東北大学工学研究科・工学部
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2011/02/15

電気・通信工学専攻 山口正洋教授・遠藤 恭准教授らのグループは、次世代携帯電話システムLTE用RFICの低ノイズ化の研究開発に着手しました。

-スマートフォンとその先の高速・大容量無線通信を支える次世代RFICへの応用を目指す-

東北大学大学院工学研究科電気・通信工学専攻 山口正洋教授・遠藤 恭准教授らのグループは、次世代携帯電話システムLTE用無線通信チップの低ノイズ化について、テストチップ開発、テストツール開発、テストチップ解析、磁性薄膜を用いた新規ノイズ対策技術、ならびに通信性能評価までを横断した研究開発を開始しました。総務省電波利用制度による電波資源拡大のための研究開発の一環として平成22〜25年度の4年間に渡り実施予定です。

【1.背景】

1994年の端末買上げ制度開始とともに爆発的に普及した携帯電話は、2007年のスマートフォン登場で一段と進化した。2010年にはスマートフォン端末の売上伸び率は74%/年に達し、この勢いは益々加速する勢いにある。このような高速・大容量の無線通信を支える新しい携帯電話システムとしてLTE(Long Term Evolution)は下り最大300Mbps超の高速伝送が可能な仕様を持ち、携帯電話システムに留まらず、ヘルスケア、エネルギー、自動車、農業分野など、高福祉・低炭素化社会を支えるバックボーンとして極めて重要である。したがって、その通信品質の確保は周波数資源の有効利用上、重要である。

LTE世代の端末開発において、無線通信用RFIC(Radio Frequency Integrated Circuit)における受信感度を適切に確保することは、通信品質の確保上不可欠であり、RFIC受信部におけるICチップレベルの低ノイズ化技術の開発が必須である。すなわちLTE世代を迎え、RFICプロセスが一気に65nmへ微細化するとともに、アナログ回路の制御や校正等の目的で従来より桁違いに多い数100万ゲートのデジタル回路が同一チップ上に搭載される。このためデジタル回路で発生したノイズが同一チップ上のアナログ受信部に混入し、受信感度の確保を困難とする課題を解決する必要に迫られている。

【2.研究開発概要】

まずLTE級RFICにおけるノイズ結合のメカニズムを解析するため、RF受信部の実回路を搭載したノイズ結合テストチップを開発する。ノイズ結合メカニズムとしては、従来から知られる抵抗性結合(R結合)と容量性結合(C結合)に加え、微細化と高速化のゆえに、新たに誘導性結合(L結合)を本格的に精査し、新しい対策技術を確立する必要がある。このためICチップレベルでのノイズ計測ツールを開発し、ノイズの発生、伝播、混入のメカニズムを明らかにする。その結果に立脚し、半導体と磁性体の異分野技術の協調による革新的なノイズ抑制技術を確立し、最終的には通信事業者により通信品質への寄与を明らかにすることを目的としている。

本研究開発は、総務省電波利用制度による電波資源拡大のための研究開発「高速・高品質な無線通信実現のためのICチップレベルの低ノイズ化技術の研究開発」(代表責任研究者・東北大 山口正洋)として平成22年度〜25年度の4年間に渡って実施が予定されているもので、実施機関は、東北大学、神戸大学、ルネサスエレクトロニクス株式会社(ルネサスモバイル株式会社)、日本電気株式会社である。

東北大学では、L結合を解析、対策する観点から、高分解能RF電磁界プローブの開発、ICチップレベルのノイズ解析、および磁性薄膜を用いたICチップレベルのノイズ対策基盤技術の創出等を担当している。平成22年度は、65nmCMOSノイズ発生チップ上で、磁性薄膜の磁気シールド効果による8dBのインターデカップリング効果を得るなど、順調な滑り出しを見せている。

2011年2月9日に本研究開発に関わるワークショップが開催されたそのプログラム(http://www.niche.tohoku.ac.jp/?p=1036)と当日の様子(http://www.itmag.ecei.tohoku.ac.jp/events/chip_emc/20110209ws/)もご参照下さい。

【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:eng-pr@eng.tohoku.ac.jp

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