根拠に基づいた未来の提示。
その責任が、私たちにはある。
2025年8月、内閣府からあるシミュレーション映像が公表された。タイトルは「富士山の大規模噴火と降灰の影響」。富士山で大規模噴火が発生した場合、どのような現象が起こり、どのような影響が及ぶのかを、CGや実際の映像を交え紹介する内容だ。南海トラフ地震や首都直下地震の発生が懸念される中、これらの地震についても同様のシミュレーション映像が内閣府によって提供されている。
「こうしたシミュレーションの中で紹介される噴火や降灰、建物や道路の倒壊といったイメージCGは、新たな自然災害に対する警鐘という点では意味があるかもしれません。しかし、イメージCGで描かれるのは、あくまで想像の世界。私が研究者として目指すのは、物理に基づいたシミュレーション、起こり得る可能性の提示です」。こう話すのは、東北大学大学院工学研究科土木工学専攻のガルビン妃羅さんである。
ガルビンさんは、数理的方法によって材料や構造の強度と変形特性の予測評価に取り組む「数理システム設計学研究室」の一員として、流木を含む土石流被害のシミュレーション手法の開発に携わってきた。「近年の豪雨災害では、流木を含む土石流の発生が各地で発生しています。流木の集積や、河道の閉塞などによって引き起こされる被害をシミュレーションによって事前に予測することができれば、自治体による備えにつなげられるのではないかと考えています」。
ガルビンさんは、所属する研究室を「物理に基づき、数学を駆使して解析に取り組むことのできる場」と表現する。「大学の研究室という場に身を置く私たちには、根拠に基づいた未来を社会に向けて提示する責任があると思います」。
