
皮膚の中の電位差を測定し、
皮膚機能の解明につなげたい。
「人体において最大の臓器は何か?」と問われたら、あなたはどう答えるだろう。その答えは、皮膚。面積にして約1.6㎡、重さにして約9kgと、皮膚は人体を構成するさまざまな臓器の中で最大のものといわれている。「皮膚には、体をまもってくれる毛髪、汗や皮脂を出してくれる分泌腺、刺激を伝えてくれる神経、熱や栄養を運んでくれる血管など、多様な機能が集まっている。さらに、体の内と外の界面(インタフェース)にあるというのも、皮膚の大きな特色」と話すのは、工学的な視点から皮膚の機能の探究に取り組む、東北大学大学院工学研究科機械機能創成専攻の阿部結奈助教である。
阿部助教は、東北大学大学院工学研究科の大学院生時代、皮膚表面のわずか0.1mmくらいの薄い層に小さな電位差(表皮電位)が発生しており、皮膚が荒れたり傷ついたりすると、それが電気的な変化となって現れる、という研究報告に注目。この表皮電位を簡単に測定できる道具があれば、皮膚の機能に関する研究に貢献できるのではないかと考えた。「目標は、皮膚につける傷を最小限に抑えることのできる、使いやすい道具づくりにありました。材料や方法について試行錯誤を繰り返し、研究のスタートから1年あまり後、とても細い注射針を加工した計測装置によって、ようやく皮膚の中の電位差を簡単に測定する道具の開発に成功しました」。
この研究の成果を『皮膚機能を電気化学的に評価する低侵襲デバイスの開発』としてまとめた阿部助教は、「第34回独創性を拓く先端技術大賞」(フジサンケイビジネスアイ主催)で「フジテレビジョン賞」を受賞、また、「2019年度 日本機械学会女性未来賞」を受賞するなど、工学の視点から皮膚研究に取り組む女性研究者に熱い視線が注がれている。