東北大学工学研究科・工学部
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2007/08/30

ナノメカニクス専攻の羽根教授の研究グループはアイトリックス株式会社と共同でナノインプリントによる可視光用カラーフィルターの製作に成功しました

 工学研究科ナノメカニクス専攻 羽根一博教授並びに金森義明准教授は、アイトリックス株式会社(代表取締役社長:長谷川正治)と共同で、ポリマーとナノインプリント技術を用いた可視光用カラーフィルター(波長選択素子)の製作に成功しました。

 今回発表した可視光用カラーフィルター(波長選択素子)の特長は下記のとおりです。


特長1 多様な色特性を持つ波長選択素子の形成が可能であること

特長2 同一基板上に色特性の異なる波長選択素子の一括形成が可能であること

特長3 ポリマー(樹脂材料)の利用により材料費が低減されること

特長4 染料や顔料等を使用しないことにより環境の負荷が低減されること

特長5 ナノインプリント技術の採用により製造コストが低減されること

(電子ビームによるパターニング及びドライエッチングプロセスを省略できること)


 特定の波長の光を透過あるいは反射する波長選択素子は、光計測や分析などの用途から、ディスプレイのような表示機器に到るまで幅広く使われています。現在、その製作には、染料や顔料を基板上に印刷等で配置する方法や、誘電体や金属薄膜等を多層に成膜する方法等が採用されていますが、特に三原色等の異なる透過特性を持つ波長選択素子を同一基板上に製作する場合は、製作工程が複雑化し、原材料費も増加します。

 今回のカラーフィルター(波長選択素子)の開発にあたっては、新しい光学素子として注目されている導波モード共鳴格子(Guided-mode resonant grating: GMRG)を活用しました。GMRGはサブ波長格子構造体(回折格子の周期を光の波長以下まで短くしたもの)を有する波長選択素子で、構造体の周期や格子幅などを制御することによって特定波長の光の反射率や透過率特性を変化させることができます。
 従来のGMRGは、微細加工技術が進んでいるSiなどの半導体材料で構成された研究が主になされてきました。しかし、半導体材料でサブ波長オーダー(数百nm)のGMRGを形成するためには、電子ビーム(Electron Beam Lithography:EBL)と同程度のパターニング精度が必要になります。また、後工程ではドライエッチングプロセス等も必要なことから、高額な材料費と共に、生産性が低く、高価な設備が不可欠となることが課題となっていました。

 今回、構成材料を全て安価で軽量なポリマー(樹脂材料)とし、GMRGの形成にナノインプリント技術を応用することで、これらの課題を克服した新しいカラーフィルター(波長選択素子)の製作に成功しました。ナノインプリント技術とは、ナノオーダーの微細な凹凸パターンを有するモールド(金型)を被成形材に押し当てることで被成形材を物理的に変形させる超精密加工プロセスのことです。比較的高価な設備を必要とせずにナノオーダーのパターニング精度を担保できることから、本プロセスの採用により、EBLで課題となるコストや生産性の問題を解決することができます。

 今後は、光計測や分析、光情報処理、ディスプレイ表示機器などへの具体的な用途展開を目指し、開発を進めていきます。

カラーフィルターの製作例:赤(R)、緑(G)、青(B)
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TEL:022−795-5898

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