
日本人学生の
勉強に取り組む
真摯な姿勢や
真面目さに感銘。
水(液相)は0℃で氷(固相)に、100℃で蒸気(気相)に変化する。相は変わっても、化学組成で表せばどれもH2Oである。このように、化学組成は同一なのに相が異なる(物理的性質や原子配列が異なる)状態を“相変態”と呼ぶ。固体(金属)だけの相変態もある。「100万倍、1000万倍にまで拡大すると、金属では原子がとてもきれいに並んでいるのがわかります。金属の相変態では、きれいに並んだ原子が一斉に動きます。その動きの美しさに感動したことが、金属材料の世界で研究を続けるきっかけになりました」と話すのは、東北大学大学院工学研究科で形状記憶合金や新たな金属材料の研究・開発に取り組む許皛助教だ。
許助教は中国・北京市の出身。高校卒業後、浙江大学に進学したが、希望していた高分子化学ではなく、金属を専門とする学科への配属となった。「最初はかなり落ち込んでいました。成績が良ければ専門を変えることができる制度があったので一生懸命勉強していました。そんな時出会ったのが相変態という現象です。その出会いが私にとっては大きなターニングポイントになりました」。
3年次には、福井大学との交換留学生として初来日。日本人学生の勉強に取り組む真摯な姿勢や真面目さに感銘を受け、「こうした環境の中で勉強を続けたい」という思いを強くしたという。「将来は形状記憶合金の研究に取り組んでみたい」と考えていた許助教に対し、福井大学の先生からのアドバイスは「それなら東北大学がいい」。それが許助教と東北大学の最初の出会いだった。