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材料内部の欠陥を3次元で可視化できる高分解能超音波映像法を開発 − 安全・安心な社会の実現や工業製品の国際競争力強化に貢献 −

2020/09/23

発表のポイント

  • 構造物や工業製品の内部欠陥を高分解能で3次元映像化できる超音波計測法を開発
  • 高い信頼性での強度評価や欠陥発生メカニズムの解明に道筋
  • 安全・安心な社会の実現や工業製品の国際競争力強化への貢献に期待

概要

構造物や工業製品を壊さずに欠陥計測を行う非破壊評価技術の確立は重要な課題となっています。外からは見えない内部欠陥の計測法としては、超音波注1が幅広く用いられ、最近では、医療分野で開発された超音波フェーズドアレイ注2が工業分野に応用されるなどしています。しかし、内部に発生する複雑な3次元形状の欠陥は、最新の超音波フェーズドアレイ装置でも、素子数不足により、2次元映像化に限られていました。

東北大学大学院工学研究科の小原良和准教授らの研究グループは、米国ロスアラモス国立研究所との国際共同研究により、圧電探触子送信注3超多素子受信レーザ走査2次元マトリクスアレイ注4を融合した映像法を開発し、従来限界を1桁以上上回る数千素子の超多素子2次元マトリクスアレイの実現により、固体材料内部の欠陥を3次元的に高分解能で映像化することに成功しました(図1)。これにより、安全・安心な社会の実現や高いレベルでの品質保証による工業製品の国際競争力強化への貢献が期待できます。

本研究の内容は9月17日(米国時間)に、米国物理学協会の学術誌「Applied Physics Letters」に掲載されました。


図1 発電プラントで問題となっている枝分かれ応力腐食割れ(割れ状欠陥の一種)を本研究で開発した3次元超音波映像法PLUS(左)で映像化した結果(右)

研究の背景と課題

構造物や工業製品に欠陥が発生すると、甚大な事故につながる可能性があるため、壊さずに欠陥計測を行う非破壊評価技術の確立が重要な課題となっています。外からは見ることができない内部欠陥の計測法としては、人体に無害で感度も高い超音波が幅広く用いられています。最新の超音波計測法として、医療分野で開発された超音波フェーズドアレイの工業分野への導入が始まり、内部の欠陥を映像化する技術も普及してきました。しかし、内部に発生する欠陥は複雑な3次元形状をしていることが多いにもかかわらず、最新の超音波フェーズドアレイ装置でも、1次元圧電アレイ探触子注5による2次元映像化しか対応していません。一部、2次元圧電マトリクスアレイ探触子注6を用いた3次元映像化への試みも始まっていますが、装置コストの問題からその素子数は最多でも256程度であり、低分解能な3次元映像化にとどまっていました(図2)。


図2 超音波フェーズドアレイによる内部欠陥映像化の課題

研究のポイント

本研究では、上記問題を解決する方法として、圧電探触子送信とレーザドップラー振動計注7の2次元スキャンを組み合わせた3次元超音波映像法PLUS(Piezoelectric and Laser Ultrasonic System)を開発しました(図3)。PLUSでは、受信レーザのスキャン点数を任意に増やすことができるため、圧電アレイ探触子の限界(256素子程度)を1桁以上上回る数千素子の2次元マトリクスアレイが実現可能です。また、レーザドップラー振動計は幅広い周波数の超音波を受信できるため、圧電送信探触子を変えるだけで、減衰特性の異なる様々な材料にも適用できます。一方、レーザドップラー振動計は受信感度が低いという欠点もありますが、単一素子の圧電探触子送信により強力な超音波を入射することができるため、この問題も解決できます。これにより、発電プラントの配管などで問題となっている複雑に枝分かれした応力腐食割れ(き裂の一種)の3次元映像化に成功しました(図1)。


図3 3次元超音波映像法PLUSの概念図

今後の展望

今回開発された3次元超音波映像法PLUSにより、欠陥の3次元情報を材料の強度評価に取り入れることができるようになり、経済的かつ安全な構造物の運用が可能となります。また、本計測により、高いレベルでの品質保証が可能となり、工業製品に高信頼性という付加価値が付くことで、国際競争力強化にも貢献できます。一方、PLUSにより得られた3次元欠陥情報は、これまで未解明だった欠陥発生・成長機構の解明にもつながり、学術分野の発展にも貢献できます。さらに、PLUSは送信探触子を低周波のものに変えるだけで、橋梁、高速道路、トンネルなどのコンクリートインフラの検査にも利用でき、多くの分野への応用が期待できます。

論文情報

題目: Toward an Ultra-High Resolution Phased-Array System for 3D Ultrasonic Imaging of Solids
著者: Yoshikazu Ohara, Marcel C. Remillieux, Tomomi Onuma, Kosuke Tsunoda, Toshihiro Tsuji, Tsuyoshi Mihara
掲載誌: Applied Physics Letters
DOI: 10.1063/5.0021282

用語解説

注1 超音波

人の耳では聞こえない高い周波数(20 kHz以上)の音。周波数が高い程、直進性に優れるが、減衰の影響も大きくなる。金属材料ではMHz領域(106 Hzオーダー)の周波数が利用される。

注2 超音波フェーズドアレイ

複数の素子を持つアレイセンサとその制御器により、電子スキャンで内部の映像化が可能。医療分野で開発され、近年では工業分野への普及も進みつつある。

注3 圧電探触子送信

電圧をかけると、伸び縮みする圧電材料から構成される超音波センサ。圧電材料に高周波の電圧信号を加えることで、超音波を送信できる。

注4 超多素子受信レーザ走査2次元マトリクスアレイ

レーサ振動計を2次元的に走査(スキャン)することで構成される超音波受信センサ。スキャン点数を任意に増やすことができるため、現在普及している圧電アレイ探触子の限界よりも一桁以上多い数千素子の超多素子も実現可能。

注5 1次元圧電アレイ探触子

短冊状の圧電素子を並べた複数素子を持つ超音波センサ。

注6 2次元圧電マトリクスアレイ探触子

一般に、正方形の圧電素子を2次元的に並べた複数素子を持つ超音波センサ。

注7 レーザドップラー振動計

レーザ光のドップラー効果を利用することで、レーザが照射された局所領域の振動情報を非接触で計測できる装置。

お問合せ先

東北大学工学研究科・工学部 情報広報室
TEL:022-795-5898
E-mail:eng-pr@grp.tohoku.ac.jp
英文プレスリリース PLUS Takes 3D Ultrasound Images of Solids
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