「失敗と努力が成功をつかむ鍵」
工学の力、人間力で環境問題に貢献する。
東北大学 大学院 工学研究科 土木工学専攻
環境保全工学研究室
外内和輝
それまでの自分が180°転換。
「研究がこんなに楽しいなんて」
東北大学工学部建築・社会環境工学科。外内さんの新しいフィールドとなった青葉山キャンパスは、自然豊かな環境にあった。「実は一度も訪れないまま受験、合格したので、初めて来た時は本当にいい雰囲気だなと思いました。もともと自然が好きで、今でも研究に疲れると周囲の森を見て癒やされているんですよ」1年生から3年生まで、建築と土木の基礎を学ぶ毎日。サークルでは男子バレーを選び、代表も務めた。中学、高校と果たせなかった文武両道の生活だったが、もっと環境について専門的に学びたいという思いがくすぶっていた。このままではまた中途半端に終わってしまう。過去の挫折を思い出し、焦る気持ちがふくらんだ。そんな日々を、4年生の研究室配属が一変させる。「研究というものがこんなに楽しいなんて、知りませんでした。環境を専門とする研究室で、初めて本格的な研究に参加して、モチベーションが一気に上がったんです。これまで中途半端な姿勢だった分、この1年間で巻き返そうと決意して。自分が180°変わったことを感じました」


「答えも方向性も未知数で自由」
研究とは無限に学び続けられるもの。
研究室では、担当教授のメインテーマの一つである「メタン発酵」を主題に選択。先輩達が取り組んできた研究の資料やノウハウを引き継ぎ、教授からのアドバイスを受けて「メタン発酵による混合食品廃棄物の減量化とエネルギー回収」という研究で卒業論文を作成することにした。「現在日本の食品廃棄物は年間約2000万トン。埋め立ても焼却も、処理が困難になってきているんです。そこで、ゴミの量を減らし、エネルギーを回収できるメタン発酵資源化処理装置をつくり、有用性を検証する研究を行いました」半年におよぶ実験は無事に終わり、成果をまとめた卒業論文も各方面から評価を受けた。しかし、研究の過程は楽しいことばかりではなかった。開始直後から失敗の連続。想像のように進まない実験に、悔しい思いをしたこともあった。それでも外内さんはくじけなかった。「これまで決められたことを学ぶだけでしたが、答えも方向性も未知数の研究は自由。もちろん責任も背負いますが、無限に学び続けられる“研究”は、いつも自分をワクワクさせてくれるんです」

「失敗しなければ進めない」
マイナスをプラスに変換する力。
研究の楽しさに目覚めた外内さんは今年の春、東北大学大学院工学研究科へ進学した。「実はメタン発酵について、卒論発表の場で答えられない質問がありました。やりきったつもりでしたが、まだまだ究められてない、胸を張って学んだと言えるものがないことに気づいたんです」何かを究めたい。その情熱は、中学生の頃から抱き続けてきた後悔が原動力だった。挫折を経験したからこそ、再び悔しい思いをしたくないという強さが生まれた。体当たりで会得したその思考は、研究姿勢にも影響している。「実験は失敗の連続です。失敗の原因、時には成功の原因を探って、また実験に挑戦する。反対に言えば、失敗しなければ次に進めないんですよね」努力すれば報われるのではなく、努力しなければ報われない。そう話す外内さんの笑顔には、マイナスに見える過去をプラスに変換してきた力強さが満ちていた。環境問題に貢献できる人になる。大学院でさらなる人間力を身につけるであろう外内さんが、夢を叶える日はきっと遠くない。


東北大学 大学院 工学研究科 土木工学専攻
環境保全工学研究室
外内和輝

2010年、埼玉県立浦和高等学校を卒業。2011年、東北大学工学部建築・社会環境工学科水環境デザインコースに入学。建築と土木についての基礎を学び、4年次に研究室配属。卒業論文テーマを「メタン発酵による混合食品廃棄物の減量化とエネルギー回収」と定め研究、高い評価を受ける。2015年、同大大学院工学研究科に進学。環境保全工学研究室に所属し、メタン発酵を含む環境保全、エネルギーについての研究に携わる。卒業後は環境・エネルギー分野の企業就職を志望。