東北大学工学研究科・工学部
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2006/02/23

金属フロンティア工学専攻の貝沼助教授等の研究グループは、磁場で大きな力を発生する新型磁性形状記憶材料を開発しました

東北大学大学院工学研究科の貝沼亮介助教授、及川勝成助教授、石田清仁教授ら東北大グループは、科学技術振興機構(JST)によるCRESTプロジェクトを通し、強磁性相から反強磁性相へマルテンサイト変態する今までに無い合金系を見出し、室温において3%もの変態磁歪を生じると同時に従来の強磁性形状記憶合金の50倍以上の応力を発生できるNiCoMnIn系磁性形状記憶材料を開発した。

現在NiTi(ニチノール)合金が代表する形状記憶合金は、超弾性効果を利用した用途で実用化が進んでいるが、ピエゾ素子の様な駆動素子として利用する場合にも、セラミックス系電歪材料などと比して桁違いに大きな歪と応力が得られることから、大きな可能性を有するとされてきた。しかし、基本的に温度変化を通して作動させる形状記憶合金では、ピエゾ素子に要求されるような高応答性の点で限界があることから、磁性を利用する強磁性形状記憶合金が注目されてきた。近年、米国MITのグループにより開発されたNiMnGa系単結晶合金で9%もの歪が報告されたが、双晶界面の移動を原理とすることから数MPaの力しか発生し得ない事がその実用への大きな障害となっている。

東北大グループは、合金状態図のシミュレーション結果を参考にして行った合金設計により今までに無い興味ある物性を有する合金系を見出し、室温で利用できる新たな磁性形状記憶合金を開発した。すなわち、NiMnIn合金は、NiMnGa合金とは異なり強磁性母相から反強磁性マルテンサイト相へ変態すること、さらにCoの添加により母相のキュリー温度を100℃以上まで上げられることがわかった。室温付近にマルテンサイト変態温度を持つ合金に7テスラの磁場をかけることにより変態温度が約30℃低下し、変態温度付近で温度を固定した上で磁場を印加したところマルテンサイトから母相への逆変態が確認された。さらに、予めマルテンサイト相状態で約3%圧縮した単結晶試料に磁場を印加したところ、ほぼ完全な形状回復が得られた。この様に磁場誘起逆変態を利用した磁性形状記憶は今までに前例が無く、原理的には100MPaもの力を発生させる事が可能であることから、メタ磁性形状記憶効果とも呼べる本現象を利用した新しいタイプの磁性駆動素子や熱磁気エンジン等の開発が期待できる。

本研究内容は、2月23日付けの英国の科学雑誌「ネイチャー」に掲載される。

NiCoMnIn系で初めて実現したメタ磁性形状記憶効果の説明図
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