加工プロセス開発のゴールは、
人に使われること。
そして自分をも満たしてくれるもの。
花王株式会社
基盤研究セクター
加工・プロセス開発研究所
石田華緒梨
将来への岐路、工場見学と研究室見学。
決め手となったのは先輩たちの姿。
進路を決める上で非常に重要なイベントの一つが、3年の工場見学。学科やコースごとに、それぞれの分野で第一線に立つ企業の見学を行う。石田さんは複数の化学・バイオ系企業や研究所をまわり、その中の1社に強く惹かれた。「それが、花王でした。花王は消費者直結の会社。対企業より対消費者の会社の方が、自分の研究が社会で直接活かされると思ったんです」工場見学の経験は、後の進路にも大きな影響を与える。「化学・バイオ工学科は学部4年から研究室に所属します。そして、この研究室のテーマによって、大学院での専攻も決まってくるんです。だから、みんな真剣に、慎重に考えます。私は先の工場見学で、花王には化学・バイオ工学科から複数の先輩方が就職していることを知っていたので、その先輩方が多く所属していた化学工学コースがいいかなと思い、まずは見学に行くことにしました」早速訪れたスミス研究室は、環境調和系の研究室。環境に負荷をかけないエネルギー開発等を研究していた。研究テーマ以上に石田さんの心を掴んだのは、先輩たちがつくる明るく和やかな雰囲気。留学生も多く、英語力を磨きながら楽しく研究に挑めるだろう。そう確信し、スミス研究室に入ることを決めた。


180度異なる“初めての仕事”。
浮かんだのは、学部で築いた基礎知識。
アメリカ出身の教授が主導するスミス研究室。想像通り、授業も課題の出題もディスカッションもすべて英語で行われ、英語力を磨くことができた。そして想像以上に、先輩や後輩との温かな人間関係に恵まれ、なかなか進まない研究も心から楽しむことができた。大学院に入り半年が過ぎると、研究室での研究と並行し就職活動がスタート。第一志望を花王に定め、面接に臨んだ。「ほぼ雑談のような、アットホームな面接で。カブトムシを捕まえるための道具を作った話で、面接官と盛り上がったことをよく覚えています。今振り返っても、自分らしさをしっかり出せたなと思いますね。その後早めに内定を出していただいたこともあり、東北大学の先輩方がいる、自分も楽しく働けると感じた花王に入社を決めました」1年目には和歌山県にあるエコイノベーション研究所で触媒作りや基礎検討を行い、研究職としての素養を培った。2年目には、東京の加工・プロセス開発研究所に異動。絶妙なタイミングで、新商品の開発に一から携わることとなった。「1年目とは180度違う“初めての仕事”で最初は不安だらけでしたが、落ち着いて考えてみると、化学・バイオ工学科で学んだことの延長線上にいるんじゃないかと思えたんです」

知識、人脈、惜しまぬ工夫。
加工プロセス開発のゴールは、人に使われること。
化学バイオ工学科での地道な基礎勉強はやはり無駄ではなかった。卒業後もずっと持ち続けてきた学部時代の教科書やノートを開くと、目の前の問題がすっと解けていくのが面白かった。新商品開発のプロジェクトは無事成功し、若手研究職にとって名誉である所長表彰を受賞。ドラッグストアに並んでいる商品を見た時は、研究職に就いてから最大の喜びを得た。そして彼女はもう、“初めての仕事”を怖がることがなくなった。自分には、化学・バイオ工学科で培った堅い基礎があるのだと。「大学で得た知識をそのまま発揮できる仕事って、本当に貴重だなと思いました。一つ、また一つと学部時代の知識が役立っていく今、東北大学で化学・バイオを学んで本当によかったと思えます。そして、今でも悩みや困ったことがあると助けてくれる、同窓生や教授たち。こうした人脈も、東北大学ならではだと感じています」常に目標設定が早く、自ら決めたゴールに着実に到達してきた石田さん。子どもの頃から身についてきたトライアンドエラーの精神と、大学時代に習得した工夫を惜しまない情熱が、彼女の未来の道を拡げ続けている。現在の夢は。「今、まだ世の中にないものをつくる研究に取り組んでいます。でも近い将来、欧米に行きたい。業界大手企業が集中する欧米で、研究をしてみたいんです。加工・プロセス開発研究は、人に使ってもらって初めて意味があるもの。新商品開発で感じたあの喜びを、もっともっと感じてみたいです」


花王株式会社
基盤研究セクター
加工・プロセス開発研究所
石田華緒梨

2006年、青森県立八戸東高等学校卒業。2010年、東北大学工学部化学・バイオ工学科化学工学コースを卒業、東北大学大学院環境科学研究科環境科学専攻へ。2012年、同専攻を修了し修士号を取得。同年4月、花王株式会社に入社。エコイノベーション研究所(和歌山)、加工・プロセス開発研究所(東京)勤務を経て、5年目より現在の研究所に勤務。