東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/02/21

バイオロボティクス専攻の平田泰久助手らは、高齢者の坂道歩行を支援する装置を開発しました

【背景】
現在急速に進んでいる少子高齢化において,高齢者に対する労働人口の減少は避けることができず,高齢者のための様々な福祉介護システムの開発が求められている。本研究では,高齢者や障害者の自立した生活を送るために最も重要な機能の一つである歩行の支援に注目し,システムと利用者が力学的な相互作用を行い,その相互作用に基づいてシステムが賢くなる歩行支援システムを開発することを目的とする。



【従来研究】
歩行支援システムの研究開発では,従来,ロボットの研究によって開発されてきた運動制御技術,センシング技術,ビジョンシステムの技術,ニューラルネットワーク技術等の様々なロボット技術(RT)を応用することが期待され,多くの研究開発が進められている。しかし,従来のロボティクスでは,モータのアクチュエータを能動的に駆動することでシステムの運動制御を行ってきた。これにより多機能かつ高性能なシステムを実現することが可能となる。しかし,人がそのようなシステムを扱うことを考慮する場合,モータの誤動作等による安全対策が重要な問題となる。また,通常よく利用されるモータは高回転・低トルクという特性を持つため,実際のシステムにはギア等の減速機を用いなければならず,また,センサやサーボアンプ,制御装置等を搭載する必要もあることからその構造が複雑化し,重量増につながるといった問題もある。また,モータを駆動するためのバッテリの容量不足によるシステムの稼働時間の短さも解決すべき問題のひとつである。



【本研究の目的】
本研究では,システムの駆動力を,アクチュエータではなく人の操作力で実現することを考え,その操作力によって実現される駆動力をブレーキのみによって適切に制御することにより,結果的にそのシステムの目的の運動を実現することを考える。このようなシステムは,基本的には人間の操作力によって運動が生成されるため,安全で実用的なシステムになると考えられ,今後の人間支援システムの研究開発において重要な技術になると考える。



【開発したシステム】
本研究では,基本的には人の力のみで動作するパッシブな特性を有するシステムをベースとして,ロボットの要素技術を組み込むことで,高機能なシステムを実現することを考える。このような考え方をパッシブロボティクスと呼び,本研究ではパッシブロボティクスの概念に基づいた多機能で高性能なパッシブ型知的歩行支援システムRT Walker(Robot Technology Walker)を開発した。本システムは,フレーム,制御装置,キャスタ,そして対向二輪型に配置したサーボブレーキ付固定輪から構成される.サーボブレーキは入力電流に比例したブレーキトルクを出力するため,連続的なトルク制御が可能となる。本システムでは,このブレーキをロボット技術(RT)を利用して適切に制御することにより,歩行支援システムに運動特性可変機能や軌道追従機能,障害物・段差回避機能,ナビゲーション機能,重力補償機能等の様々な機能を実現した。



【応用展開】
このようなパッシブ型の移動システムは,歩行の支援のみに有効であるという訳ではなく,人間との接触を前提として運動を生成する様々な人間支援システムに適用することが可能であると考える。例えば,病院内では食事配膳車やストレッチャ,ベッド等があり,また,人間の力を利用した移動手段である車椅子や自転車,三輪車等もパッシブロボティクスの概念が適用できると考えられる。本技術の応用は高性能,多機能な人間支援システムの実用化に貢献すると考える。

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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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