東北大学工学研究科・工学部
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PRESS RELEASE

2005/03/02

機械系精密ナノシステム研究センターは世界最小サイズの高精度マイクロ角度センサを開発しました

【背景】
角度は長さとともに,物体の形を決める最も基本な要素である.それを計測するニーズが古くから存在し,角度定規などの測定道具も日常的に使われている.最近では,ナノテクノロジーの進歩につれて,X線光学,レーザ核融合,天体観測などに用いられる大型特殊光学素子や,半導体ウエハ,液晶基板などの超精密加工品はサイズが数百ミリからメートルオーダと大型で,10nmからサブミクロンオーダの高い形状精度が求められ,それを製造する超精密加工機械や半導体製造装置の運動精度がさらに高く要求される.また,ハードディスクなどのIT関連製品にも高精度な回転機構や直動機構が多く使われている.これらの超精密形状と超精密運動をナノメートルの精度でダイナミックに計測するためには,従来の変位センサに加えて,高精度,高速,多次元,かつ各種装置に組み込み可能な角度センサの開発が求められている.



【従来研究】
従来からオートコリメータと呼ばれる光学式角度センサが用いられている.オートコリメーションの原理を利用するこのセンサでは,計測反射面の角度情報を持った光ビームが対物レンズに入射すると,レンズの焦点面上に像が結ばれる.焦点面上の像の動きが入射ビームの角度及びレンズの焦点距離に比例するので, CCD 素子を用いて像の動きを検出することによって,角度を計測することができる.簡単に言えば,対物レンズは拡大てこの役割を果たしており,対物レンズの焦点距離がてこの長さに相当する.焦点距離が長ければ長いほど,角度がより拡大されて検出されるので,角度センサの感度が高くなる.このセンサは計測原理が単純で実現しやすい特徴を有するが,白色光源と CCD 素子を用いる従来のオートコリメータでは, CCD 素子の検出感度が低いため,数百 mm オーダの焦点距離を持つ大型レンズを使って微小な角度検出に対応しており,センササイズが大きく,装置への組み込みが困難である.また, CCD 素子の検出速度が遅いため,センサは1秒間数十回の計測しかできず,ダイナミック計測の要求には応えられない.さらに,白色光源を使っているため,計測面に当てる光ビームのサイズが数十 mm と大きいので,局部傾斜の計測が要求される超精密形状計測には使えない.大型で高精度な対物レンズ及び CCD 素子を使うことによるセンサのコスト高の問題もある(センサの価格は500万円から1000万円程度).



【本研究の目的】
本研究では従来のオートコリメーション法の検出原理をブレークスルーすることによって,ナノテクノロジー分野で求められている高精度,高速,多次元,かつ各種装置に組み込み可能なマイクロ角度センサの実現を目的とする.



【開発のマイクロ角度センサ】
本研究では CD/DVD ピックアップなどで使われる半導体レーザ( LD )と分割型フォトダイオード( PD )を組合わせることによって,対物レンズの焦点距離に依存しない角度検出原理を確立した.レーザビームを対物レンズで絞ると,レンズの焦点面上にミクロンオーダと非常に小さい光スポットができる.なお,光スポットのサイズはレンズの焦点距離に比例する性質を持つ.レンズの焦点距離が短いほど,スポットサイズは小さくなる.また,計測反射面の角度に比例するこのスポットの動きを分割型 PD で検出すると,スポットのサイズに反比例する計測感度を得ることができる.つまり,レンズの焦点距離が短いほど,分割型 PD の計測感度が上がることになる.それによって,マイクロ化に焦点距離の短い対物レンズを使うことで対物レンズのてこ拡大倍率が低下してしまう問題をカバーすることができ,高感度マイクロ角度センサを実現することができる. CCD 素子に比べて PD 素子の検出速度がはるかに速いメリットもある.
以下の図と表にはそれぞれ本研究で開発したマイクロ角度センサの写真と従来のオートコリメータとの性能比較表を示す.
なお,本研究では,独自な分割型検出素子を開発し,高感度で大測定範囲の角度検出技術も開発している.



【応用展開】
本研究で開発したマイクロ角度センサは



  • 各種超精密加工面形状測定

  • 精密加工部品の平行度,直角度

  • 各種超精密機械の角度運動誤差測定

  • カンチレバーの振れ角

  • HDD のヘッド傾き測定量



などの測定やその他さまざまな微小角測定に用いられる.

開発したマイクロセンサおよび開発に参加した大学院生の佐藤隼人君と斎藤悠佑君
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表 市販の角度センサとの性能比較
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【お問合せ】

東北大学工学研究科・工学部情報広報室
TEL/ FAX:022-795-5898
E-mail:情報広報室メールアドレス

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