ありとあらゆる壁を乗り越えて。
夢は、世界にまだないモノを
生み出すこと。
東北大学大学院工学研究科・工学部 バイオ工学専攻
生体機能化学講座 タンパク質工学分野
教授 梅津光央
タンパク質研究の先に、
副作用のない安全な投薬治療の未来を。
梅津教授は語る。学問には流れがある。数学を知ることで物理がわかり、物理を学ぶことで化学を解くことができる。化学を極めることで、ようやく生物の不思議を解き明かすことができるのだと。「生物は分子からできているので、物理と化学の知識が不可欠なんです。色々な学問が進んで初めて解き明かせるのが生物というわけですね」梅津教授は自分でも意図せず、学問の進化と同じ筋道を踏みタンパク質研究へと辿り着いたのだ。現在の目標は、タンパク質研究を通した3方向での革新。医療、環境、ナノテクを大きく前進させることにある。「たとえば今の抗がん剤は、がん細胞に作用しますがその他の細胞にも作用し、いわゆる副作用が起きてしまいます。もしがん細胞だけに作用するバイオ医薬ができれば、副作用がなく安心してがん治療に臨めるようになると思うんです。そこに、私たちが挑む新しい分子の研究を役立てられれば」あらゆる分野を融合させた先に、自らの道をつくる。その姿勢は、東北大学の中にも小さな革新を生み出してきた。


研究分野の壁を取り払い、
それぞれのゴールのために力を合わせる。
門戸開放を謳う東北大学は、学部や専攻間の門戸をも開き、領域を超えた協力関係を築いている。そしてバイオ工学研究に携わる梅津教授は、機械や材料学、医学部の教授達とも意見を交わし、次々と新しいアイディアを生み出してきた。「有機物、無機物、生物を扱えるようになり、各分野の先生と相談できるようになりました。材料によって仕切りをつくる必要はないんだと強く感じます。もともと東北大学には平等に学べる環境がありましたから。それぞれのゴールのために、力を合わせる。研究者にとって、とてもいい場所ですよね」研究室の教員としての梅津教授も、非常にフラットな表情を見せる。研究室のスローガンは、「熱意が有り余って周囲に漏れ出し周りに活力を与える」人間を目指すこと。学生に対しても互いに一人の大人であることを意識しながら接し、意思を尊重するよう心掛けている。「私が言うことを鵜呑みにせず、自分の力でまず考えるよう常に伝えています。ルールで縛るのではなく、自主的に動ける人間になることが大切だと考えます」

世界にまだないモノを生み出したい。
終わりなき挑戦への情熱。
「一口にタンパク質研究と言っても、毎年取り組むことは変わります。タンパク質はまだまだ未知の領域が広く、研究のしがいがあるんですよ」梅津教授を研究に向かわせる情熱源は、何よりも「世界にまだないモノを生み出したい」という熱意だ。タンパク質研究が進んだ未来。そこには、副作用の少ない医薬をはじめ、不要になったテスト用紙をエネルギーに変換して走る自動車、生物と無機デバイスの融合など、夢のような世界が待っている。そのためには、より一層タンパク質と他の材料との共同研究が必要になっていくのだという。今思い描いている、夢は。「バイオ工学で、どれだけ世の中を変えられるか挑み続けたいです。タンパク質にどれだけの力があるのか、知りたいんです。タンパク質の工学は1980年頃からようやく始まった、まだまだ歴史の浅い研究分野。だからこそ、伸び続ける可能性を感じていたいです」5年後か、10年後か。夢を叶えた梅津教授は、きっとまた新たな夢を追い、いくつもの壁を超えながら挑戦を続けていくのだろう。


東北大学大学院工学研究科・工学部 バイオ工学専攻
生体機能化学講座 タンパク質工学分野
教授 梅津光央

2000年、東北大学大学院工学研究科生物工学専攻博士課程を修了。2000年、ライデン大学の特別研究員を経て、2001年より東北大学教員へ。2014年、大学院工学研究科バイオ工学専攻教授。専門分野は、生体機能化学、タンパク質工学、分子認識、ハイブリッド自己組織化。2005年には第20回生体機能関連化学部会部会講演賞、2008年にはアメリカ材料学会春季大会ポスター賞を受賞。