「新しい発見にこそ価値がある」
偉大な恩師たちにならび、
世界を変える研究者に。
東北大学 工学研究科・工学部 知能デバイス材料学専攻
ナノ材料物性学講座 量子材料学分野
准教授 好田 誠
壁に行き詰まった大学院時代。
まわりには相談できる仲間がいた。
大学院で研究を始めて間もなく、最初の研究成果を国際会議で発表。好田准教授の研究は大きな注目を浴びた。しかしその後2年あまり、成果と呼べるものは生まれなかった。「今思えば、あれが挫折というか、壁だったのかもしれません。でも当時はやるべき実験がいくつもあり忙しく壁とは全く思っていませんでした。それに周りには相談できる仲間がいつもいたんです。ですので周りが成果を出していても、不安に感じず、自分も成果を出したい、もっと頑張って追いつきたいと思えていたんです」誰が成果を出しても喜び合う空気が確かにあった。そう語る好田准教授の仲間は、今もそれぞれの世界で第一線の研究を続けている。「手本や目標になる人に囲まれていたから、前を向き続けられたんですよね。つい先日も、仕事で仙台に来ていた仲間と久々に会って飲んだんですけど、話題はやっぱり互いの研究のことで。みんな専門分野が違うからこそ、話しているうちに次々アイディアが生まれるんですよ。あの大学院時代を一緒に過ごした仲間は、これからもきっとずっと変わらないんじゃないかな」


“新たな研究に挑む” 30代。
誰にも克服されていない課題に挑む。
30代半ば。このままじゃいけない、新たな研究を進めたい。決してマイナスだけではないプレッシャーを自分に課した好田准教授は、新しい一歩を踏み出すことに決めた。そしてその背中を、東北大学大学院工学研究科が主催する「若手研究者海外派遣制度」が後押しした。「新しくできた研究者のための制度を活用して、IBMチューリッヒ研究所に自分の論文を送り、1年間研究したいということを伝えたんです。向こうの方は私の論文も知ってくれていて、無事受け入れてもらえることになりました。この1年間で、将来の研究に繋がる芽を見つけたいと思っています。そしてまだ誰にも克服されていない課題に挑んでいきたいんです」30代半ばという年齢は、研究者の核となる40代、50代に繋がる重要な時期。恩師の言葉である「新しい分野を切り拓く」ことを思い出し何かをせずにはいられなかった。世界トップクラスの研究所で研究に打ち込むことは、帰国後東北大学でさらに研究を重ね成果を出すために欠かせないステップなのだ。

「偉大な恩師に追いつきたい」
科学の世界は新しい発見に価値がある。
東北大学は材料研究で世界トップの実績を誇る。その研究環境において好田准教授を突き動かす原動力は、「新たな物理現象の発見や社会に役立つインパクトを与える効果を自分の手で見出し育てたい」という情熱と「偉大な恩師たちに追いつきたい」という気持ち。大学院時代には世界でトップに立つ最先端研究とは何かを教わり、教職員になってからは議論しながら基礎物理を深く理解することで分野の頂点に立つの重要性を知った。「科学の世界は、新しい発見に大きな価値があり研究者としてのオリジナリティ(独創性)に繋がります。そのためには、異なる材料や分野そして実験手法など今までの枠組みに捉われない融合的な研究を進めることも必要だと思うんです」自分が、今の恩師と同じ年齢になる20年後。その時までに自分自身がどれ程成長しているだろうか。「まずは新しい研究の芽を育て、それを通して産業が発展して、人々が幸せになる。そうなったら嬉しいですよね。まずはスイスでの1年間に集中。そのそこでの成果を日本に持ち帰って、自分のホームである東北大学でさらに研究を重ねていきたいですね」苦楽をともにした仲間と、研究者としての夢を与えてくれた恩師。1年後、彼らにスイスでの日々を報告する好田准教授の笑顔が浮かんだ。


東北大学 工学研究科・工学部 知能デバイス材料学専攻
ナノ材料物性学講座 量子材料学分野
准教授 好田 誠

2001年、東北大学工学部電子工学科卒業。2005年、東北大学大学院工学研究科電子工学専攻を卒業し、工学博士号取得。現在の研究課題は、スピン軌道相互作用を用いた電気的スピン生成・制御・検出に関する研究。大学院1年目に「応用物理学会講演奨励賞」、卒業後の2010年「トーキン科学技術振興財団 研究奨励賞」、2014年に「本多記念会 研究奨励賞」等を受賞。