東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/02/17

ナノメカニクス専攻の厨川常元教授等の研究グループが室温、大気圧環境下でのセラミック厚膜の高速成膜の成功しました

東北大学大学院工学研究科ナノメカニクス専攻の厨川常元 教授,同大エネルギー安全科学国際研究センターの小川和洋助教授らの研究グループは,高精度に微粒子を噴射し,成膜することのできるデジタル式パウダージェットデポジション装置を株式会社仙台ニコンと共同で開発し,室温,大気圧環境下でセラミックス厚膜を成膜することに成功した。本技術は,ナノレベルセラミックス材料の低温成形・集積化を低コストで可能にするもので,次世代の情報通信デバイス等の高性能化,高機能化に役立つ技術として期待されている。これまでの成膜技術なお本研究は,東北大学機械系で現在3つ走っている文部科学省21世紀COEプログラムの一つ,「ナノテクノロジー基盤機械科学フロンティア」(プロジェクトリーダー庄子哲雄教授)における融合研究プロジェクトの一つ。



【背景】
近年,MEMSやマイクロアクチュエータなど,微小機械部品のニーズが高まってきている。 それらに用いられる10µm以下のサイズのセラミックス部品加工は,バルク材からの機械的な除去加工法,あるいは蒸着法や溶射法などのビルドアップ法により行われている。 前者の方法では加工中の破損が大きな問題となっている。 一方,後者の方法では成膜速度が遅いうえ,真空環境下,高温環境下で行う必要があり,加工コストの点で問題があった。 また,減圧環境で行うため噴射微粒子の回収が難しいうえ,基板をある程度加熱する必要があり,ガラスなどの低融点基板への成膜は難しかった。 さらに熱的な原子拡散と結晶成長過程を伴うために,高い密度とナノサイズの微細な結晶組織,接合界面が得られず,機械特性,電気特性の大幅な向上は困難とされていた。



【他の類似技術】
これまで林らは超微粒子を高速気流で加速し,減圧環境下で基板に衝突させ膜を生成するガスデポジション法を開発した。 また明渡らはこの方法を発展させPZT厚膜の成膜に成功している(エアロゾルデポジション法)。 しかしいずれも真空環境下で行う必要があり,また基板加熱等の処置が必要である。



【開発したデジタル式パウダージェットデポジション装置】
これまで厨川教授と仙台ニコンは,1999年通商産業省,新規産業創造技術開発費補助金の助成を受けてアブレイシブジェット加工を開発し,実用化した。これは,高速ガス噴流により数µm〜数10µmの微粒子を微小径ノズル(内径0.1〜1mm)から加速,噴射し,硬脆材料に高速かつ高密度で衝突させることにより微細除去加工を行うものである。今回の装置はこれをベースに,サブミクロンの微粒子噴射を可能なように高精度化したものである。



【ガラス基板上へのアルミナ膜の成膜】
内径0.8mmの噴射ノズルから平均粒子径0.6µmの高純度アルミナ(Al2O3)粒子を加速させ,ガラス基板に衝突させた(噴射角60度)。 その結果,表面粗さRa19nmの透明な膜が生成された。膜厚は走査速度(1〜20mm/s),走査回数を調整することによりサブミクロンオーダーから20µm程度まで制御可能である。また成膜したアルミナ膜のビッカース硬度は9Gpa程度の高硬度で緻密な膜となった。また界面での密着性も良好であった。



【本技術の応用】
本技術は,種々のセラミックス膜のみならず,金属膜の成膜にも応用可能である。集積回路と高周波素子が高度に複合化されたGHz,THz帯高周波チップや,次世代の高速応答アクチュエータ素子,超高速光スイッチ等の機能性部品の製造をはじめ,通信素子用高耐圧透明絶縁膜や誘電膜,表面改質膜等の新機能複合材料の創成におよぶ広範囲な応用展開が期待されている。



【成果発表】
2005年3月16〜18日に慶應義塾大学で開催予定の,精密工学会学術講演会で発表予定。

図1 パウダージェットデポジション法によるセラミックス厚膜形成
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図2 図3
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図4 ガラス基板の上に成膜されたアルミナセラミックス膜の断面SEM写真
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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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