に容易であり、また1000MPa 以上の高い引張強度を示す。従って、従来の形状記憶合金よりも高い強度レベルを有する新しいタイプの超弾性合金として、一般構造用、精密機械用、建築用、医療用、スポーツ・レジャー用、眼鏡フレーム等の様々な用途への適用が期待できる。さらに本合金は強磁性を有するので、磁場駆動マイクロアクチュエータや磁場駆動スイッチ等の磁場を用いた分野への応用も考えられる。今後企業との共同研究によって早期実用化を目指す予定である。

なお本研究は科学技術振興機構の戦略的創造研究推進事業(CREST)によって行われ、本成果の一部は1月31 日(火)KKR ホテル東京で開催されるCREST 公開シンポジウムで発表される。

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東北大学工学研究科・工学部情報広報室
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