東北大学工学研究科・工学部
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2013/04/15

送電線部品へ摩擦攪拌点接合(FSSW)を適用 -電気の安定供給への新技術-(材料システム工学専攻の佐藤裕准教授、粉川博之教授)


材料システム工学専攻の佐藤裕准教授、粉川博之教授らは、岩手大学工学部の中村満教授、旭電機株式会社(現:古河電工パワーシステムズ株式会社)との共同研究により、経年劣化した送電線部品に摩擦攪拌点接合(以下、FSSW)を適用して安定した導通点を確保する新技術の開発に成功しました。本技術により、送電線の溶損事故を防止し、さらには経年劣化に伴う保守点検業務の低減が可能であり、電気の安定供給が実現できると期待されます。


【背景】

送電線と送電線鉄塔は電気的隔離が必要なため、両者はセラミックス部品を介してボルトで固定されています。送電線同士の電気的導通は【写真1】に示すようにジャンパ線によって確保されており、アルミニウム部材である送電線とジャンパ線はそれぞれ引き留める金具を介してボルト締めされています(【写真2】)。ボルト締めで得られた電気的接点には、経年使用に伴い雨水等が浸透するため、接点部で酸化皮膜が成長して電気抵抗が増加し、接点部が発熱・溶損に至る場合があります。
この問題を回避するため、引き留め金具部を回避するためのバイパス線の設置などの対策が取られていますが、更なる経年使用に伴って同様の問題が生じるため、安定した送電レベルを維持するには定期的な保守点検が不可欠でした。
酸化皮膜の成長に伴う経年劣化を半永久的に防ぐ、さらには経年劣化した接点部を効果的に補修するには、電気的な接点近傍を金属的に溶接・接合することが有効ですが、既存の溶接・接合法では設備の電源・重量等の問題から鉄塔上での施工に課題が残されていました。


【成果の内容】

このような背景から、東北大学は岩手大学、旭電機と共同研究を行い、FSSWを用いた金属接合を適用して、送電線部品の安定した導通を半永久的に確保する新しい手法を開発しました。FSSWはアルミニウム合金製自動車ボデーの製造に利用されている固相接合技術です。非消耗回転ツールを部材中に圧入して接合界面を攪拌した後、ツールを引き抜くという単純なプロセスです。また、大型電源・設備が不要であることから鉄塔上での施工にも大きな可能性を秘めています。【写真3】に示すように、経年劣化した引き留め金具部に工業用純アルミニウム板を配置してFSSWした結果、接合時間3秒で良好な金属接合が達成されました。同時に純アルミニウム板を介した電気的導通が確保され、引き留め金具間の接触抵抗を1/4に減少させることに成功しました。また、連続通電試験において抵抗値の急激な変化や不安定な変動はなく、良好な電気的導通を確認しました。本技術により、全世界に張り巡らされている送電線ネットワークの安定化、保守点検の軽減が期待されます。

 なお、本成果は4月18日(木)、学術総合センター(東京千代田区)にて開催される溶接学会春季全国大会で発表予定です。

【写真1】 送電線と鉄塔の構造
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【写真2】 送電線とジャンパ線の固定方法
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【写真3】 送電線部品へのFSSWの適用事例
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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:eng-pr@eng.tohoku.ac.jp

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