加工プロセス開発のゴールは、
人に使われること。
そして自分をも満たしてくれるもの。
花王株式会社
基盤研究セクター
加工・プロセス開発研究所
石田華緒梨
世の中を構成する、試行錯誤の世界。
「加工・プロセス開発」
例えば、ペン、ノート、マグカップ。目の前に、当たり前のように存在するさまざまなモノが、それぞれいくつものプロセスを経てようやく世の中に出てきていることを、考えたことがあるだろうか。窓のサッシにも、自転車のタイヤにも、携帯電話のパネルにも、消費者からは見えない試行錯誤が隠れている。中でも「加工・プロセス開発」と呼ばれる領域は、“消費者に求められる安心・安全な商品を生み出し、いかに効率良く消費者のもとに届けるか”という研究に特化。衣類から自動車、食品、化粧品にいたるまで、ありとあらゆるジャンルに存在する。決して派手ではない、しかし消費者の豊かな生活に欠かせないこの領域で、失敗を恐れず挑戦し続ける女性がいる。彼女の名前は、石田華緒梨さん。ボディソープや衣料用洗剤、衛生用品、食品等幅広い製品を販売する花王株式会社で、加工・プロセス開発研究所に勤務し、“自由な発想”のもとに研究を行っている。“自由な発想”と聞くと、“知識よりも想像の力”と捉える人もいるかもしれない。しかし現実には、しっかりと積み重ねられた専門的知識に想像力が加わって初めて、商品化に結びつく本物の“自由な発想”は生まれてくる。彼女にはこの“自由な発想”を支えるだけの豊富な知識と人脈、そして工夫を惜しまない情熱があった。


学んだ先にある“出口”の明確さと
モノづくりの醍醐味を両立する工学部。
青森県五戸町で生まれ育った石田さんは、小さい頃から活発で、兄姉とともに自然の中を駆け回っていたという。身近にゲームセンターや最新のゲーム機はない。自分で考え作り出した道具で、魚や虫を捕まえる幼少期を過ごした。できるまでやる。他人に負けたくない。そんな精神が養われていった。中学生になり、兄が東北大学に合格したと知った時、石田さんは自分も東北大学に進学することを決意する。「どんな学部に進むか、何を学びたいかということよりも、とにかく東北大学に入りたいという気持ちが先でした。兄が進んだ道への憧れ、兄に負けたくないという思いが強かったんです。両親からは大学に行くなら東日本の国公立のみという条件をもらっていたので、東北大学ならすべてが叶うと思いました」受験を決めた石田さんは、2度も仙台に足を運び、オープンキャンパスに参加。もともと数学や化学が好きだったため、見学先は理学部、薬学部、工学部の3つに絞った。教授や学生の話を聞く中でどの学部にも惹かれたが、学んだ先にある“出口”のわかりやすさは、工学部が一番だと感じた。“モノづくり”にも興味を抱いていた石田さんは、高校2年の春、工学部化学・バイオ工学科に焦点を定め受験勉強を開始した。

4年間、全分野の知識を広く深く学び、
じっくりと基礎を身につける伝統。
石田さんは受験期間中、問題を解いた後、その問題を他人に説明できるほど確実に理解することを意識。進学校ではない高校で、周囲に勉強が苦手な生徒が少なくなかったため、放課後、友達への特別授業も積極的に行った。他人に教えることで、自分の理解がより一層深まっていくことを感じた。受験は、AOを選択。「東北大学のAOは特殊で、過去問題を見ても参考にならないんです。合格できる自信は、正直ありませんでした。でも絶対に東北大学に入学するという気持ちで、落ちた時のことはなるべく考えないようにしていました」集中して磨いた問題理解力と解決力によって、難関のAO入試を見事クリアした石田さん。工学部化学・バイオ工学科に入学すると、周囲のレベルの高さに驚いた。そして、化学・バイオ工学科特有の、学びの広さ深さにも衝撃を受けたという。「化学・バイオ工学科は、1年生から4年生まで、じっくり基礎を学ぶ学科だったんです。全分野の知識を幅広く身につけた上で、ほとんどの学生が大学院に進み、専門的な研究を行うのが、化学・バイオ工学科の伝統と知りました。自分も1年の頃から、大学院に進学することを意識しながら日々の勉強にあたるようにしました。でもまだ将来どんな仕事に就くかまでは、想像できていませんでした。学部3年の、工場見学の時までは」


花王株式会社
基盤研究セクター
加工・プロセス開発研究所
石田華緒梨

2006年、青森県立八戸東高等学校卒業。2010年、東北大学工学部化学・バイオ工学科化学工学コースを卒業、東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻へ。2012年、同専攻を修了し修士号を取得。同年4月、花王株式会社に入社。エコイノベーション研究所(和歌山)、加工・プロセス開発研究所(東京)勤務を経て、5年目より現在の研究所に勤務。