「失敗と努力が成功をつかむ鍵」
工学の力、人間力で環境問題に貢献する。
東北大学 大学院 工学研究科 土木工学専攻
環境保全工学研究室
外内和輝
宇宙でも注目されるメタンを、
環境問題解決への糸口に。
土星最大の衛星であるタイタンと、火星。これらは「生命体が存在しているのではないか」という1つの期待でつながっている。鍵は、メタン。メタンは人工的に発生させる以外では、メタン生成古細菌による自然合成がほとんど。つまり、地球と同じように、タイタンと火星にもメタン生成古細菌、すなわち生命体が存在しているのではないか、と言われているのだ。そしてメタンは現在、環境問題解決の糸口として大きく注目されている。東北大学大学院工学研究科で学ぶ外内和輝さんも、増え続けるゴミ問題、エネルギー問題に“工学”の分野から取り組む一人だ。東北大学工学部時代から「メタン発酵」を主題とした実験を重ね、環境問題解決に貢献できる成果をめざして研究を続けている。環境への興味が芽生えた小学生時代から、十数年。今の場所に立つまでには、苦しい紆余曲折があった。立ち止まりそうになったこともあった。反抗、挫折、後悔。しかしマイナスに思われるすべてを受け入れ、外内さんはプラスへと変換し進み続けた。原動力はどこにあったのだろうか。


抱き続けた環境への興味と、
初めて味わった大きな挫折。
原点は、小学生時代の研究授業。「環境」をテーマとした授業で、外内さんは独創的な環境問題解決アイディアを発表した。環境問題が深刻化し、子どもから大人までが環境共生を意識し始めた社会。周囲の友人からも、教員からも注目を浴びた。「おもしろいと言ってもらえたことがうれしくて。それからずっと、環境問題に興味を抱いてきました」中学校に進むと、親の勧めで進学塾に通い始める。周囲が部活に打ち込む中、思うように活動できないことがもどかしかった。レベルの高い高校に入るためと自分に言い聞かせるが、気持ちは晴れない。「結局進学校に合格できたのですが、バレーボールへの情熱は収まりませんでした。親への反抗の気持ちもあって、高校では部活に全力を尽くすことにしたんです」バレーに気力と体力を集中させる日々。勉強はテスト前期間が中心。そんな中挑んだ大学受験は、志望校を1つだけに絞っていたこともあり、不合格。大きな挫折感の中、外内さんは1年間の受験浪人を決めた。

一足先に学んでいた先輩と友人達に
東北大学への背中を押されて。
現役時代にたった1つだけ選んだ志望大学が、東北大学だった。「環境についての研究室が東北大学にあると知って、ずっと入りたかったんです。国公立だから学費を出してくれる親の負担を減らすことができるし、東北大学に進学した先輩や友人達からも本当にいい環境だと聞いていました。そして、国立大学ならではの充実した研究施設が大きな魅力でしたね」しかし外内さんは生まれも育ちも埼玉。両親から首都圏の大学を勧められたこともあった。それは外内さん自身、浪人生となってから何度か迷ったことだった。本当に東北大学でいいのか。何のために浪人までして東北大学を目指しているのか。勉強と心の葛藤が並行した。そして出した結論は。「視野を広げて私大も受けながら、やっぱり本命は東北大学にしようと決めました。ずっとやりたかった環境問題への研究は、東北大学という恵まれた環境が一番だと思えたからです。一足先に東北大学で学んでいる友人達がとても楽しそうで、勉強以外の活動も両立させている姿が背中を押してくれたのかもしれません」2回目の受験は、見事合格。故郷の埼玉を離れ、仙台での一人暮らしが始まった。


東北大学 大学院 工学研究科 土木工学専攻
環境保全工学研究室
外内和輝

2010年、埼玉県立浦和高等学校を卒業。2011年、東北大学工学部建築・社会環境工学科水環境デザインコースに入学。建築と土木についての基礎を学び、4年次に研究室配属。卒業論文テーマを「メタン発酵による混合食品廃棄物の減量化とエネルギー回収」と定め研究、高い評価を受ける。2015年、同大大学院工学研究科に進学。環境保全工学研究室に所属し、メタン発酵を含む環境保全、エネルギーについての研究に携わる。卒業後は環境・エネルギー分野の企業就職を志望。