アカハライモリの
飼育体験から
ネイチャー・テクノロジー
の世界へ。
“トカゲのしっぽ切り”という言葉があるが、しっぽのみならず、足やあご、目のレンズ(水晶体)、さらには心臓まで再生することができ、再生医療への応用が期待される生き物として、いま注目を集めているのが日本固有種のアカハライモリである。東北大学工学部化学・バイオ工学科、同大学院工学研究科化学工学専攻を経て、現在、住友化学株式会社工業化技術研究所で研究職に就く宮本潤さんは、子どもの頃、アカハライモリの魅力に心を奪われ、飼育や孵化を試みた経験を持つという。
「アカハライモリは、真っ黒な体に赤色の腹、その毒々しい見た目が何と言っても魅力的です。赤ちゃんの時は、外鰓(がいさい・外エラ)と呼ばれる呼吸器があり、まるでウーパールーパーのよう。成長するとだんだんエラがなくなっていってトカゲのようなフォルムになっていきます。ウーパールーパーの時とトカゲの時と、アカハライモリの飼育は二度おいしい。クリクリとした目の可愛さもポイントです」。アカハライモリの魅力を熱く語る宮本さん。その自然への関心は、やがて、生物の持つ機能や働きを技術に応用しようとする“ネイチャー・テクノロジー”の世界へと広がっていったという。
「新幹線車両の先頭の形状が、水中の魚を捕る際に抵抗を受けにくいカワセミのくちばしに着想を得ているというのはみなさん聞いたことがあるかもしれません。この他にも、電気掃除機の中にあるゴミを圧縮するブレードに、毛づくろいの時に毛玉を効率よく作ることのできる猫の舌の構造が応用されているという話もあり、自然の中から学び、それを技術に応用するというところに面白さを感じました」。この“ネイチャー・テクノロジー”の考え方を社会に向けて広く発信していたのが、当時東北大学大学院環境科学研究科に在籍していた石田秀輝教授(現・東北大学名誉教授)だった。
「石田先生の書かれた本などを読み、自然界の生物や仕組みを模倣・応用して社会課題を解決するという考え方に感銘を受けた」という宮本さんは、高校卒業後の進路の一つとして、東北大学を意識することになる。
