東北大学工学研究科・工学部
過去ニュース一覧

NEWS

2013/04/02

コバルト合金製摩擦攪拌接合(FSW)ツールを実用化 -鉄鋼やTi合金の新接合技術の実現へ- (金属フロンティア工学専攻 大森俊洋助教、石田清仁名誉教授、 材料システム工学専攻 佐藤裕准教授、粉川博之教授)


東北大学大学院工学研究科金属フロンティア工学専攻の大森俊洋助教、石田清仁名誉教授と材料システム工学専攻佐藤裕准教授、粉川博之教授らは、株式会社日立製作所との共同研究により、鉄合金、チタン合金やジルコニウム合金などの高融点金属の摩擦攪拌接合(以下、FSW)を可能にするコバルト合金ツールを開発し、また、株式会社日立製作所と株式会社日立メタルプレシジョンと共同で量産技術の開発に成功しました。
本コバルト合金は、2006年に東北大学で発見し高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物Co3(Al,W)を微細に分散させることにより、高温でも高い強度を示します。さらに、靭性や耐摩耗性などを検討した結果、高い耐久性を有するFSWツールを実現しました。本FSWツールは、株式会社日立メタルプレシジョンより製品化されます。

【背景】
FSWは、回転するツールを接合する材料の間に押し込み、接合部に沿ってツールを回転移動させることで接合する方法です。接合する材料と回転するツールの間で発生する摩擦熱で接合材料を軟化させると同時に、ツールの回転により材料を混ぜ合わせることで接合します。この接合方法は、従来のアーク溶接などとは異なり、材料を溶かさずに接合できるため接合後の変形も小さく、接合欠陥が小さいため、製品の高品質化と低コスト化を実現できるとともに従来の溶接法と比較して省エネルギーで接合できるため環境に優しいという特徴を有しています。また、溶接の困難な材料、例えば異種材料の接合にも有効な技術として注目されています。現在、融点の低いアルミニウム合金などを接合する技術として鉄道車両などにおいて実用化されています。
しかし、一般に、金属材料は高温になると軟化する性質があり、従来の金属製FSWツールでは、融点がより高い鉄合金やチタン合金を接合しようとするとツールの先端が摩擦熱で高温となり、損傷してしまうなどの課題がありました。また、セラミックは金属材料よりも靭性が低いことや価格が高いことが課題のひとつと考えられます。

【成果の内容】
このような背景から、東北大学は日立製作所と共同研究を行い、高温でも高強度となる特性を有する金属間化合物(Co3(Al,W))を分散させることで高温強度の高いコバルト合金を開発しました。(Co3(Al,W))の分散量や結晶粒界の形状などを制御することで高い靭性と高い耐摩耗性を実現し、従来研究が行われてきたセラミック系FSWツールと比べ欠損に対する耐久性に優れています。また、一般的な金属部品の鋳造法であるロストワックス法での製造が可能で、さらに、高価なレニウムなどをツール素材として使用していないため、接合コストに優れた技術として普及することが期待できます。炭素鋼、高張力鋼、低合金鋼をはじめとする鉄合金やチタン合金、ジルコニウム合金、銅合金などのFSWに利用できるツールとして、?日立メタルプレシジョンより製品化されることとなり、一般向けに販売されます。電力プラントや化学プラント、自動車、航空機などの産業分野での利用が見込まれます。

【写真】今回、実用化したコバルト合金製FSWツール(右上)とTi-6Al-4V合金の接合の例
※画像クリックで拡大表示
【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:eng-pr@eng.tohoku.ac.jp

このページの先頭へ