北欧留学で世界を知り、進むべき道を確信。
「工学の力で世界の格差をなくしたい」
東北大学 大学院 工学研究科 化学工学専攻
猪股研究室
滝沢翠里
教育先進国デンマークで確信した思い。
「社会に貢献する工学研究を」
「高福祉高負担」という独自の社会システムを築き、高齢者福祉、児童福祉だけでなく、医療や教育の分野においても国民満足度世界トップクラスの北欧。中でもデンマークは、公立の教育機関であれば、小学校から大学院までの教育費が無料。義務教育期間であっても子どもを学校に通わせる義務はなく、どのような教育を受けさせるかは親が決めることができるなど、人生を豊かにする軸としての「教育」を重視する国だ。2015年6月、デンマークでの1年間の交換留学を終え、一人の大学院生が東北大学に帰ってきた。「教育こそ、人の基盤。工学の力で世界の格差をなくしたい」確信を持って語るのは、工学研究科2年の滝沢翠里さん。化学工学を専攻し、超臨界流体研究をメインとする猪股研究室に所属。工学の研究を、“知的好奇心を満たすのではなく社会に貢献するもの”と位置づけ、実践的な研究を目指す。その地盤には、数々の出会いと、変化を恐れずに進む勇気があった。


大好きなスポーツに素材開発で携わりたい。
スポーツウェアの素材開発を志した高校時代。
中学時代から化学と数学の面白さに魅了され、理数科のある高校に進学。入学後はすぐにテニス部に入り、スポーツの素晴らしさに夢中になった。「中学校までずっとソフトボールをやっていたのですが、高校にはソフトボール部がなかったので思いきってテニス部に入ってみたんです。新しいことを始めることに抵抗がなかったし、とにかくスポーツが大好きだったので」真面目に勉強し始めたのは引退してからでしたねと話す滝沢さん。選手としてではなく、ウェアなどの素材開発の側面からスポーツに関わりたいと考え、材料工学の道を目指すことにした。大学選びでは、先進的な研究と大規模な研究施設を有する東北大学工学部を第一候補に設定。オープンキャンパスで研究室を見学し、自分の将来のイメージを描けたことから、受験を決意した。しかし部活に明け暮れた2年半の日々で、最低限の基礎学力しか身についていないことを痛感することになる。「何度受けても、模試でD判定だったんです。それでも諦めたくなくて、苦手つぶしと模試の復習を徹底しました」

将来の可能性を広げるため、
コース選択制の東北大学工学部へ。
東北大学工学部なら、入学後にコース選択ができる。将来の選択肢は無限に広がっているのだから、色々な分野を学べる東北大学に進みたい。強い意志で合格を勝ち取った滝沢さんだが、材料開発に携わるという具体的な夢と、繰り返される基礎科目の授業に、ギャップを感じることもあった。それでも、高校時代の自分を思い出し、地道に、着実に、知識を身につけていった。転機は、2年生で参加した「創造工学研修学習発表会」。「希望者はほぼ全員参加できる工学部主催の研修で、北京で当時の研究内容を発表できるというものでした。初めての海外で、スピーチは英語。かなり緊張しましたが、発表自体は事前に何度も練習していたので、それほど難しくはありませんでした。問題は、質疑応答だったんです」英語で質問を受けた際、大体の内容を理解できても、答えるための単語が出てこない。伝えたいのに、伝えられない。言葉の壁を、初めて直視した瞬間だった。「悔しかったです。周囲にはそうは見えなかったかもしれませんが、本当に悔しかった。だから、リベンジすることに決めたんです」


東北大学 大学院 工学研究科 化学工学専攻
猪股研究室
滝沢翠里

2010年、長野県屋代高等学校理数科を卒業、東北大学工学部に入学。2011年、工学部主催の「創造工学研修」に参加。初めて海外で研究発表を行い、海外での活躍を目指すようになる。2012年、「国際工学研修」でポーランド、チェコの工科大学、製鉄所を見学し留学を決意。東北大学大学院工学研究科へ進学後、1年間の交換留学へ。2015年6月帰国、現在に至る。