ありとあらゆる壁を乗り越えて。
夢は、世界にまだないモノを
生み出すこと。
東北大学大学院工学研究科・工学部 バイオ工学専攻
生体機能化学講座 タンパク質工学分野
教授 梅津光央
近年世界中で急速に研究が進む、
タンパク質研究の世界。
ヒトの身体の70%は水分。そして水分を除いたうちの約半分が、タンパク質という高分子化合物で構成されている。脂質、糖質と並ぶ三大栄養素であり、生命維持に不可欠な物質にも関わらず、詳細な実態を知られていないこのタンパク質。近年世界中で研究が進み、科学界のみならず、日常生活にまで大きな変化を与える未来も遠くはない。東北大学大学院工学研究科バイオ工学専攻の梅津光央教授も、最新のタンパク質研究に携わる一人だ。新学術領域研究を進めるために設立された文部科学省科学研究費補助を受け、ホームである東北大学で研究に励みながら、研究室を持ち学生達への指導にも情熱を注いでいる。研究の主眼は、タンパク質という構造をフォーマットとして、特定の機能を持つ分子を創り出すこと。つまり、これまで歴史上、地球に存在しなかったモノを創り出すという壮大な研究だ。その根底には、梅津教授がタンパク質研究者としての道を歩むまでに積み重ねた揺るぎない基礎の力があった。


縁深き仙台、東北大学への進学。
そこは研究第一主義で知られる学術の場。
梅津教授の出身高校は名古屋市内にある東海高校。エレクトロニクスやエネルギー問題が社会で大きく取り沙汰された高校時代、バイオ工学に興味を抱いた。中部エリアにも、隣接した関西にも工学部で有名な大学がいくつもあったが、梅津教授は東北大学工学部を選んだ。実は生誕地が福島、幼少期には仙台で過ごした経験を持つこともあり、ごく自然に進学を決めたという。「確かになぜ東北大学なんだと言われたこともありますが、もともと東北に縁があったということだと振り返ります。何より、東北大学は研究第一主義の大学だと聞いていたので、工学の研究をするなら東北大学だと思いました」東北大学入学後は、物理が好きだったことから量子化学の道へ。そして生物工学へと進み、研究に没頭する日々が続いた。やがて測定を繰り返す研究から、新しい何かを生み出す研究に惹かれ、モノづくりが叶う研究室に所属。測定とモノづくり、双方の魅力と実力を身につけることとなった。

ホームを出て違う土地で学ぶこと。
新たな自分をも発見すること。
東北大学大学院卒業後、現在の梅津教授を形成する上で欠かせないステップがあった。オランダ・ライデン大学での、日本学術振興会海外特別研究員としての研究の日々だ。「あの1年間は、日本では体験できないことの連続でした。オランダはプライベートの時間を大切にする国民性で、そのため研究も時間内で集中して取り組む。そして結論を出すのが早い。とても合理的で、学ぶべきことが多く、人間として成長できたと思います」現在も海外での国際シンポジウム出席や国内各地での学会出席は多い。仙台から違う土地へ赴くこと。それは地理的な移動だけでなく、新たな視点や発見、様々なアイディアをももたらしているのだろう。オランダから日本に帰国後、梅津教授は東北大学大学院の助手となり、運命のタンパク質研究に出会った。それまで物理や化学を専攻してきた研究者が、30歳を過ぎてから研究分野をタンパク質に絞るということは、一見すると全く違う畑に移住してしまったかのように見える。しかし学問研究の歴史を紐解くと、その一歩一歩が道理に適った軌跡であることがよくわかるのだ。


東北大学大学院工学研究科・工学部 バイオ工学専攻
生体機能化学講座 タンパク質工学分野
教授 梅津光央

2000年、東北大学大学院工学研究科生物工学専攻博士課程を修了。2000年、ライデン大学の特別研究員を経て、2001年より東北大学教員へ。2014年、大学院工学研究科バイオ工学専攻教授。専門分野は、生体機能化学、タンパク質工学、分子認識、ハイブリッド自己組織化。2005年には第20回生体機能関連化学部会部会講演賞、2008年にはアメリカ材料学会春季大会ポスター賞を受賞。