原子力研究、教育、
地域産業振興の拠点として。
青森県東部、下北半島の付け根に位置する六ヶ所村は、再処理工場をはじめとする原子力関連施設、国家石油備蓄基地、太平洋沿岸部の地の利を活かした大規模風力発電施設などが立地する、日本のエネルギーにとって要衝ともいえる地域である。
2010年、この地で活動を開始したのが、のちに工学研究科量子エネルギー工学専攻六ヶ所村分室へと発展する東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター六ヶ所村分室だ。「この分室には、原子力研究、教育、地域産業振興という3つのミッションがある」と話すのは、開所当初からこの地に常駐し、分室とともに歩みを続けてきた人見啓太朗教授である。分室には、高レベル放射性廃液に含まれる放射性同位元素の高度分離技術に取り組む「核燃料科学分野」と、分離して得られた放射性同位元素を工学から医学までの幅広い分野に応用する高度利用技術の開発に取り組む「放射線高度利用分野」の2つの研究室が設けられ、さらに、近隣の原子力関連施設等から社会人大学院生を受け入れ、活発な教育・研究活動が展開されている。
人見教授の現在の活動の拠点は、2017年に開設された青森県量子科学センター(QSC)にある。「QSCには、加速した陽子ビームを実験装置へ供給することのできるサイクロトロン(円形加速器)をはじめ、工学や医学、農学といった分野への展開が可能な研究設備が整っています。研究環境という点では、仙台の青葉山キャンパスにいるのと遜色はありません。六ヶ所村には、原子燃料の再処理工場のほか、核融合エネルギーに取り組む研究所などもあり、研究に必要な材料や備品が手に入りやすいというメリットもある」と話す人見教授。「そして何より、都市部のような喧騒が少ない。その分、集中して研究に取り組めるということはあると思います」。
QSCには宿泊設備も設けられており、国外からも多くの研究者がやってくるという。「アメリカ・ミシガン大学に客員研究員として滞在していた時の研究仲間の教え子や学会で知り合った研究者のもとで学ぶ学生さんなど、若手の研究者がここにやってきて研究交流を行っています。『門戸開放』を掲げる東北大学らしい取り組みの一つと言えるかもしれませんね」。
